見出し画像

「選択的夫婦別姓」問題 ―地方議会で広がる「旧姓の通称使用拡充を求める」意見書採択(「日本の息吹」令和4年8月号より)

日本会議地方議員連盟    副会長
守屋もりや 隆司たかし   神戸市会議員
日本会議地方議員連盟     幹事
石和いさわ  だい  長野県議会議員

「選択的夫婦別姓制度」について、各地の地方議会では「旧姓の通称使用の拡充を求める」意見書が提出されている。それと共に、国民の中にも「別姓制度の問題点」への認識が広がりつつある。

長野県と神戸市の「通称使用拡充」の意見書採択

― 昨年から今年にかけて、旧姓の通称使用の拡充を求める意見書が各地で提出されています。中でも、長野県と神戸市は印象的だと思いましたので、今回、お二人の先生からお話を伺います。

石和いさわ 長野県議会では、「選択的夫婦別姓制度について慎重に議論し、旧姓の通称使用の法制化を求める意見書」を、令和3年11月定例会で自民党県議団から提出。賛成31、反対25で12月3日に可決されました。実は立憲民主系の会派から、選択的夫婦別姓の議論の推進を求める意見書が提出されたのですが、こちらは否決されています。「議論の推進」とは言っていますが、夫婦別姓を肯定するようなニュアンスだったんですね。これが否決されましたので、長野県議会は夫婦別姓について慎重にすべきという姿勢を示しました。

― 自民党内では意見は一致していたのでしょうか?

石和 自民党の国会議員の間でも意見が割れているようですが、県議会でもやはり必ずしも一致はしていませんでした。しかし、夫婦別姓制度を導入すれば、それは親子別姓にも直結するなど家族の在り方に重大な変更を引き起こすこと、また結婚後の姓によって生じる不利益は、旧姓の通称使用によって解消されるため、この法制化を求めたい旨を伝える中で納得いただき、今回の意見書提出となりました。公明党は皆、反対でした。

守屋 神戸市会では、「旧姓の通称使用の拡大やその周知など第5次男女共同参画基本計画に沿った政策推進を求める意見書」を議員提案として提出し、本年3月28日に本会議で可決されました。神戸市会では本会議の前に総務財政委員会で、まず陳情の審査が行われます。自民党、日本維新の会、その他の会派は採択。しかし公明党は党本部の見解として選択的夫婦別姓の導入に賛成なので陳情については審査打切を主張されました。他は共産党と一部会派が不採択。僅差ではありましたがこちらの陳情は採択されました。

 私たちがこういう形で意見書提出を求める陳情採択に向けて動いたので、共産党からも選択的夫婦別姓の導入に向けて一日も早い民法改正を求める意見書を出すべきだと陳情がありました。こちらは自民党、維新の会等は不採択で否決し、公明党は審査打切り。結局僅差でこちらは不採択という形になりました。

 委員会で採択された陳情が本会議で提出される、という流れです。賛成が自民党と日本維新の会、立憲民主党とその他会派で42、反対が共産党と一部の会派14でした。公明党は、事前の委員会で審査打切りとしましたので、採決に際しては議場を退場し12名が棄権しました。

立憲民主党も意見書に賛成

― 立憲民主党は賛成したのですね。

守屋 陳情を出すにあたり、日本会議の女性の会の方々から、文書についていろいろとアドバイスをいただきました。当初はかなり堅い文章だったのですが、もっと柔らかい文体の方が他会派にも受け入れられやすい、ということで。内容としましても、結婚により改姓したことで生じる不都合を解消し、旧姓を使用しやすい環境づくりをやっていきましょう、というものです。特に反対するようなものではありません。柔らかい言い回しとこうした主張が、立憲民主党などにもご賛同いただけた理由ではないかと考えています。

 公明党にも、何度も賛同してほしいというお願いをしたのですが、やはり党中央が夫婦別姓の導入を推進しているので、賛同いただくことはできませんでした。しかし不採択、棄権という選択をした背景には、共産党と一緒に不採択を主張するのは辛い、という考えがあったのではないかと思います。

内閣府の調査結果に見る世論の変化

― 内閣府は3月25日、4年ぶりに実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果を公表しました。前回の結果と比較すると、選択的夫婦別姓導入に賛成する人は、42.5%から28.9%に激減し、逆に同姓を維持した上で通称使用を法制化することに賛成した人は24.4%から42.2%へと大幅に増加しています。長野県や神戸市を始め全国各地で、結婚による改姓が及ぼす不利益は、旧姓の通称使用で解消できる、ということを周知し、議会での意見書採択に取り組んでいただいたことが、数になって表れているのだと思いますが、先生方は、この結果をどのようにご覧になりますか?

石和 このようなデータが出て来たことは好ましいですね。昨年、我々が意見書を出したときに、旧姓使用の法制化を明確にする必要があると強調しました。そういうことがちゃんと伝わっていったからこそ、世論も変わってきたのだと思います。夫婦別姓を望む人たちは、姓が変わることによる不便さに直面している方々だと思いますので、旧姓使用が法制化されれば、不利益を被ることはぐっと少なくなる、ということをもっと周知することが必要だろうと思います。

守屋 内閣府の調査は当然の結果でしょう。選択的夫婦別姓を導入すると、それは夫婦だけの問題ではなく、子供にかかわる影響が大きいにも関わらず、ほとんど報じられないし、議論されない。夫婦同姓によって生じるマイナスイメ ージばかりが先行しており、それを別姓推進派が逆手にとって宣伝したわけです。

 しかしこの4年間、議会での意見書採択や日本会議の運動などがあり、地方議員も国民も選択的夫婦別制度についての問題点などが分かってきたというのが一つの大きな要因ではないかと思っています。

石和 実際に県庁では旧姓の使用を認めているので、多くの女性職員は、結婚後も旧姓のままでいらっしゃる。同姓は不便だ、という声を聞くことはほとんどありません。

守屋 士業も旧姓が認められていますし、女性議員は旧姓の方がほとんどだと聞いています。すでに旧姓の通称使用は定着している部分もありますので、法制化によって更なる不便さの解消を求めています。

(令和4年6月16日インタビュー)  

いいなと思ったら応援しよう!