「わたしではないわたし」制作日記2020/12/17
夕飯後。散歩に行った。ぶらぶらしている。行きたいところがない。考えたいこともなかった。無気力この上ない散歩だが、歩いているうちに気持ちが良くなってきた。
自分は何をしたいのだろう。ぶらぶらと歩いているときには、自分には何もすることがないのではないかと思いかけた。しかし、歩いているうちに、海の底に当たって跳ね返るように、ゆっくりと気分が浮上してきた。家に帰ったら何かを書きたい。書きたい。
というわけで今日も、制作日記を書く。制作を始めていないのに、制作日記から書き出すのもおかしい。制作したいと思った時点で、日記は始まっているのだろうか。
いつもは日記というものを書いているつもりなのだが、文章の定義はうまくできない。前は、日記を書いていますとか、小説を書くのが趣味ですと説明できたが、今はnoteに投稿する随筆と、自分のノートに手書きで書く文章のみで、形を持った何かを作っている気がしない。
文章を形にする気力すらもなくなってきた。自分の文章は、明日続きが書かれるので、今日まとめようとしなくてもいい。さらに、積極的に昨日と同じことを書く。今日の方が上手くかける。
言葉を毎日毎日書いていると、よくわからなくなる。言葉とは何か? 書けば書くほどわからなくなる。わからなすぎて、申し訳ないと思うことすらある。文章が次に進んでいく理由がわからない。物語が自然に進んでいるのをみたり、詩が書かれているのをみたり、誰かが堂々と説明したりしているのを聞くと、そんな簡単に言葉がつながっていくのがすごい。と思えてしまう。調子が悪いときには、そんな簡単に書けるわけがないだろう、と自分以外の言葉を受け付けなくなってしまう。というわけで、次の文章を書くときに、違和感がある。言葉が本当に行きたい場所にわたしは連れて行けているだろうか。
言葉が揺れ動かないから、わたしの感情が揺れ動いていることがわかる。寂しいときには、寂しい言葉が出る。淡々と、淡々と書くことができればいいのに。それがここ最近ずっと考えていることだ。どんな感情がわたしの中にあろうとも、書くことができたらいいのに。どれだけ忙しくても、どれだけ無気力でも、そこから言葉を生み出せたらいいのに。むしろ、その中でこそ言葉を生み出さなければいけない。何か人を勇気付ける言葉とか、タメになる言葉とか、喜ばせる言葉とかではなく、なんの役に立たない言葉、くだらない言葉、意味のない言葉、つまらないわたしから出てくる言葉こそ、書かなければならない。
言葉をどこまでもフラットに考えたい。だから、わたしはわたしが想定している言葉のあり方を信用しない。わたしだからこそ書けるものなどはない。言葉が先にあって、わたしが後に来る。わたしが書きたいものを言葉に投げかけて、いるのではなく言葉がわたしにわたしを与える。
「わたしではないわたし」というタイトルはそんな思いから打ち立てました。
たまたま、適当に書いていたらそういう話になっただけですけど……。
つまり、わたしが考えている、「わたしらしさ」や「アイデンティティ」みたいなものを突き崩して、わたしではないわたしで何かを書けないだろうか。
誰かになりかわって随筆を書く。
自分とは違う主人公を設定して、一人称の小説を書く?
というような計画をしている。しかし、小説とは「物語」のことだから、少し論点が違う気がする。物語を作ろうとしたり、フィクションの世界を構築しようとしたりしているわけではなく、文章を書いているわたしを、別の何かに変身させたいのだ。
だから、いくら「設定」をSFにしたりファンタジーにしたとしても、そこに「わたし」はそのままのさばってしまうかもしれない。主人公の口を借りて、いつもと同じようなことを言ってしまうかもしれない。
だとしたら、文章の中身をいくらいじっても仕方がない。そうではなく、文章を生み出す原動力を変えてみるのだ。
例えば、手書きで書いたものを打ち直したり、朝ものすごく早く起きて書いたり。文字を一文字づつ丁寧に書いたり。手っ取り早くゴーストライターに頼んだりしたりしてもいいかもしれない。そうすれば、「わたしではないわたし」が生まれてくると思う。
書き続けることで、勝手にわたしは変わっていくとは思う。だとしたら、毎日書いているものがその営みの一部である。あえてマガジンを作ることも、制作日記を作ることも意味があるように思えなくなってきた。
まあ、もう少し粘るか。
手書きで書いたものをそのまま投稿することはやったことがある。文章を書くのが遅く、さらにスマホの小さい画面に手書きで書いていたため窮屈だった。
まだやったことがないのは、そもそも言葉で書かないことだ。絵だけで何かを語ってみるのも面白いだろう。
書く時間は書く内容に影響しているか? おそらくしている。毎日決まった時間に書くことはしていない。大体の時間はあるが。
ゴーストライターと言っていたが、代わりに書いてくれそうな人はいるか?
いない。
今になってこの企画はこっち方向に進むのか……と驚いてすらいる。昨日まではフィクションでも書き始めるのかと思っていたし、物語の設定を毎日この制作日記で固めていくのかと思っていた。
しかし、書き始めると何を書くかどうかを決めるところから始まっているようだ。なんだか、こっちの方がワクワクする。あてはないけれど。さて、一ヶ月後にはどんな文章ができているのか。