[地方議会から]夫婦別姓で家族に何が起こるのか(「日本の息吹」令和3年8月号より)
日本会議地方議員連盟女性局
局 長
吉田 あい 杉並区議会議員
局長代理
谷川 孝栄 三重県議会議員
局長代理
藤山裕紀子 京都府議会議員
安心できない最高裁の「合憲判決」
― 6月23日、最高裁大法廷で夫婦同姓を定めた民法と戸籍法の規定は「合憲」とする判決が出されました。まずは、これまでの経緯をお話しいただけますか?
吉田 最高裁大法廷で夫婦別姓についての判決が出されるのは、平成27年に続き、2度目になります。
平成30年3月、事実婚の夫婦3組が別姓での婚姻届けが不受理となったことを受け、憲法14条及び24条に違反するとして、裁判所に申し立てを行ったものです。いずれも「合憲」と判断されたのですが、3組とも特別抗告したため、最高裁大法廷で判断されることとなりました。今回の大法廷判決は「民法750条と婚姻届の手続きを定めた戸籍法74条は合憲であるのは明らか」と指摘しており、戸籍に基づいた「家族」という概念、そしてそこから生まれる家族としての一体感が再確認されました。
藤山 今回は「合憲」の判断が出ましたが、これで安心してはいけないと思います。これまでに夫婦別姓推進派は、全国で意見書の採択に取り組んでいましたし、今後も様々なキャンペーンを行うことが予想されます。私たちも女性局を中心に夫婦別姓に反対する意見書採択に取り組む他、各地での勉強会を積極的に推進していきたいと思っているところです。
― 「選択的夫婦別姓」という選択は、一般的にも広まっているのでしょうか。
吉田 何となく「どちらの姓にするか選択できるようになっても良いんじゃない?」と考える人はいるようです。しかし、実際に自分が別姓を選択するか、というと必ずしもそのような結果ではありません。平成29年に内閣府が行った「家族の法制に関する世論調査」では、「名字(姓)が変ったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」と答えた人が41・9%、「相手と一体となったような喜びを感じると思う」と答えた人が31%と半数を超えています。
一方で、別姓制度が「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人は62・6%に上りました。
「夫婦別姓」は「親子別姓」 その弊害とは
谷川 実は私は姓の選択で後悔した経験があるんです。私には息子が一人いるのですが、数年前に離婚し、高校一年生だった息子の親権は母親である私が持つことになりました。当然、私は旧姓である谷川に戻したのですが、息子の姓についてはそのままにしておいたんです。
― 親権があっても親子で姓が異なるということがあるのですね。
谷川 息子の姓をどうするかということは親族で話し合いました。元夫の側に後継ぎがいないから、などの理由で息子の姓はそのままにしたのですが、実はその後いくつかの弊害が出てきています。
色々な手続きをする際に、息子と保護者である私の姓が違うので、必要に応じて、親子であることを証明する書類を添付しなければなりません。最近でも、息子が大学に進学し、独り暮らしをするための家を借りようとしたところ、やはり姓は違うが親子であることを証明するものが必要であり、その書類を用意しました。同姓の親子に比べ、ひと手間もふた手間もかかります。
― 手続きの際の手間が増えること以外に、弊害を感じられることはありますか?
谷川 愛する息子であることには変わりはありませんが、やはり家族の絆とか精神的な部分には気を遣うことがあります。例えば、親戚の集まりに息子も一緒に参加しますが、その際、息子一人だけが親戚にはいない別の姓なわけですね。そういうときに「あなたも谷川だったらよかったね」なんて言われることもあります。
この先、息子が私と同じお墓に入ることができるのか、ということなども考えると、こうしたこともしっかり考えた上で息子の姓を選択すべきだったと後悔することがあります。
ファミリーネームが消滅し個人の名称に変質する
吉田 夫婦別姓推進派は、「選択制だから何も問題はない」と主張しますが、実際にはファミリーネームをなくす、つまり「家・家族」という概念を失う、という重大な問題を孕んでいます。それに谷川先生のお話しのように、親子間で別の姓となることで弊害が生まれてくるのも事実です。
別姓の夫婦の間に子供が生まれたとき、その子をどちらの姓にするのか、ということは親族を巻き込んで話し合いをしなければならない問題です。婚約中や妊娠中に子供の姓を巡って争いの種が生まれる可能性があり、後々にまで禍根を残しかねません。その場合、最も不利益を被るのは子供です。
谷川 推進派の中には夫婦別姓を認めることが少子化対策になるなどと言う人もいますが、私はそうは思いません。家族の絆が弱くなり、益々少子化に拍車がかかると思えてなりません。
吉田 何も選択的夫婦別姓制度を導入しなくても、ほとんどのことは婚前氏の通称使用で解決するわけです。ですから、家族の絆を守るためにも、私たちはこの制度には反対していかなければならないと思っています。
藤山 「家族」というのは社会の基本となる集団です。我が国は、家を基盤にしながら共同体を作り上げて来た素晴らしい国家です。
私は我が国の「家」のシステムは世界に誇るものだと考えています。個を尊重することはもちろん大切ですが、家族よりも個人、国全体の利益よりも個人の利益を優先するような風潮が横行し、また個を尊重した外国よりも家を大切にする我が国が劣っているような感覚を持つことに、私は危機感を覚えています。家を大事にすることは、決して時代遅れでも古い風潮でもありません。
女性局を中心に、家族の在り方や夫婦別姓の問題点の理解を広めるための勉強会を開催していきたいと考えています。
(令和3年6月15日インタビュー)