【BNPL】日本で盛り上がるBuyNowPayLater市場【Paidy】
Paidy社の資金調達で賑わう日本のBuyNowPayLater
Paidy社の資金調達がかなり注目を集めています。
シリーズDラウンドでSoros Capital Management LLC (a Robert Soros Enterprise)、JS Capital Management LLC (the family office of Jonathan Soros)、Tybourne Capital Management Ltd.、Wellington Managementに対する第三者割当による優先株式の発行により、総額約132億円(1億2,000万米ドル)の資金調達を完了
創業からの累計資金調達総額は 約644億円※1(5億8,500万米ドル)(うち、金融機関による融資を除く資本調達総額371億円
すごい金額感ですね。。売上のマルチプルで見るとafterpayレベルかもしれません。
今まで海外をメインに調査内容を公開してきましたが、今回は日本にフォーカスを当てたいと思います。
SNS上では「日本でBNPLは流行らないでしょ」などの意見が散見されたので改めて日本の状況を僕の視点で伝えていきます。
本投稿では日本でもBNPL市場はすでに広がっていることを伝えたいと思っています。
※各社の攻め方などは別のnoteで書く予定です
日本のBuyNowPayLaterについて
BNPL、実は日本ではずっと昔から存在するサービスです。
よく聞かれる質問を例に進めていきます。
後払いを導入するメリットってなに??
以下の記事で紹介しているので一部抜粋します
大前提として決済は、ECの発展に引っ張られているとおもっています。
・BNPLも同様で、基本的に「カゴ落ち」を起点に発達している
※カゴ落ちとは自分にとって好ましい決済がないときに離脱すること
・クレジットカードだけでは対応できない「カゴ落ち」が発生することでMerchantは売上向上が見込めなくなる
・そこで決済の成長が始まりBNPLが生まれ、普及する
モバイルの発達によりEC市場拡大→決済がボトルネックに→決済の拡充 という一連の流れが世界で起きた結果と捉えています。
後払いはどうやって使うのか?
NP後払いのサービスサイトを引用しながら見ていきましょう。
STEP1:ECでの決済時に「後払い」を選択
STEP2:支払いをする前に商品が届く
STEP3:自宅に届いた請求書を使ってコンビニでお支払い
読んで字のごとく「商品が届いてから支払う=後払い」という決済体験です。
ユーザーはどうして使うのか?
基本的には「クレジットカードを使いたくない」「利用金額をコントロールしたい」というのがメインのニーズとしてあります。
若者が使うイメージがつかない方向けにNOIN千葉さんのnoteを引用させてください。
NOINでの決済手段件数で多いのは実は「後払い」です。具体的な数字で言うと、後払いとコンビニ決済の合計は全体の55-60%にものぼります。
「ネット決済なんかクレカに決まっとるやろ!なんならクレカも後払いやんけ!」と思ったあなた、発想がおっさんです。(私もそう思ってました)
このあたりの心理はユーザーに直接聞いてみないと分からないので、いろいろと若い女子に聞いてみました。そこで発覚したのは意外なほどにクレカなんか持ってないという事実です。
直近のnoteを拝見すると後払い比率は下がっているそうですが、それでも若者に強いニーズがあることがわかります。
最近ではメルペイ社の調査結果も出ており、とても勉強になりました。
後払い決済サービスは、約4人に1人が利用している。
コロナ禍でキャッシュレス/後払い決済の利用頻度が増えたという回答が50%超で、特に若年層で多い。
いわゆる「後払い」と「BuyNowPayLater」は何が違うのか?
ここは明確な線引きはないですし、違いはないと思っています。
僕個人の整理としては以下のような種類がある程度かなと。
● 1括で後から支払う体験
- Pay Later型
14日後に1括でお支払い
● 分割で後から支払える体験
- Installment型
6週間に渡って4分割でお支払い
- Long term Installment型
12ヶ月に渡って長期の分割でお支払い など
世界で見てもKlarnaは3種類を提供しています。一方でAfterpayは1種類のみの提供になっています。
日本ではPayLater型を提供している事業者が多いです。
市場規模
レポートで出ている情報としてはGMO PG社の決算資料が参考になります。
2019年度には7,550億円の決済が後払い決済によるGMVと予想されていました。
GMOペイメントゲートウェイ社決算資料
クレジットカードを使いこなしているようなベンチャー界隈の方からすると違和感があるかもしれないですが、市場規模として非常に大きいです。
日本のプレイヤー概観
実は日本には数多くのBNPLプレイヤーが存在しています。
後払い専業
- ネットプロテクションズ社のNP後払い
- Paidy
カード信販系
- JACCS社が提供するアトディーネ
- ライフカード系列のミライバライ
決済代行系
- ベリトランス系列のスコア後払い
※もとは通販企業のニッセンが提供していたので通販系でもある
- GMO PS社のGMO後払い
物流、通販系
- ヤマトクレジットファイナンスのクロネコ後払い
- キャッチボール(親会社スクロールは通販)の後払い.com
などなど
数も多く、業績数値が表に出ていないため、主要プレイヤーの確認できる情報のみ記載します。
①Paidy
取扱高:不明
導入先:Amazon、DMM.com、Qoo10
ユーザー数:21年3月時点でトータルのアカウント数は500万
その他:2018年7月以降、伊藤忠商事の持分法適用会社
冒頭にも記載した資金調達によりユニコーン入りを果たしています。
関係者によると本ラウンド後の推定バリュエーションは13.2億米ドル(thebridge.jpより)
以下の記事によればAmazonのGMVが3兆4,238億円とのこと。
Paidyの決済選択比率が2%でも680億円の取扱高となります。
ユーザー層的にAmazonで2%取ることは難易度高いと思いますが、キャンペーン実施状況からもかなり力を入れています。
②GMO PS
取扱高:不明
導入先:ZOZO TOWN
ユーザー数:不明
ほぼ数字は出ていませんが2020年9月期の業績は以下となっており、かなり稼いでいる印象です。
③ネットプロテクションズ
取扱高:2019年度に2900億円
ユーザー数:NP後払いの利用者は2018年度には1350万人
導入先:ファーストリテイリング(ユニクロ)、楽天、Qoo10
日本で1番最初に後払い決済を開始したのがネットプロテクションズ社です。
取扱高の規模で見るとAffirmのGMVが単純計算5000億円程度なのでネットプロテクションズも引けを取っていません。
直近ではJCB社からも出資を受けています。
シェアについて
2018年度時点ではネットプロテクションズ社がトップのようです。
他社との細かなシェアまでは記載されていませんでした。
「NP後払い」の2018年度年間流通金額は2,500億円を突破し、同年度の後払い決済サービス市場規模5,720億円をもとに算出すると43%を占め、「NP後払い」は業界シェア1位であることがわかったとしている。
ECプラットフォームとプレイヤーの関係
各プラットフォーマーへの実績を見ると以下のようになっています。
●Paidy→Amazon、Qoo10、SHOPLIST(CROOZ社)
●GMO後払い→ZOZO TOWN
●NP後払い→楽天市場、Qoo10
※ZOZO TOWNにはクロネコ後払いも提供されていたり
楽天市場にはアトディーネも導入されています。併用もあるみたいです。
Amazonは日本だけでなくインドでも後払いを導入するなど対応を進めているようです。
ヤフーショッピングは今のところホワイトスペースになっています。
Amazonの決済選択画面
昨今日本でも急成長を遂げているBASEやSTORESに目を向けてみると以下のうような状況でした。
●Paidy→STORES
●ミライバライ→BASE
※ミライバライはライフカード系列です
BASEやSTORESは個人事業主を対象にしているので、どの程度取扱高に影響を与えるかは不明ですが、Paidy社はプラットフォームを抑えていく方針かもしれません。
BNPLに参入する新規プレイヤー
メルペイやPayPayもBNPL領域に進出しています。
ここでは深く触れませんが、PayPayの後払いについてはまだ全体公開されておらず、限られたユーザーに対してのみ機能を開放しているようです。
各キャリアのPAY
●ソフトバンク
→PayPayあと払い
●au
→au PAY上では提供していない
au PAYマーケット上で一部提供しているようです
●docomo
→提供していない
PayPayあと払いは、ヤフーショッピングで全面展開されるんでしょうか。
docomoは自社でやるのか、アウトソースするのか気になるところです。
各コンビニの動き
●セブンイレブン
→Payからは撤退
セブン銀行にて後払い機能を持っているバンドルカードに投資
●ファミリーマート
→ファミペイ上で提供開始予定
●ローソン
→未定
またファミペイも後払いに参入予定とのことです。資本関係的にpaidyがOEM提供するなんてこともあるのかなーと思ったりしてます。
潜在的な競合
BuyNowPayLaterの本質は、信用創造にあると思っています。
その側面から捉えるとLINEポケットマネーなども近しい動きとなっていくかもしれません。
LINEさんのこの記事はまさにオルタナティブデータによる信用創造だなーと思いました。
非金融の行動データで延滞や貸し倒れの発生率を予測するのは、非常にチャレンジングな取り組みではありますが、実際にこの1年でさまざまなことがわかってきました。例えば友達の数の変化であったり、友達の期間が長い方とよくコミュニケーションされるかどうかなど、LINE利用におけるコミュニケーション強度が延滞や貸し倒れの結果と明確な相関関係があることなどがわかってきました。
海外からの参入
SplititがGoogleと提携し日本に参入しており、つい最近利用可能になったようです。
このようにグローバルに展開する事業者と組むことで日本に進出するプレイヤーは増えるかもしれません。
H&Mと一緒にKlarnaが、Pelotonと一緒にAffirmが日本に進出する日も来るかもしれませんね。
おわりに
近年、BuyNowPayLaterはクレジットカードを代替するものとしてカード会社から脅威と捉えられています。
各ブランドはBNPLプレイヤーへの投資やパートナーシップを締結しています。
VISAと組んでいる海外プレイヤーは漏れなくバーチャルカードを発行してRetailに進出しています。Paidy社も今後同じ動きがあるのかもしれません。
JCBと組んでいるネットプロテクションズ社はJCBが展開するスマートコードを通してRetailに進出済みです。
Paidy社のエクイティストーリーを考えたとき、僕であれば以下のような整理をすると思います。
Paidyは業界トップシェアのネットプロテクションズなどと比べても展開している領域が広いと見せることで、世界から資金を集めることに成功しているのかもしれません。
以上粗くですが、日本の状況を記載してみました。
各企業様、誤っている情報ありましたらTwitterにてご連絡いただけますと幸いです。修正させていただきます。
※追記(2021/04/18)
Paidy者の決算公告
かなり踏んでますね。二期トータルで90億円以上の損失を出しています。
一定ビジネスモデルが成り立っているから踏んでいるんでしょうか。
AmazonやQoo10でのキャンペーンでユーザー獲得を推進しているようです。
PaidyのPayPalとの連携
VISAのバーチャルカードよりも先にPayPal連携が来ましたね。
PayPalは日本だと加盟店開拓が弱い印象なのでPaidyとの連携でユーザー獲得を期待しているのでしょうか。
ちなみにPaidy社の橋本さんは過去に楽天やPayPalに所属されています。
地味に楽天ラクマや楽天RAXYにも導入されているので、Rakuten Fashionあたりにも導入してくるんじゃないかなーとか思ってます。
書いてて思いましたがPaidy社は他社に比べて圧倒的に発信力が強いですね。
海外で取り上げられているのはPaidy社のみでした。