カタツムリの歩み
・気を長く持つこと。
・負の感情を溜め込まないこと。
・感謝の気持ちを忘れないこと。
ワールドカップが始まった。
「もう4年が経ったのか!」と驚いた。「人生の夏休み」の間の時間の感覚というのは、ひどく鈍っているし、薬の影響もあるのだろう、記憶が非常にぼやけてもいる。
4年前の今頃は初診から3ヶ月目で、「重度のうつ病」と診断されたあとも大学の入試システムを構築し、タウン紙の副編集長を務めていた。タウン紙の副編集長を引き受けたのは、モノを書くことを仕事に持たなければ自分は小説を書こうという気がなくなってしまうのではないか、という焦りがあったからだった。4ヶ月の休養を医師から勧められていたが、それを断って仕事を続けていたのは、「無職」になることが怖かったからである。
焦り、怒り、恐怖・・・・・・。それらにぼくは覆われていた。それを和らげようと当時の彼女はぼくとの時間を大切にし、コミュニケーションをよくとってくれていたし、自然の多いところに旅行に連れ出してくれたりもしていた。ありがたかったが、それで症状が緩和されることはなかった。沖縄と出会う1年ほど前の出来事である。
冒頭に挙げた3点は、いま幸せに生活をしているぼくの「生きる知恵」のようなものである。努めてそれを意識しているわけではなく、気がついていたらそうなっていたというものである。
ワールドカップが一つ巡る間に、ぼくはそのことを本当にゆっくりと、時間をかけて学んできた。あの当時彼女がどんなに努めて教えてくれてもぼくにはわからなかった。時間をかけて、本当に少しずつ、ぼくは学んでいくしかなかった。4年前のぼくと彼女に、冒頭の3つの言葉をかけることができたならよかったが、しかし、多分いわれてもぴんと来なかっただろう。一つの種が芽を吹かせるにはそれなりに時間がかかる。
好きなガンジーの言葉に、
「真の革命というものはカタツムリのスピードで進んでいく」
というものがある。4年後のいま、知らぬうちにこのように変わることのできた自分が嬉しくもある。