集中力がない人向け簿記論独学勉強法
MBTI関係ないようで関係あるかもしれません
税理士試験を受けてきました(簿記論と財務諸表論)。
簿記論は2回目、財務諸表論は3回目の受験ですが、正直これまでまともに勉強をしてきませんでした。勉強時間にするとおととしは財務諸表論のみ100時間、去年は簿記論のみ100時間ほどです。やらなきゃなと思いながらスマホをいじっている時間を含めるとそれぞれ200時間くらいかもしれません。
今の仕事は嫌いではないですが、これからずっとするほどではないと感じていたので、今年はさすがにまずいという気持ちで取り組みました。簿財両方で400-500時間したと思いますが細かくは覚えてません。それでもnoteを更新する暇があったらもっと勉強できたはずですが、まあそういうわけにもいきません。
税理士試験は基本的に我慢比べです。いかに勉強時間を確保するか、基礎をこなしきるか、苦手分野を克服できるかが問われます。会計科目は税法科目と比べるとずっとマシでしょうが、簿記2級未満の知識からスタート(経理経験はありますがサボっていたのであまり身についていなかった)した身としては簿記論も大概だと感じます。
ですから、自然とネットに転がる受験生へのアドバイスもそれに準じたものが多くなります。いろいろありますが、大抵要約すると「基礎をやり切れ」「毎日勉強しろ」「サボるな」と言っています。
いや、全くもって反論する気はありません。簿記論は言うまでもないですが、比較的簡単だといわれる財務諸表論だってほとんど誰も解けないだろう記述問題が毎年出てきます。そういう意味では早慶の歴史科目も悪名高いですが、財務諸表論ではそういう問題に100点中15点とか配点されていたりします。そういう試験ですから、合格ラインに乗るためには理不尽な問題を相手にせず基礎的な問題を落とさないことが何よりも大切です。
そして、そのためにはやはりコツコツ勉強して、苦手な論点を地道にクリアしていかねばならないのです。
そこで僕の話に戻るのですが、僕は勉強にかけては元々集中力に乏しく、1日3時間が限界です。たまに5時間やれる日もありますが、次の日は死ぬ気で頑張って2時間です。日頃は生徒たちに「志が高いなら何時間でもやらないとダメ」と言っていますが、正直に言って僕は無理です。もともときっちり数字を合わせるという作業が好きではないので、最低限の基礎が身につくまでは本当に簿記の勉強が嫌でした。
それでも、今回自己採点の結果、簿記論は各予備校ボーダー+5点ほど、財務諸表論はボーダー+3点ほどでした。受かっているのだろうと思いたいですが、転記ミス等で逆転不合格だと恥ずかしすぎるので合格発表までは講評とかはしません。特に財務諸表論は試験終盤割とどうでもよくなっていたのでもしかしたら何かあるかもしれません。
とはいえそれなりに戦えたことは確かなので、思考整理を兼ねて自分なりの反省を言葉にしてもいいのではないかと思いこのエントリーを書いています。こんな人間でもまあまあ戦えたので、「簿記嫌いだし集中力ないけど会計系資格ほしい!」と思っている方は是非読んでみてください。ただ、決して万人に受け入れられるものではないと思うので、よほど手詰まりを感じている人だけ参考にしてください。今回は簿記論の振り返りです。
(参考)僕の初期スペック
☆上場会社での経理経験4年
→大きな仕事は任されてない
→実務で貸借を反対にしたりして周りに嫌われていた
☆簿記の資格なし
→知識は簿記3級以上2級未満
→2級レベルは商業簿記ですら微妙というか解けない
1.インプット期:最速で演習に進むイメージで
インプット期において、大抵の人は「みんなが欲しかった教科書」→「個別論点の解き方」という流れになると思いますが、簿記論はとにかく論点が多く、すべての演習問題を瞬殺出来る状態までもっていくには仕事をしながらだと確実に時間が足りません。
専念受験生ならともかく、仕事をしていると勉強に割けるのは大抵2~3時間程度でしょうから、それではどの論点も「瞬殺」というレベルには達しません。そして明日には忘れていて復習のたびにイライラすることでしょう。
また元々おっちょこちょいな人間は、論点を思い出しながら演習を解いてもほぼ間違いなく計算ミスか問題文の読み飛ばしをやらかします。今の時点で最終的な数字を合わせることを絶対目標としてもストレスがたまるだけです。
ここで最低限守ってほしいのは、「この試験科目にはこういう論点があるんだなあ」と頭に入れておくことです。後々の演習で「この論点あそこでやったなあ」と振り返ることができる程度に頭に入っていればとりあえずOKだと思います。論点の目次を頭に作るイメージです。
教科書の講義パートを7割理解したら、さっさと演習に移りましょう。そして何となく解き方に慣れたら最終的な数値が当たってようが外れてようが次の論点に進んでいいと思います。そもそも解き方のポイントを外している場合はさすがに繰り返すようにしましょう。
そんな感じで教科書を一周出来たら「個別論点の解き方」に入ってください。教科書を通していても結局過去の学習論点を忘れまくっていて初見で解ける問題は多くないでしょうが、それで教科書をがっつりもう一周してもあまり意味はないと思います。「個別論点の解き方」をやる範囲に合わせて事前にざっと確認する程度でいいです。
これはさすがに教科書のようにざっくりではまずいので、9割以上の理解を目指してください。苦痛ですが、実践的な解法も多く紹介されているので教科書を完璧にするよりはずっとマシだと思います。
特に最初の1周目は1週間あたり2~3日復習日を設定しましょう。2回復習するとさすがに何となく顔なじみレベルにはなります。出来ればこれを2周したいですが、メンタルが持たないのであれば1周できたら演習に移っていいと思います。
計算ミスにこだわらないでほしい理由
計算力は大量の演習をこなしてやっと身についてくるものです。「単純な計算ミスをしているようではそもそもちゃんと理解していない」というのはその通りなのですが、受験勉強上はケアレスミスをしていても問題のポイントを抑えていたらさっさと次に進んだほうがいいと思います。例えば、有価証券の問題で個々の有価証券で正しく償却原価法を適用出来たら、最終的な集計でミスったとしてもこの段階ではOKとしましょう。なんなら最終的な償却原価が間違っていても考え方があっていればいいと思います。どうせ実践的な解き方は後の参考書・演習で何度もやりますし、基礎的な計算力が未熟なうちはどれだけ論点を正しく理解していようが間違うものは間違います。
僕はケアレスミスをした問題もいちいち解きなおしていたのですが、何回やっても当たらないので一時期ノイローゼになってました。集中力がない人は、それでやる気をなくさないように学習プランを考えていくことが大切でしょう。
演習期前半:仕訳の瞬発力を鍛え続ける
一時期いつまでたっても個別論点の復習が進まず、このままでは挫折一直線だったので、去年入っていたスタディング(動画はほとんど見てない)の演習をやりまくったのですが、僕はこれが転機になったと思います。
よく「総合問題だって個別論点の集合だから個別論点が完璧になるまで何十周でもするべき」と言われますが、そんなのは真面目な人だから出来るのであって、集中力皆無な僕には無理です。総合問題演習をしていると気がつくと時間が経っているので、それだけで多少は自己肯定感が満たされる気がします。まあ個別論点の学習に比べると効率は落ちるのですが、挫折してしまっては元も子もないので、僕のように忍耐のない人はそれでいいと思います。
これらの答練は比較的難易度が低めなので、実力が足りなくても何とか戦えたりします。このために課金してもいいと思うし、メルカリで買ってもいいと思います。この段階でやる演習としてはTACの総合計算問題集(基礎編)も候補ですが、こっちは少し難易度が低すぎるのと個別論点のレベル感を感じることも大切なのでどちらかと言えばスタディング+TAC答練のほうをお勧めします。ちなみにベストは両方やることです。
最初のうちは答練1回分を個別と総合に日を分けて2時間ずつで半泣きになりながら解いていました。たまに総合問題だけでも1日で終わらないことがありました。
こんな感じだったので正直まともに復習できていないことも多かったですが、ここで問題を解きまくる経験=仕訳を大量にこなす経験をしたことで、計算スピードが格段に伸びた気がします。
僕みたいに順を追って丁寧に暗記していくのが苦手だと感じるようなタイプの方は、とにかく演習を繰り返して仕訳の瞬発力を鍛えなければあまり学習が進まないと思います。新しい問題を大量に処理することで仕訳の感覚を頭に叩き込むのです。
またもちろん難しい論点の復習は丁寧にやるに越したことはないのですが、集中力がない人間はそのせいで勉強から遠ざかってしまいがちです。これはかなりの問題発言かもしれませんが、復習と新規演習どちらをやるか迷ったら、迷わず後者でいいと思います。新規演習ならいざ始めたら一瞬で2時間経っていると思います。とにかく勉強のハードルを低く低くしていきましょう。
とはいえさすがに復習ゼロだとしんどいので、少しでも余裕があるときは間違えた箇所をちゃんと見直したほうがいいです。初見問題を解く重要性の話がしたかっただけで、復習の大切さを否定するつもりはありません。
また、さすがに完全初見の論点が出てくるのは異常なので、もし「見たこともない」と思える論点に遭遇した場合は、時間がなかろうが教科書・個別問題の解き方を必ず見返してください。
演習期中盤:TACの総合計算問題集(発展編)をやりこむ
本番と近いレベルなので難しいですが、これまでに大量の演習をこなしていたら意外と得点力は上がっているはずです。(とはいっても基礎が脆いと精々15-25点をうろつく程度でしょうが、たまに25点を叩き出すと「ここまで来たか」感があっていいです)
このレベルになるとさすがに手も足も出ない論点も減ってくると思うので、復習の質にもこだわっていきましょう。このころになるとケアレスミスのパターンも見えてくるはずなので、誤答レポートをつけることをお勧めします。「またやっちゃった」という類のケアレスミスであれば、マニュアル化することで必ず減らせます。「新株の発行+自己株式処分のとき、自己株式処分差損の発生に伴いその他資本剰余金を動かした」などが典型例でしょう。ちなみに僕はその他有価証券評価差額金をこの時期になってもよく逆に仕訳していましたが、誤答レポートを徹底すると減っていきました。ミスを言語化することがとても大切だと思います。
※税効果会計や高難度論点については誤答レポートは不要です。本番でもどうせ当たらないので、基本論点のみミスの理由を言語化しましょう
去年はこの参考書を1題2時間以上かけてやっていましたが(もちろん途中で挫折)、こういう経緯で今年は1時間をかけずクリアすることも多くなっていたと思います。
ちなみに僕は1周しかやってません。さっさと過去問に移りました。2周できるならしてもいいですが、こういうエントリーを参考にしようとして読んでいるような方はどうせもう本番まで時間的な余裕がないと思うので、この復習を計画に織り込むほうが負担になりかねません。どうせ頻出論点は他をやっても出てくるので、じかんがないなら初見問題の演習を優先すべきだと思います。財表の理論などがあればそっちを優先しましょう。
演習期終盤:模試+TAC答練で時間配分の感覚を微調整
このくらいになってくるとあとはスピードと正確性のバランスをどうとるべきかで悩むようになってくるはずです。自分の解答スタイルを決めに行きましょう。模試での結果を踏まえて微調整するといいです。
僕は元々、思考の瞬発力には自信がある一方で順序立てて物事をこなすのが苦手なので、実践演習では基本的に取捨選択せずすべての問題に一通り触るようにしていました。自宅での演習時点ではそれなりに間に合っていたのですが、TACの直前模試で雰囲気にのまれてしまい全く時間に間に合いませんでした。
その反省から、模試以降の最後の1か月半は「いかに厳しい問題を飛ばすか」という観点から演習を繰り返しました。
このころにはしっかり2時間で個別+総合問題を解ききれるようになっていたので、問題演習の心理的なハードルは相当低くなっていました。メルカリで買ったTACの答練を毎日のように解きまくって、捨てるべき問題の見極めを繰り返していました。
その点はこの短い時間でかなり上達したと思います。大事故は減り、最後には過去問レベルであれば安定して6割という状況で本番に臨むことができました。
もちろん、継続して誤答レポートもつけています。このころにもなるとミス原因の蓄積も進み、計算中にミスを予期できる確率も高まったと思います。これでミスを予期できる確率としては、感覚的にせいぜい40%程度ですが、2時間で10も20も凡ミスをやらかす人間として40%のミスが防げるというのはかなり心強いです。まだまだ信じられないミスはしていましたが、総合で見ればボーダーラインを超えることも多くなっていたので割と心は落ち着いていました。インプット期だろうが演習期だろうが直前期だろうが本番だろうがどうせケアレスミスはするので、ミスの存在自体に揺さぶられることのないようにしましょう。ミスの数が多くなければいいのです。
また、連結・本支店会計・工事進行基準など、ややこしく個別論点で狙われがちな個所については「個別問題の解き方」で補強していました(結局今回全く使いませんでしたが)。この時期になると仕訳の感覚がだいぶ身についていることもあって、ややこしい論点でも最初に比べてスムーズに学習できると思います。
本番:不動の心
まあ結局これが大切かもしれません。周りの筆が進む音とか、ページをめくる音とか、何も気にする必要はありません。税理士試験をことさらに競争試験だと強調する人も多いですが、少なくとも簿記論及び財務諸表論については、合格率を見る限り頑張った人は大抵受かっている印象です。
あまり周りを気にせず頑張りましょう。ちなみに願書の提出が遅れるほど本番で周りに座る人間のレベルが落ちるのはガチだと思います。周りが気になりすぎる人はギリギリに願書を出しましょう
その他参考書:会計人コースweb 直前予想問題集
直前期に高難易度の問題をやりたくて取り組みましたが、正直やらなくてもよかったかもしれません。いくらなんでも難しすぎますし、記載の合格ボーダーがめちゃくちゃです。どれも悪名高い2023年度簿記論の1.5倍以上難しい印象です。これで「合格ボーダー」なるものをクリアできる人は本番酒飲んでも受かると思います。個別論点のハイレベルな問題までやりこんだ方が腕試しでやるものでしょう。
ギリギリを攻める必要がある僕みたいな人間が手を出すものではありません。そういう人は素直にTACや大原の答練をメルカリで買いあさりましょう。
まとめ
とにかく仕訳の瞬発力を鍛えるために必要な勉強をすることです。復習と丁寧な理解ももちろん大事ですが、そればかり徹底するとモチベーションが破壊されるかもしれません(もちろん淡々とこなせるならそうすべきです)。MBTIでいうNPタイプはとにかく頭をフル回転させるのが好きな一方で集中力は絶望的なので、初見問題に触れる回数を絶対に確保するようにしましょう。SJタイプやNJタイプは適度に効果測定を交えながら基礎を淡々を固めていけばいいと思います。
まあ僕はまだ受かっているかはわからないのですが、僕みたいな人間がここまで来れたこと自体が割と奇跡です。僕は他人を応援することが好きなのと、営業力に自信があるから税理士開業を目指しているのであって、簿記は今でも嫌いです。簿記でもなんでもそうですが、勉強が好きな人間にはまともに戦っても絶対にかなわないので、自分のモチベーションを保つ方法については考えれば考えるほどよいでしょう。「モチベーションが上がらないのは自分の甘え」だと切って捨てては何も進みません。
オーソドックスな勉強法も重要ですが、集中力に問題がある方はそれ以上に自分の特性を先回りした学習計画を立てることが大切でしょう。こういう方面でもMBTIタイプを参考にするのは非常に有効だと感じます。