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どうして嘘をつくことができるのだろうか
言葉と現実は別のものだ。その証拠に嘘を言うことができる。目の前にリンゴがあるのに、「目の前にあるのはミカンです」と言うと嘘になる。
「目の前にあるのはミカンです」と言う言葉は嘘だ。「目の前にリンゴがある」と言うのが本当だ。
嘘をつけるのはなぜだろう。嘘を嘘だと理解することができるのはなぜだろう。考えてみると、「目の前にあるのはミカンです」と言う言葉に意味がなくてはならない。
なぜかというと、「目の前にあるのはミカンです」が嘘だとわかるためには、「目の前にあるのはミカンです」という言葉の意味を理解することが前提にあるからだ。意味を理解して初めて、目の前の現実と言われている言葉がずれていることが分かる。
意味は現実とは独立してあるみたいだ。実際にミカンが目の前になくても「目の前にあるのはミカンです」という言葉は意味を持つ。
言葉に意味があるから嘘をつくことができる。そして嘘をつくためには言葉の意味を理解する必要がある。また、現実を把握することも必要だ。
目の前の現実を把握し、あえて、それとは別の意味を持つ言葉を言うこと、それが嘘をつくことだと言えそうだ。
言われた言葉が、嘘だと分かるためにも嘘をつくための二つの条件が必要だ。言葉の意味を理解すること、現実を把握することの二つだ。
言葉の意味が理解できなくては、そもそも嘘だとわからない。自分の知らない外国語で、嘘をつかれてもわからない。
さらに、言葉の意味がわかったとしても、現実を把握できていない時も嘘だとわからない。言葉の意味と、現実を比較することができないからだ。目の前に何があるのかわからない状態で「目の前にあるのはミカンです」と言われたらそれを嘘だと判定できない。
嘘だと気が付かずにそれを本当だと思ってしまうこと。それが騙されることである。
言葉の意味を理解しつつ、現実を把握しなければ嘘は見破れない。しかし、言葉の意味だけを理解してしまうと騙されかける。だから嘘は厄介だ。
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