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音楽について
現在の文学と美術の多くが、品下る穢れ多きものになってしまったのは実に悲しい。
これはアメリカの戦後統治政策…教育瓦解の企みによる所が大きいように感じている。
「他人を先にして自分を後にせよ」とは、人の道の根本の道義で、明治の精神の核とも言えるべきものかと思うが、自己主張ばかりを強調する今の教育は、自我ばかりを育み、他者を理解することよりも自己を相手に理解させることに、重点が置かれている。
実に動物的である。
人の人たる所以を捨て去って、一体どこに向かうのか…あまりに悲しくて、直視出来ない。
しかし日本の音楽には、真善美の本質が込められているものが、多くあると思う。
これらは今も沢山生み出されていて、バンドの層も一二昔前より明らかに厚い。
これは嬉しい反面、不思議な気もするし、意外な感じもする。
現代音楽は西洋発祥のものなので、西洋的な雑味が必ず入っているはずなのに、JポップやJロックが却って日本的情緒を分かりやすく表現する媒体となっているのは、それを創り出したミュージシャン自身も、気づいていないかもしれない。
現代短歌などよりよほど日本的だし、日本のこころを感じる。もののあはれが端的に表現されている曲は、枚挙に遑がない。
これは、胡蘭成と岡潔が繰り返し語っている、「日本民族は悟り識が開けている」という状態ではあるまいか。
日本の音楽は、今の時代を肯定的に感じれない者にとって、この時代を生き抜くためのよすがとなると思う。