見出し画像

葉隠の里から⑨ 戦歿者を追悼し神社を支える自治会(町内会)の役割を再認識しよう! 彌吉博幸/コラムニスト(「日本の息吹」令和6年1月号掲載)

彌吉 博幸(やよし ひろゆき) コラムニスト (佐賀市在住)
地元FMラジオなどで情報発信しています。葉隠の里から世の中のあれこれについて語りたいと思います。


公共性の高い組織「自治会」は地域のさまざまな役割を担っている。(イラスト/熊谷美加)

◆田舎には田舎の掟がある

 最近、いろんな人から小欄についての感想やご意見を頂きます。少し前のことですが、宮崎県のある会員の方からは、「ここは面白いことが書いてあるコーナーだと思っていたのに、この間のはちょっと難しかったですねえ。ははははは」と、笑いながら言われました。なので今回は、ちょっと身近なお話、自治会(町内会)について書かせて頂こうと思います。

 昨年より自分は、地元の自治会(町内会)の役員になりました。先日、日本会議の会合で、「今度の日曜は自治会の重要な行事があるので、日本会議の会合はその次の週にしたいのですけど」と言うと、若い会員の方の冷たい視線を感じました。「何で、そんなものに行くの?」という事なのでしょう。

 自分は地元の学校を卒業後に上京、二十数年を東京で過ごしましたが、両親も高齢となったので十年ほど前に仕事を辞めて郷里の佐賀へ帰って来ました。佐賀は田舎ですから近所付き合いや近所の評判はとても大事です。NHKの受信料もちゃんと払っています。東京ではNHKの集金人が来ると、「偏向報道をやめるまで払わないよ!」と言って悉く追い払っていましたが、母から「近所に知れたら恥よ! 恥ずかしいことはやめなさい!」 と言われたので払うようにしました。また同時に、東京ではあまり参加しなかった自治会活動にも参加するようになったのでした。

◆大規模自然災害から住民を守る自治会

 自治会は、地域の親睦や自治などのために設 けられている民間団体です。「自治会」「町内会」「町会」等と地域によって名称は異なります。きわめて公共性の高い組織なのですが、任意団体であることが多く、加入率は平成22年の「国民生活選好度調査」によれば73%です。

 自治会の起源には諸説がありますが、最低でも江戸時代の「五人組」制度までは遡れるようです。現在の制度は、大東亜戦争直前の昭和15年(1940)9月11日の内務省訓令第一七号「部落会町内会等整備要領」で正式に定められました。かつて日本の統治下にあった韓国やインドネシア等には今も類似の組織が存在しています。

 自治会の担う役割は多岐にわたります。「交通安全運動」、「青少年の健全育成」、「高齢者などへの福祉活動」、「防犯」、「ごみステ ーションの設置や管理」、「河川清掃」等々。夜道を明るく照らす防犯灯の設置と維持管理も自治会の仕事です。親睦のために「運動会」、「文化祭」、「夏祭り」等も開催し、「回覧板」で必要な情報も伝えます。防災の上でも自治会は重要で、平成7年(1995)の阪神・淡路大震災では、救助された人の実に八割が家族や地域の人々の活躍によるものだったそうです。「自主防災組織」も自治会単位で結成が進んでいます。

◆戦歿者を追悼し地域のお宮を支える

 自治会の役割はこれだけではありません。 地域の戦歿者を追悼し、地元の神社や寺を支える活動も行っています。自分の住む地域では、毎年5月に忠魂碑のある小学校で、地元の戦歿者を追悼する式典が自治会主催で開催されていて、遺族や地域の住民が参列します。神主さんとお坊さんが祭祀(さいし)をされますが、予算もきちんと自治会で組まれています。この外に護国神社への奉納金も予算化されています。

 自治会は地元の神社も支えています。自治会の組織には、生産組合(地元農家の組合)、「老人会」、「消防団」、「子供クラブ」と同様に、地域の産土(うぶすな)の神社の氏子組織の役員である「宮総代」が組み込まれています。自治会の会員は全員氏子と見做され、毎年の自治会の予算には神社への奉納金も計上されます。自治会員個々の信仰の自由はもちろん尊重されなければなりませんが、それとは別に、地域で歴史的に大事にしてきた神社は自治会で支えることになっているのです。

 自分の地域には、産土神(うぶすながみ)を祀る神社とは別に小さな神社がありますが、そこの秋祭りも自治会で主催されます。生産組合の人を中心に注連縄(しめなわ)づくりが行われ、老人会の代表が神社の由来を説明し、子供クラブでは子供神輿を用意します。かかった経費は玉串料を含めてすべて自治会の予算から支払われます。

◆共産党も創価学会も反対しない

 これまで共産党や社民党(旧社会党)は、「政教の完全分離」の運動を盛んに展開してきました。皇室の祭祀を「私的」なものとして制限し、靖國神社と国家との関係を断絶させるのがその目的です。彼らは、市営バスから神社のお守りを外させ、公立学校の生徒が神社へ合格祈願に行くことをやめさせ、公共施設をつくる際に地鎮祭を行った自治体を訴えて裁判をしてきました。自治会の会員には、これらの運動を担った共産党や社民党の人もいると思いますが、今のところ彼らからの批判は全く出ていません。

 自分のいる自治会の副会長は創価学会の人です。創価学会では神社への初詣も禁止です。しかしこの副会長は、「お祭り当日は参加しませんけど、準備はしますよ」と言って神社の掃除などを手伝ってくれます。戦歿者を追悼し、地域の神社を守る大切さを、地域の人々に気づかせる自治会の役割は本当に素晴らしいと思います。

 もうすぐお正月、公民館の神棚の榊(さかき)は、副会長さんがちゃんと新しいものに交換してくれる予定です。


いいなと思ったら応援しよう!