金曜 #25
書くべきか、書かざるべきか。それが問題だ。
ということで、本日は映画「ルックバック」を見た感想について書き記しておきたいと思う。この作品は、絵が上手い小学四年生の藤野と京本の物語である。
この映画のレビューに関しては、至る所で目にすることができると思うのでそちらを参考にされたし。
私個人の印象に残ったシーンは、藤野が京本と初めて顔を合わせたシーンである。彼女らの会話を見て、伊坂幸太郎のモダンタイムスという作品に登場する漫画家のセリフを思い出した。
物を作る人には創作欲のほかに潜在的な自己顕示欲が存在する。この二つは止めることができないし、切り離すことができない。それは、藤野が漫画を描くことをやめたシーンと京本に認められて漫画を描くことを再開したシーン、漫画を描くことをやめた世界でも最終的に漫画を描いていたシーンからも感じ取ることができて。たった一人のファンがいた藤野はそれだけで十分に二つの欲求が満たされていたのだと思う。もちろん子供の持つ純粋な好きという気持ちが原動力だったのは間違いない。
しかし彼女は、自分が作品を見せたかった相手を失い、姿の見えない読者を手に入れることになった。
私が言いたいのはつまり藤野への肯定である。物を創り出す人間はどこまで行っても結局創作を止めることができないのだ。それがたとえどのような結果に至ったとしても。だからこそ、私は最終的に漫画を描き続ける藤野を私は肯定したい。たとえ届けたい相手がいなかったとしても、その創作という行為は呪いであり生き様なのだから。