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九州人はマイクを持ったら何か一言言いたくなる話

先日、職場のカラオケ大会の司会をしました。

僕は高齢者施設で働いているんだけど、そこで年に1度の大規模な
レクリエーションとしてたくさんの高齢者の方が参加する
カラオケ大会というのがあって

その司会者としてイベントに参加させて頂きました。

たくさんの方が参加するイベントなので、いざステージに上がると
目の前に50人以上の人がいて

その視線を浴びながら歌うのは結構緊張します。

だから本番にちゃんと歌えるように、普段から皆さん練習してたんです。

そのカラオケの練習会の時に、毎回歌う前と歌い終わった後に
必ず一言挨拶をするおじいちゃんがいまして。

僕はそのおじいちゃんの練習風景を見ながら「おー、気合い入ってるなあ」
って見てたんです。

「本日は皆さま私の歌を聴いて頂き、ありがとうございました。」


本番もきっと何か一言話すだろうな。
ちゃんとその時間を確保できるように、司会進行をしようと考えていました。

そのおじいちゃんは、普段は気難しい感じがあって、しゃべり言葉が九州男児といますか亭主関白を連想させるような

「おい!お茶!」

結構大きな声で、口調も強いので、こんな事言うとあれなんだけど、ちょっとめんどくさい感じの方ではあったんですね。

でもそんなおじいちゃんが、マイクを持つと、急に礼儀正しくなって、一言話す姿がなんか可愛いといいますか、練習風景を僕は微笑ましく見ていました。

いざ、本番。

「さて、それでは〇〇さん(おじいちゃんの名前)に歌って頂きましょう。〇〇さんステージによろしくお願いしま〜す。」

おじいちゃんは立ち上がりステージ前に行きマイクを持つと、会場は拍手と歓声で盛り上がってきました。

やっぱりというか、待ってましたというか、おじいちゃんは一言話しはじめました。

「えー、皆さん今日はありがとうございます。私事ではありますが、のどの調子が悪く、、えー、、歌いたい気持ちはあるのですが、残念ですが、、今回は遠慮させて頂きます、、。」

!??????

想定外のことが起きました。

おじいちゃんはマイクを手放してしましました。

はは~ん。さてはこの大観衆で歌うことが、急に恥ずかしくなっちゃったんだな。

でも、皆さんの前で礼儀正しくマイクで喋れるなら、押せば勢いでいけるだろうと思い

「ねえ、皆さん。〇〇さん(おじいちゃんの名前)の歌声をききたいですよね~??」

僕は客席をあおりました。

盛り上がる会場。

「歌えんって言いよる野郎が!!」

マイクを持ってないおじいちゃんは、ただの気性の荒い九州男児に逆戻り。

いかんいかん、マイクを!マイクをおじいちゃんに渡して~!

「歌わんっち言いよる野郎が!!」

もういつもの頑固な姿になってしまったので、これはもう厳しいと判断し

僕は言いました。

「残念ですが本日は喉の調子が悪いとの事なので、また来年ステージで歌って頂きましょう。さて、次の方に移りたいと思います。次の方は、、、。」

その時、会場から声が聞こえてきました。

「一緒に歌おうや!俺も歌うき、一緒に歌おう!」

嬉しいことに、まさかの助け船が現れました!!

会場は一気に盛り上がっていきます。

その空気に押されるように、おじいちゃんも一緒にステージへ上がっていきます。

この助け舟を出してくれた方。

うちの施設では大人しくて、物静かでダンディーな感じ。

いつも声をかけると、笑顔で返してくれる
とても80代には見えないおじいちゃん。

選曲もこのダンディーおじいちゃんが提案し、おじいちゃんの了承もすんなりと受け、スムーズに決めてくれて

銀座カンカン娘に決定。

さすが!選曲もダンディーだなと感心してしまいました。

「それでは改めまして、お二人に歌って頂きましょう!!銀座カンカン娘でーす!!それではどうぞー!!」

会場は大歓声。拍手喝采。

懐かしい曲のイントロがはじまりました。

ああ、この曲は聴いたことあるな。

会場にいるたくさんの方も、楽しみにしてそうな温かい空気。

これぞ!!皆さんとの一体感!!そんな優しい空間に包まれていました。

「ちょっと曲を止めてくれ!!」

!??????(本日2回目)

曲を止めてほしいといったのは、まさかのダンディーおじいちゃんでした。

あれ?どうしたんだろう、、。少し不安になりながら

「どうされましたか?」

と声をかけると

「ちょっとこの場を借りて話したい事があって。」

何か一言言ってから歌いたかったんだなと思い、僕はダンディーおじいちゃんにマイクを渡しました。

ダンディー
「ちょっと皆さんに話したい事があってメモを取ってきました。ちょっと、ちょっと待ってね。」

気難しいおじいちゃん
「なんしよん。はよ歌わな、みんな待っちょうばい。」

ダンディー
「あれ?メモどこにいったかな。」

気難しいおじいちゃん
「もういいっちゃ。はよ歌おう。」

ダンディー
「あったあった。(メモが)」

気難しいおじいちゃん
「早よしり。」

ダンディー
「えー、、。あんたロカビリーって知っとるね?」

気難しいおじいちゃん
「ロカビリー?あんた今から銀座カンカン娘歌うとやろうもん。ロカビリーとか知らんばい。」

ダンディー
「そうね。えー、、。私の好きなロカビリーの曲はですね、、、。」



こっちの方がめんどくさかったー!!!!

まさか、まさかの展開に会場の空気はみるみる沈んでいきました。

ダンディーな方でも、気難しい方でも

九州男児はマイクを持つと不思議と熱くなり、何か一言言いたくなるというお話でした。

もっと上手く司会できるようになりたいね。

精進します。

ちゃんちゃん。








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渡辺征也(わたなべせいや)
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