【翻訳】Slavic Saturday:ストリガ
著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Striga (EP6)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-striga-ep6/
導入
昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。
スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが友好的な存在ではありません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つがストリガです。
ストリガまたはストシュガは、スラヴ神話では、たいていは女性の悪魔で、二列の歯と恐ろしい爪を持ちます。ストリガは2つの歯を持つだけでなく、2つの心臓に2つの魂を持っています。
この女悪魔は夜の間はフクロウに変身し、不幸な人を追い詰めるといわれています。いくつかの特徴が吸血鬼に似ていますが、吸血鬼とは異なります。
訳注:ストシュガ(Strzyga)がポーランド語の女性形単数です。男性形だとストシュグ(Strzyg)になります。
語源
ポーランドのスラヴ言語学者 アレクサンデル・ブリクネル(Aleksander Brückner)によれば、その語源が「Strix」であり、フクロウを意味します。
訳注:「Strix」は古代ギリシャ語の「στρίξ」(ラテン文字:stríx)から来ており、この意味は「大声で話すもの」だそうです。(Wikitionary)
ストリガについて信じられていること
前述したように、2つの心臓、2つの魂、2つの歯を持って生まれた人は、ストリガだと信じられていました。夢遊病の人や脇毛のない人もストリガとされていました。また、歯が生えた状態で生まれた子供もストリガであるとするものもあります。
疫病のときには、病人を生き埋めにすることがよくあり、墓から逃げ出せた者は、たいてい弱く、病を冒されており、手足を失っていてるため、同様にストリガと見なされました。
不幸にもストリガと見なされた場合、村やその他の人間の居住地からは追い出されました。ストリガは若くして死ぬことが多いと言われていますが、伝承によると、魂の片方だけが死後の世界に行き、もう片方は生き返って生きている人間を恐怖に陥れると言われています。
戻ってきた魂は夜の森を行き交う人々をフクロウの姿で恐怖させ、運悪くストリガに捕まった者は血を吸われ、身も心も食べ尽くされてしまいます。
ストリガの獲物は人間だけではありません。動物の血も、少しの間、ストリガを満足させることができます。
ストリガから身を守る方法
最も一般的な予防的手段は、ストリガの首を切ってから、頭とは別の場所に土の下に埋めるというものである。こうすればストリガは蘇らないとされた。
他にも:
首に枷を嵌めて、うつ伏せで埋める
死体を燃やす
様々な体の部位を棺に釘止めする
掘り起こしたあとに口に火打ち石を入れる
教会の鐘を鳴らす(ストリガはタールに変わる)
左手でストリガの顔を叩く
村の外に埋めなおし、巨大な岩で押さえつける
ケシの実を十字架の形にして家の隅々に撒く
墓に小さな物を入れて、ストリガに数えさせる
訳注:埋葬法に関する記述は吸血鬼と共通しています。またカトリックの悪魔祓いの影響が見られます。ポーランドはスラヴ圏では珍しいカトリック教国であることに留意してください。(参考:世界史の窓、外務省HP)
結語
これは「Slavic Saturday」の6番目の記事です。ファンのみなさん、このほかにも多くの生き物たちについて語る予定です。これまでの記事はこちらで読めます。来週の土曜日に皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:Twitter、Twitch、YouTube