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「市民」に外国人を加える自治基本条例―外国人参政権につながる危険(「日本の息吹」令和5年6月号より)

日本会議地方議員連盟   副幹事長
光永邦保 (当時)熊本市議会議員
日本会議地方議員連盟  事務局次長
中村一夫     大和市議会議員

熊本市の「自治基本条例の改正」問題は、全国に大きな波紋を呼んだ。神奈川県大和市では、すでに平成17年から同条例が施行されているが、同様の問題を抱えているという。

熊本市の「自治基本条例改正」の問題点とは

― 昨年12月20日、熊本市が「自治基本条例の一部改正(素案)」に関するパブリックコメントを求める通達を発表しました。この改正内容の中に、「市民」の定義として「外国の国籍を有する者を含む」という文言が付与されていましたが、これを問題視した多くの方がコメントを寄せたり、自身の動画チャンネルで訴えたりしていました。今回は、熊本市議の光永邦保先生と大和市議の中村一夫先生に、自治基本条例が抱える問題点について、お話しいただきます。

光永 熊本市の自治基本条例というのは、平成16年に市民から条例を制定してほしいという提案がありまして一旦継続審議で棚上げになり、平成19年に審議未了で廃案になっています。そののちに検討委員会がまた立ち上げられて、2年半にわたる検討をした後、平成21年3月に制定されたものです。

 今回問題になっているのは、その改正案の中の市民の定義ですね。市の説明としては、これまでの自治基本条例の中に外国人も含まれていたけれども、それが明記されていなかったので、今回はそれを書き加えたい、ということなんですね。そこに対して、ツイッターやYouTubeの動画チャンネルで 抗議の声があがりました。

 パブリックコメントの方はどうだったかというと、約2400件のコメントが寄せられました。そのうち1000件弱は匿名でしたので対象外となり、実際には1476件について熊本市では対応することになりました。

 私自身はこの自治基本条例の問題点は次のように考えています。

 一つ目が、「市民」の定義についてです。この条例では「市民」とは、①選挙権を有する者。もちろん日本国民ですね。それから②住民。住民票を持っている人、ということになりますが、今は外国人でも在留カードを持っていて、3ヵ月以上住んでいれば住民票を取れるようになりましたから、すでにここに外国人も入っていると読み取れるわけです。そして③熊本市へ通勤通学する人。要するに熊本市に住んでいなくても、市内で仕事をしていれば「市民」とする、ということです。

― 住んでいなくても市民なのですね。

光永 それから住民投票の問題です。住民投票の項目について、請求できるのは選挙権を有する者、それに応じて発議できるのは市長や市議会議員、ということは明記されていますが、その投票の形態についてはどこにも書かれていません。当然「市民」ということになるでしょうから、外国人も含まれて来ると考えられるわけです。

― 条例のこうした実態について、市民は知っていたのでしょうか?

光永 私自身、今回のパブリックコメント募集の案内が出されるまで認識していませんでした。おそらく多くの市民も、ほとんど知らなかったのではないでしょうか。

熊本市は、「自治基本条例の一部改正(素案)」についてパブリックコメントを募集(令和4年12月~5年1月)。その際、熊本市は、「現行の自治基本条例においても『市民』には熊本市に居住する外国人住民も当然に含まれています」それを「分かりやすく明示するよう改正します」と、改正する理由を述べ意見を募集した。(写真は熊本市のパンフ)

大和市の自治基本条例

中村 神奈川県大和市の自治基本条例は、かなり前に作られたものですが、やはり「市民」の定義と「常設型の住民投票」の規定に問題があります。おそらく大和市の自治基本条例が「大和市モデル」として全国で参考にされていると思うんですね。

 「市民」についても大和市で通勤通学する人、活動する人とされていますが、外国人とは書いていません。ところが条例の逐条解説のところで「外国人の住民も含む」とされているんですね。

 ただこの大和市の自治基本条例、施行されてからずいぶん経つのですが、現状、ほとんど何の活用もされていません。この自治基本条例を、大和市の最高法規と定めているにも関わらず、大和市で何かの条例が出る際に「市民については個別の条例で定義する」として、そこで「市民とは大和市で通勤通学する人、活動する人」と、基本条例と同じことをわざわざ書いているんですね。自治基本条例は何ら活用されていません。もちろん住民投票もされたことはありませんから、この自治基本条例はほとんど意味がなくなっています。

― 自治基本条例そのものの存在意義が問われていますね。

「市民」とは、いったい誰なのか

中村 実は私は、この自治基本条例が作られるときのメンバーだったんですね。当時の市長が、市民に呼び掛けて自治基本条例を作る会というのを立ち上げました。私は議員になる前でしたから、この素案作りに携わりました。そこでもやはり問題になっていたのが「市民」ということだったんですね。何度も「市民の定義を広げすぎなのは問題だ。住民にすべきだ」と訴えたんですがね、最終的に大和市に通勤通学する人、活動する人が「市民」であり、自治基本条例は市民が主語だ、ということになりました。

 そこでどういう問題が起こったかというと、行政の重要な仕事の一つに市民サービスがあります。ではその市民って具体的に誰なのか、といったときに、市民の定義を広げすぎたために、サービスの対象が確定しなくなってしまいました。それから対象となる市民は何人いるのか、と聞いても、判らないわけです。住民であれば、住民票で数えられますが。

 あとは大和市の住民と市外から来て大和市で活動している人とでは、必ずしも利害が一致しないことがあります。そういう時に大和市としては住民の利害を優先するのか、それとも市外から来ている人のことを考慮するのかなど、突き詰めていけば細かい問題点がたくさんあります。もちろん外国人参政権につながるような動きには反対ですが、イデオロギー抜きにしても、市民の対象が曖昧なために起こりうる問題は多いのです。

光永 今回の熊本市のパブリックコメントでは、約9割が外国人の明記に反対でした。当初、今年の4月1日の施行を目指すとしていましたが、この結果を受けて6月以降に持ち越されることとなりました。予断は許しませんが、地方選後のこの期間を使って、改正案の見直しに力を尽くして参りたく思います。

(令和5年2月9日インタビュー)

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