[地方議会から]選択的夫婦別姓に反対する理由 多くの人に正しい理解を(「日本の息吹」令和3年11月号より)
日本会議地方議員連盟
事務局長
新井 豪 埼玉県議
女性局局長代理
遠藤ゆりこ 小金井市議
「夫婦別姓」反対の理由
― この度、「家族の絆を守り、旧姓の通称使用の拡充を求める女性議員の会」から夫婦別姓反対を訴えるチラシが発行されました。
遠藤 (令和3年)6月23日に開かれた最高裁大法廷において夫婦同姓は合憲である、と判断されました。しかしこれで安堵するのではなくて、一般の方々や国会議員の先生方にきちんとした理解を広めるために、こうしたチラシを作成致しました。
夫婦別姓を導入すれば、①ファミリーネームが消滅してしまうということ、②子供にとって好ましくない影響があるということ、③姓の選び直しで大混乱するということ、この3つについて訴えたチラシです。ただ単に「夫婦別姓に反対」というだけでは何が問題なのか分かりづらかったのですが、こうしたチラシを作成して、問題の焦点を明確にしたことで、非常によく解った、というお声をいただいています。
新井 実は私もその辺り、懸念しているところがありまして。一言で「夫婦別姓反対派」「賛成派」もしくは「慎重派」と言っても、それは決して一枚岩ではない、ということを常々感じているんですね。
― 具体的には?
新井 「賛成派」の中には、姓を自由化してしまおう、と考えている人もいれば、本当に困っている人を助けたい、と思っている人もいます。「慎重派」の中にも、日本の伝統的な家族の在り方と照らし合わせると別姓はそぐわない、と考えている人もいれば、時期尚早と捉えている人もいる。にもかかわらず、捉え方によっては「慎重派」がそのままごっそり「賛成派」と見られてしまうこともあるんです。
ですので私は、自分の立場をより明らかにするために「夫婦同姓で不利益を蒙ることで本当に困っている人を助ける一方で、ファミリーネームが奪われ、子供の利益に反する事態を招く恐れのある制度を導入することには反対である」と表明するようにしています。
遠藤 そういう意味でも、私たちがなぜ夫婦別姓に反対するのか、その理由をわかりやすく解説しているこのチラシは非常に有用だと思っています。
― 実際、福島県二本松市では、6月議会の中で選択的夫婦別姓について国会審議を求める意見書を提出することを求める請願が出されましたが、否決されました。市議の先生たちが反対した理由は、先ほど遠藤先生もおっしゃったこの三点だったようです。
「別姓」問題への深い理解を
新井 埼玉県議会ではこの6月議会で選択的夫婦別姓の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書が採択されました。この件については、事前に反対派、賛成派双方から意見を聞きました。反対派は日本政策研究センターの小坂実氏からお話をいただきました。中でも「夫婦別姓は親子別姓である」とのお話を聞き、これは問題だ、と感じた議員が多かったようです。
一方賛成派としては、数組の当事者の話を伺いました。ほとんどは旧姓の通称使用で解決する話だと思いましたが、一組だけ本当に困っていらっしゃると感じる方がいらっしゃり、きちんと救済できる措置を講じなければならないと感じました。
今回の埼玉での意見書採択については、「埼玉も別姓賛成になったか」と見られる方もいらっしゃるかと思います。しかし私はファミリーネームは必ず守らなければならないと思っていますし、本当に困っている方を助けたいとも思っています。そういう意味で、特例措置としての救済方法なども含めた議論を進めていってほしい、という気持ちがあります。
遠藤 小金井市ではこれまでに3度、夫婦別姓推進派の意見書が通っています。今回、6月定例会で自民党と公明党の連名で「旧姓の通称使用の更なる拡充を求める意見書」を提出し、賛成12、反対11というギリギリのところで可決されました。当初、「家族の絆を守り」という文言を表題に入れて提出しました。他会派と文言調整をする際、「その文言は取った方が良い」という意見があり、今回は、「家族の絆を守り」の文言を外すことにしました。結果、立憲民主党や無所属の方々も賛成し、可決することができました。
― 立憲民主党も賛成したのですね。
遠藤 当時は都議選の届け出の頃で、都の選挙管理委員会では、戸籍名でなければ立候補の届け出を受け付けない、ということになっていました。武蔵野市と小金井市の候補者がこれによって通称での届け出が出来なかった経緯があります。この件を受けて、都の選挙管理委員会がすぐに対応し、通称でも届け出が出来る、と変更したのですが、立憲民主党の方々もこの件が念頭にあったようです。今後は、通称使用の法的根拠を求めていくことも必要だと感じています。
新井 地元の方、特に女性の方と話していると、旧姓の通称使用ということが夫婦別姓のアンチテーゼのように扱われていることを問題視している方が多いんですね。夫婦別姓のこととは別に、この旧姓の通称使用ということについてはもっと普及させてほしい、という声もありましたし、私としても法的根拠を得ることは大事だと思っています。
一般の方も、地方議員も国会議員でさえも、この夫婦別姓についてはまだまだ理解が進んでいるとは言い難い。何となく問題だ、と捉えている人は多いのですが、そういう人たちに、本当に困っている人たちの存在を知って頂く一方で、安易な姓の自由化は「望む人だけが別姓にすればいい」という問題ではなく、「姓の選び直し」問題、戸籍制度への影響、「個人墓」の増加による新たな墓地問題等々、身近な問題に結びつけながら様々な社会的影響を考えて、きちんと理解を広げていくことが必要ですね。
(令和3年9月15日インタビュー)