金曜 #5

信念にこの週報のテーマとして本やアニメの批評をするといってからはや一か月近くが経とうとしているわけだが、それがかなう日が来ると思っていた人はどれだけいただろうか?
少なくとも私は思っていなかった。しかし、ちょっとした気分転換のために本屋に立ち寄ったところ森見登美彦氏の二年ぶりの新刊を目にし、それを拝読したため、今回はその話をしようと思う。
タイトルは
「シャーロックホームズの凱旋」
である。
舞台はヴィクトリア朝京都、ホームズのスランプとそれに巻き込まれるワトソンの冒険譚である。この本のキャッチコピーは「天から与えられた才能はどこに消えた?」である。
かっこいいキャッチコピーではあるのだが、森見登美彦氏の小説を読んだことがある人ならば、また主人公が屁理屈を言い出したのだろうと思われると思う。私も思った。
しかし、今回のシャーロックホームズの凱旋は太陽の塔や四畳半神話大系、恋文の技術などのいい意味でふざけた小説とはことなり、夜行や熱帯のようなミステリアス寄りの小説であった。
この本は五つの章立てで構成されている。それぞれジェイムズモリアーティの彷徨、アイリーンアドラーの挑戦、レイチェルマスグレーヴの失踪、メアリモースタンの決意、シャーロックホームズの凱旋である。
物語が進むにつれて深い小説の世界に迷い込む感覚は森見登美彦氏の小説の代名詞ともいえるかもしれない。シャーロキアンの皆さんのみならず、シャーロックホームズ未読の方も楽しめる小説ではあると思うが、メタフィクションに不慣れな方にはあまりお勧めできないというのが私の感想である。
おわり

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