旧姓の通称使用法案で解決できること ―子の「姓」の悩みを如何に解決するか(「日本の息吹」令和4年4月号より)
日本会議地方議員連盟 東海女性局長
谷川 孝栄 三重県議会議員
日本会議地方議員連盟 東北女性局長代理
村岡 貴子 仙台市議会議員
「親子別姓」でぶつかる壁
― 本コーナーでは、これまでに何度か選択的夫婦別姓制度についての問題点を取り上げて参りました。今回は、親子の姓についての悩みを抱えながら活動されている女性議員の先生方からお話を伺います。三重県議会議員の谷川先生は、今回二度目のご登場です。
谷川 私は今年で県議会議員12年目です。私の祖父も県議会議員をしていましたので、できれば祖父と同じ姓(旧姓)が良かったのですが、最初の選挙の時には前夫と結婚していましたので当時の「大久保」姓で出馬しました。6年前に離婚し、旧姓の「谷川」に戻したのですが、政治家にとって名字が変わるというのは大きなリスクです。前回の選挙は無投票でしたが、来年の選挙はどうなるかと不安が残ります。
それからもう一つ、私がぶつかった壁が、息子の姓のことです。私には一人息子がいます。親権は母親である私にあるのですが、学校でのことなども考えて前夫の姓のままにしました。もちろん姓が違っても親子であることに違いはありません。しかし学校や大学受験の手続き、家を借りたりする手続きなどの際には、親子であることを証明する書類が必要です。手続きの度に、姓が違っても親子であることを証明する書類を用意して、提出するというのは、かなり労力の要る事でした。
村岡 私の場合は、離婚したあとも前夫の姓のままです。当時娘が小学二年生だったのですが、娘の中で「名字が変わりたくない」という気持ちがあったのと、私自身、 母子家庭と見られたくない、という気持ちがあったためです。やはり名字が変ると、学校でも「○○ちゃんのところ、離婚したの?」などと言われてしまいます。そういうのを避けたかったので、実はママ友にも、離婚は内緒にしていました。
選挙の際には、私の旧姓で出馬しました。一方で、所属している消防団では、旧姓の通称使用が認められてない、というのは、不便な部分でした。
仕事など社会面では旧姓、生活面では前夫の姓でしたので、時折周囲からは「偽名なの?」とか「偽装離婚じゃないのか」など、心無い言葉を掛けられることもありました。
何より辛かったのは娘から「お母さんと私は名字が違うの?」と聞かれたときです。「一緒だよ」と伝えると安心した表情を見せましたが、母親と姓が違うのではという不安な気持ちを抱かせてしまったことに心苦しさを覚えました。親子の姓が違う、というのは、少なからず子供の心に淋しさや不安な気持ちを持たせることを実感した瞬間でした。
「子供に通称使用」が認められれば
― 選択的夫婦別姓を導入すると、そこに必ず親の姓と子供の姓が違う、という事態が生じます。
村岡 子供の精神的な部分に与える影響は大きいと思います。学校で通称として前夫の名字を使うことが出来るのであれば、娘の戸籍名も私の旧姓にしたいと思い、学校に問い合わせたのですが、そういうことはできないと。それでも何とかしてあげたいと思っていたところ、高市早苗先生、山谷えり子先生、片山さつき先生のお話を伺う機会があり、そこでまさに子供の通称使用権限についての提案がなされたんですね。両親が離婚した後であっても、戸籍抄本で確認が取れれば、名字を変えることなく学校やスポーツチームで活動することができるようにすべきではないかと。
それを聞いて、これなら私と娘が抱える姓の問題は解決できるじゃないか!と嬉しく思いました。
谷川 私もこの提案を聞いて、もっと早くこういう法案が出来ていれば、もっと楽だったのにと思いました。
離婚後の親子の姓の問題は、多くのケースで母親と子供にのしかかってきます。私の周りにも、離婚後の姓や親子の姓の問題で悩みを抱えている女性が何人もいます。突然名字が変ることで、それまで培ってきた人間関係、信頼関係に少なからず影響します。それから、うちの息子は、両親が離婚したことを友人に話していなかったようですが、そういう子供もたくさんいます。
女性たちの旧姓の通称使用だけでなく、子供にも旧姓の通称使用権限が認められれば、そういう方々がすっきりすごせる、と私は感じています。
通称使用の拡充の推進を
― 選択的夫婦別姓を訴える人たちの中には、結婚や離婚によって姓が変わることで、不利益を被る、と本当に悩んでいる人もいます。
村岡 旧姓の通称使用の拡充、そしてそれが子供にも広がっていくことで、ほとんどの問題が解決できるということが、まだあまり周知されていません。私自身の経験を語りながら、選択的夫婦別姓制度を導入しなくても解決する方法があるということを周知していきたいと思っています。
実際、別姓導入に賛成だったある地方議員の方が、旧姓の通称使用の拡充で解決できるという話を知って、別姓反対を訴えるようになったという話も聞いています。様々な不便さを何とか解決したいけれども別姓という手段しか知らない、という方が多いと思うので、通称使用の拡充という方法の周知は大変意味があるものだと思っています。
谷川 日本の家族制度というのは大変素晴らしいものだと思っています。それを海外と比べて劣っているとか遅れているなどと批判するのは、日本の家族の良さを深く知らないで誤解しているからだと感じています。選択的夫婦別姓制度を導入してしまえば、それは家族を壊すスタートになるわけですから、私は「家」という素晴らしい制度を守るためにも勉強会を開催して周知していったり、県議会として仲間の県議たちにもご理解をいただき、別姓反対の意見書を提出したりしていきたいと考えています。
(令和4年2月21日インタビュー)