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どんな人かは、会ってから分かればいいじゃない

レジャーシートに座りながら、ナオさんは、わたし子供がほしいと言った。それまで僕はメタセコのことばかり考えていたから、意外なことだった。

ぼくは、深く考えずにいいよ、と答えたのだけれども、それはナオさんが、そう思っていてもいいよ、という意味に近かった。実際、子供を持つということが、どういうことか僕の方には全く想像がつかなかったからだ。

これは博士に聞いても仕方がない案件だ。ナオさんと図書館に行って子供の本を隣りに座って読んだ。本を二人で読んでいると小学生の頃に戻ったみたいで、ワクワクした。子育ては大変そうだ。けれども、どんな子が生まれるかまではさっぱり分からなかった。

これはどうだろう。図書館の前の原っぱで僕は提案した。僕たちのお父さんとお母さんに、どうやって僕たちを育てたのかを聴くんだ。そうしたら子供を育てるということが少しはわかるかもしれないじゃないか。

ナオさんは、分からなそうに膨らませていた顔をふっとゆるめて、それはいいねと賛成してくれた。

スケジュールによるとナオさんは、来週は忙しくて両親には会えないという。僕は、両親と話すのは久しぶりで、ちゃんと話せるかどうか不安だった。

けれども電話をすると、電話口の母は、今までにないほど神妙になって、僕とナオさんが家に向かう日にちなどを聞いていた。

「どんな人なの?」

母はそう聞いたけど、僕はナオさんをそんなふうに見たことがない。

「どんなひとかなんて、お母さんが、会ってから分かればいいんじゃない」


庭のメタセコたちに水をあげながら、僕達はインタビュー項目を考えていた。どんな子供だったか聞きたい。育てていて大変だったこと、どうして子供を持とうとしたのか。

育ててて楽しかったことも聞きたいな。ナオさん、ジョウロでキンに水をあげながら言った。

僕は、モクと遊ぶユウタを見て、ここでこんな話をしたときは、彼がこんなにも元気に成長して笑ったり泣いたり飛び跳ねたりすることなんて全く想像しなかったことを思った。


木も、子供も育てるというよりかは、全くコントロールできずにただ育つ。育てるものは土のように忍耐強く、ただ低く、育っていく芽を受け止めるだけだ。

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たくみん
最後までお読みくださりありがとうございます。書くことについて書くこと、とても楽しいので毎日続けていきたいと思います!