幸福はお金が9割:その3 「お金の稼ぎ方の勉強法」
お金を稼ぐには、まず「お金の稼ぎ方」を勉強する必要がある。どうやって勉強するかといえば、一つには自分が気に入った商品や企業がどうやって稼いでいるか、というのを調べるのがいい。
例えばぼくは、任天堂のファンだった。最初は単にゲームやそれを作った人のファンだったが、そのうち任天堂という企業そのものも好きになった。そんなふうに、何かを好きになるとその先にはたいていそれを提供している企業がある。だから、それを好きになるといいのだ。
そうした企業ファンになることは、お金の稼ぎ方を勉強するにはとてもいい。なぜかというと、企業ファンになるとその企業のことがもっと知りたくなるから、必然的に情報を収集するようになる。そして情報を収集していると、やがてそれらが結びついて、「経営戦略」というものが立体的に見えてくるのだ。
そこで見えてくる「経営戦略」というものは、きわめて価値が高い。なぜかというと、多くの人はそうしたものが分からないため、情報を独占できるからだ。
たとえばぼくは、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下『ゼルダの伝説』)』というゲームが好きで、その発売を心待ちにしていた。しかしながら、それがあるとき、開発が遅れて発売が延期になるというアナウンスがあった。
開発が遅れることは、普通はネガティヴにとらえられる。しかしながら、任天堂の場合、これまで開発を遅らせることが何度かあったが、そのときはたいていゲームの面白さが劇的に向上して、歴史的なヒットになった。そういう事例を、これまで何度となくくり返してきた。
有名なのが『MOTHER2』と『ポケモン』で、どちらも任天堂のプロデューサーである宮本茂氏がかかわっていた。どちらも開発が大幅に遅れたが、発売後は歴史的なヒット作となった。
そして『ゼルダの伝説』も宮本茂氏のプロデュース作品だった。だから、ぼくにとって開発の遅れは、むしろポジティブ要素に見えたのである。しかし、一般の人たちはそうした立体的な情報を持たないため、単に「開発が遅れた」という平面的な、あるいは点だけの情報で、任天堂という企業や『ゼルダの伝説』というゲームをネガティヴに評価した。実際そういう人がとても多かったから、この時期に任天堂の株価は大きく下がった。
そうした動きを見て、ぼくは「任天堂は買いだ」と株を購入した。すると、その後発売された『ゼルダの伝説』が歴史的なヒットを記録して、株価は大いに回復し、ぼくは大きな利益を得ることができたのだ。
それもこれも、ぼくが任天堂の企業ファンで、その情報を立体的に持っていたからできたことだ。ぼくが持っている情報は、どれもマスコミに公開されているありふれたものばかりで、誰でもネットで検索すれば簡単に手に入れられる。
しかしほとんどの人はそれを平面または点でとらえるから、意味を読み違えるのである。そして彼らがなぜ平面や点でとらえるかといえば、彼らが任天堂ファンではないからだ。特に好きでもない企業だから、そこまでしつこく調べないのである。
そうした意味で、企業ファンになるということは本当に大きな利益につながる。企業ファンになるだけで、ガラクタのような情報でも立体に組み上げることによって、大きな価値を生むことができるのである。
さて、そんなふうに企業ファンになるとそれだけでお金を儲けることもできるが、それとは別に任天堂の企業戦略——もっというと「任天堂のお金の儲け方」みたいなものも知れ、さらに深く「お金を儲ける」ということについての知識を得ることができる。
任天堂が、なぜ世界のゲームメーカーの中でトップの存在でいられるか? 理由はいくつもあるが、そのうちの一つに「マーケティング手法が独特」というのがある。
では、その独特のマーケティング手法とはどういったものか?
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