NUSの工学部紹介【過去記事】
みなさんこんにちは!
NiSCでは2021年から前の公式ウェブサイトでシンガポール国立大学についての記事を投稿していました。今年からこのnoteに移行して記事配信を行なっていますが、過去の記事もこちらに随時移行していきます!少し古い情報もあるかもしれませんが、随時内容更新も行なっていきます。
ぜひこちらの過去記事も読んでみてください!
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投稿日付:2021年8月15日
筆者:YUKI
はじめに
NUSの工学部は創立1968年と歴史が古く、あのMITからもお墨付きを頂いてる程質の高い教育を提供しています。特徴としては、
1.将来を見据えたカリキュラム
2.経験型学習
3.カリキュラムの柔軟性
4.国際的な交流
などが挙げられます。
こうした教育のおかげでNUS工学部の卒業生は常に高い就職率を記録していて、最近の記事によるとコロナ渦の2020年でも93.9%と、社会のトレンドや必要とされる能力に合わせて生徒を教育していることがよく伺えます。(参考:https://news.nus.edu.sg/graduate-employment-survey-2020/)
今回の記事ではそんな工学部を、ホームページなどで出回っている情報のみならずNiSCのメンバー目線の感想も交えながら紹介していきます。
まずは工学部全体に共通していることをいくつか挙げた後、それぞれの学科(執筆当時は10個)を簡単に紹介します。
また学科ごとにより詳しく解説している記事へのリンクも載せています。
それではいきます。
1. Engineering Core Modules
工学部では学科によらず履修が必須な単位がいくつかあります。
例としては【EG1311 Design and Make】(Arduinoを使った簡単な電子工作) や 【MA1508E Linear Algebra for Engineering】(行列入門)などがあります。
これらの基礎的な単位を一年目から二年目にかけて履修していきます。
またEngineering Core Modulesとは別に、大学全体での必須単位もあります。
これらはGeneral Education Modulesといい、専門知識ではなく主に教養を目的とした授業となります。
Engineering Core Modulesは先に終わらせないとよりレベルの高い単位が履修できないのに対し、GE Modulesは大学に在籍している間いつでも履修していいので、スケジュールを見て受けるタイミングを調整できます。
また課題の量は比較的少ないので、ちょっとした羽休めになることも多いです。
2. Industrial Attachment/NOC
工学部ではインターンシップも必須になります。
これは大体三年目から四年目にかけて行いますが、中には三年目が始まる前の夏休み(NUSは8月から前期が始まる)中に終わらせる人もいます。
企業ごとのインターンシップへの応募は学生が率先して行う必要があるので、就職活動に近い形でアプリケーションをする必要があります。
インターンシップに応募することは、「なぜ入りたいのか、どうして入るべき人材なのか、どのような人間なのか」など自分の人生を振り返るいい機会にもなるでしょう。
また、Industrial Attachment では、インターンシップを通して学習したことをプレゼンテーションとレポートの形で提出する必要があります。
インターンシップでの経験を振り返る必要もでてくるので、なおしっかりと実社会での就職を考えるチャンスにもなります。
ちなみに、NUSには、海外でインターンをしつつ、提携大学での授業を受けられるNUS Overseas Collegess(NOC)と呼ばれるプログラムが存在します。
交換留学とは一味違った、海外でのインターンシップ経験にもなるので、NUSの学生には大変人気の高いプログラムのひとつです。
NOCについて詳しくは、こちらのページから読んでみてください。
(https://enterprise.nus.edu.sg/education-programmes/nus-overseas-colleges/)
3. Second Major / Minor
自分の専攻以外に興味のある分野があれば、その学科・専攻が提供しているSecond MajorやMinorを履修することができます。
これらは普通に専攻するよりも凝縮されたパッケージになっていて、基本の専攻は66MCであるのに対し、Second Majorは40MC、Minorは20MCとなります。
また基礎単位を既に履修していればもう一度履修する必要はなく、例えば40MCのうち4MC分を既にとっていれば、40 – 4 = 36MCでSecond Majorがとれる、ということになります。
だからそれを狙ってより負担の少ない(=基本の専攻と被る所が多い)Second Major / Minorをとる人もいます。ただ、あまりに内容が似ていると大学側が履修を禁止している場合もあります。例としてはBusiness Analyticsを専攻している人はData AnalyticsのSecond Majorを履修するはできません。
もちろん、全く違う分野のSecond Major / Minorをとる人もいる人もいます。その場合は基礎単位から履修しないといけないのでSecond Majorなら40MC、Minorなら20MCとフルの負担になります。
Second Major や Minor を完了すれば、卒業する時にTranscriptに記録として残ります。就職するときのアピールポイントにもなるでしょう。
4. Pathway
NUSの工学部には、pathwayと呼ばれるエンジニア内での進路が存在します。
・ Practising Professional Pathway (PPP)
・ Innovation and Design Programme (iDP)
・ Research-focused Pathway (RfP)
(https://www.eng.nus.edu.sg/undergraduate/degree-programmes/pathways/)
PPPとは、もっとも多くの学部生が進む道になっていて、より専門的な学科の学習を進めていきます。
就職を見据えた業界ごとに必要な知識や実践的な技術が学べるので、もっとも無難であり、自由度が高い進路です。
また、iDPとRfPは、デザイン開発と研究にそれぞれ重きをおいた進路になっています。
これらのpathwayは、学部の二年生三年生になったときに最終選択ができるので、入学時にまだ決まってない場合でも問題はありませんよ。
5. Innovation and Design Programme (iDP)
iDPとは、工学部のPathwayのひとつで、Second Majorとしてもカウントされる、プロダクト・デザインや起業・スタートアップに興味がある学生に向けた進路です。
このプログラムでは、一年生の時点から、グループでの消費者に寄り添ったデザイン開発を学んでいきます。
2年生から3年生にかけては、DCP Projectと呼ばれるグループプロジェクトで一年かけて、プロダクト開発をしていきます。
また、ここから起業にブランチアウトするなど、在学の時点から将来を見据えて、活動していくことができますよ。
企業への就職や研究の道だけでないエンジニアの形を追求できる、クリエイティブなエンジニアにおすすめのSecond Majorプログラムです。
6. Undergraduate Research Opportunities Programme (UROP)
UROPとは、Undergraduate生でありながらも、教授のもとで半年から一年の研究に携わることができるプログラムです。
日本の大学にあるゼミのシステムに似ていますが、一年生のうちから始めることができるので、いち早く研究者としての経験を得ることができます。
実際、UROPは工学部に限られたプログラムではありません。
ただ、NUS の工学部のpathwayとして、研究方面(Research-focused Pathway | RfP)に進んでいきたい方におすすめされているプログラムになります。
UROPについて詳しくは、こちらのページから読んでみてください。
(https://www.eng.nus.edu.sg/undergraduate/degree-programmes/optional-modules/urop/)
7. 専攻
では工学部のそれぞれの学科について軽く紹介しましょう。
7-1. Biomedical Engineering(医用生体工学科)
Biomedical Engineering (BME) では、医学と薬学における複雑な問題を工学的なアプローチで分析・解決することを目指します。最新の医療機器の使い方を学び、それらを用いた学生主体の実験やプロジェクトに重点を置いています。
シンガポールは医用生体工学のハブとしても知られていて、Biopolis を始めとする研究施設が沢山建てられている上、多くの海外の会社もシンガポールに拠点を置いており、需要の高い分野と言えるでしょう。
詳しくはこちらから。
7-2. Chemical Engineering(化学工業科)
Chemical Engineering (ChE) では、化学薬品や石油工業製品、食べ物や医療薬品など、さまざまな化学プラントの設計から導入、監視や制御などを学んでいきます。より経済的で、より環境に良いを目指して、必要なスキルを学ぶことができます。
熱力学や流体力学を始め、化学プロセスに欠かせない多くの知識を学んでいきます。物理だけでなく、数学や化学、ときには生物の仕組みを理解していきながら、どのような企業でも活躍できる化学エンジニアを目指すことができます。
シンガポールは世界有数の石油工業が盛んな都市。東南アジアを主体に、ハブとしての役割をになっています。たとえばジュロン島には、Shell や ExxonMobil を始めとする石油会社はもちろん、三井化学や旭化成などの日本の化学企業も進出していますよ。
詳しくはこちらから。
7-3.Civil Engineering(社会工学科)
Civil Engineering (CE) では、高速道路や発電施設など身の周りの社会を支えるインフラをデザインすることを学びます。SDGs に基づいた持続可能なデザインや天候に左右されないシステム、より効率の良い交通網などを生み出すことによって人々の暮らしの質を向上させることを目指します。
また、Digitalization of Urban Infrastructure という専攻もあり、こちらでは人工知能やドローンを始めとする最近技術を社会工学に応用することを学びます。
詳しくはこちら。
7ー4.Computer Engineering(情報工学科)
Computer Engineering (CEG) では、スマートな社会を実現するために欠かせない情報機能の管理・活用について学びます。携帯電話やパソコン、自動車や家電など、現代社会で多くのものが情報の力で動いている中、その情報を工学的に利用し、医療から環境保全まであらゆる分野に貢献できる技術者の育成を目指します。
卒業生の進路先としては、IT系に限らず金融やコンサルティング、また自分で会社を始める人もいます。
詳しくはこちら。
7-5.Electrical Engineering(電気工学科)
Engineering Science Programme (ESP) では、さまざまな R&D を担うエンジニアの育成のために、理学部と工学部の共同で立ち上げられたプログラムです。しっかりと科学の基礎を作り上げ、エンジニアにおける応用を学びます。
1-2年次では、情報から交通、エネルギーや医療、防犯から環境まで、分野に限られない多くの問題に取り組んでいきます。そして、3-4年次には、専門分野を選択して、より詳しくエンジニアとしての応用を学んでいくことができますよ。
詳しくはこちらから。
7-6.Engineering Science Programme(NUS 特有のプログラム)
Engineering Science Programme (ESP) では、さまざまな R&D を担うエンジニアの育成のために、理学部と工学部の共同で立ち上げられたプログラムです。しっかりと科学の基礎を作り上げ、エンジニアにおける応用を学びます。
1-2年次では、情報から交通、エネルギーや医療、防犯から環境まで、分野に限られない多くの問題に取り組んでいきます。そして、3-4年次には、専門分野を選択して、より詳しくエンジニアとしての応用を学んでいくことができますよ。
詳しくはこちらから。
7-7.Environmental Engineering(環境工学科)
Environmental Engineering (EVE) では、暮らしの環境をより安全で持続可能なものにするために環境汚染や再生可能エネルギーなどの課題を、工学のみならず、生物学や化学などの科学的な知識も用いて解決することを目指します。
EVE は他の学科と同様にプロジェクト・ベースで、例えば ESE3011 Integrated Project for Environmental Sustainability という授業では、実際にある農村で暮らしの質を向上させるようなアイデアを計画・実行します。この授業を履修したあるチームは、講義で学んだ下水処理の知識を実際に活用できて良かったと振り返っています。
詳しくはこちら。
7-8.Industrial & Systems Engineering(産業・システム工学科)
Industrial & Systems Engineering (ISE) では、「データと経験に基づいたソリューションやプロセスの最適化」について学びます。あらゆる課題を、
1.目的関数(Objective Function):何を目的としているか。
2. 制約(Constraint):現実面で満たさないといけない条件。
に帰着させ、統計やシミュレーション、人工知能などを用いて現実的かつ最適な解(optimal feasible solution) を導こうとします。
ISE では何か一つの専門分野に特化するよりも、沢山の分野を学べる所が大きな魅力です。卒業生の就職先は商社、銀行、政府関係、物流、IT系など多岐にわたり、また3年次にはSystems Design Project と呼ばれる長期インターンも実施するなどハンズ・オンな学科で、工学部の中でも高い就職率を誇ります。
詳しくはこちら。
7-9.Materials Science & Engineering(材料工学科)
Materials Science & Engineering (MSE) では、大きなビルを支える鉄やコンクリートから電子機器の中のセミコンダクターまで、現代社会の技術革新を可能にする材料の研究をします。MSEでは二つの専攻 (specialization) から選ぶことができて、一つ目はナノテクノロジー系、二つ目は医用材料系です。
1~2年次に物理と化学の基礎を築いた後、3年次から実験などのプロジェクトが主体になります。また基礎単位を履修した後、研究に進みたい人や起業したい人に向けた特殊なコースも用意されていて、将来の目標に沿った教育を選択して受けることができます。
詳しくはこちら。
7-10.Mechanical Engineering(機械工学科)
Mechanical Engineering (ME) では、熱力学や流体力学、材料工学などの知識を応用して現代社会を支えるあらゆる技術のデザイン、製造について学びます。沢山の分野について学ぶことによってキャリアの選択肢は実に幅広く、航空系や製造業のほかロボット工学系や医用生体系の道に進む人もいます。
MSEでは4つの専攻 (specialization) が用意されています。一つ目は、無人航空機も含む様々な航空技術について学ぶ航空工学系。二つ目は、持続可能なエネルギーとその応用について学ぶエネルギー系。三つ目は石油や天然ガスについて学ぶ専攻。そして四つ目はロボット工学系になります。
詳しくはこちら。
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最後まで読んでくださりあがとうございました!
これからの新記事も、過去の記事も楽しみにしていてください。それではまた〜