憲法に緊急事態条項を! ―3千名署名で地方議員の声を国会へ(「日本の息吹」令和6年1月号より)
日本会議神奈川県緊急事態条項
実現委員会・事務局次長
小林武史 神奈川県議会議員
日本会議東京都緊急事態条項
実現委員会・幹事
松村智成 台東区議会議員
3・11の経験を踏まえ「想定外を想定しろ」
― 今後30年間で、70%の確率で首都直下地震が起きると言われている中で、今回は、この地域の先生にお話しをお伺いします。東日本大震災の経験も踏まえて地元ではどのような動きがありますか。
松村 3月11日の東日本大震災の時、私は地元・浅草小学校のPTA会長でしたが、観光客が数万人もいる状態での地震発生。当時、台東区内の情報整理ができておらず、避難所はどこか、どう誘導をするのかなど、全く整っておりませんでした。
その経験も有り、数年前から年一回、台東区と浅草観光連盟さんが連携し町全体で帰宅困難者対策訓練を行っており、そこに自衛隊車両にも来て頂き、街の人たちや観光客が、自衛隊の方々に直接触れ合っています。この体験はいざという時にとても大切な事だと思っています。
台東区には浅草などにたくさんの外国人観光客が来ていますが、誘導には言葉の問題もあります。東日本大震災の時は、日本人の行儀の良さに助けられた部分がたくさんありましたが、首都直下型地震など大規模な災害が起こった時、あの時の冷静さが保てるかわかりません。また、大勢の外国人 観光客が、日本人と同じような行動がとれるのか、これも未知数です。個々人の努力や民間の力だけで対応しきれない緊急事態は必ず発生すると私は思っています。議員というのは、その先のリスク、一歩先をあらかじめ考えておくもので、緊急事態条項の整備は急ぐ必要があると、私は感じています。
小林 私は、佐藤正久参議院議員の下で6年2カ月秘書を務めましたが、その時に東日本大震災の話をよく聞きました。「想定外を想定しろ」、これが佐藤の口癖でした。佐藤本人は、福島と東京を何度も往復し、目を覆いたくなるような現場をたくさん見てきた体験から、「想定外を想定しなきゃいけない」と言っていました。最悪のことを想定し考え、政治の責任として物事を進める。よく備えあれば憂いなしと言いますけど、佐藤の言葉で言うと「憂いがあって備えが無いのは政治の怠慢だし、政治の責任放棄だ」と。
憲法に緊急事態条項が無いことで起きる問題とは
小林 その意味で、必要なことを先送りにしていた結果がコロナの3年間だと思います。特に初期段階で、実際に事が起きた時、日本国憲法には、そもそも国家が緊急事態に陥るということ自体を想定しなかった。平和で善良な国民と、善良な外国に囲まれて、その中で皆が平和に生きていくという社会 が前提で、何か事が起きる想定をしていない。だから「ロックダウン」もできないし、飲食店に対する休業もあくまで要請レベル、お願いベースでした。「備えていない」様々な問題が露呈したわけです。
例えばこれが台湾有事の場合、沖縄県は巻き込まれ、沖縄の人たちが九州に避難する。長期戦になれば、日本全国で分担して受け入れる話になるかもしれません。その時、例えば神奈川県、東京都が避難民を受け入れる準備はできているのか。そこにもし、スパイが紛れ込んだらどうなるのか。
コロナの時は後手に回ったわけですが、危機はまた、必ず来るという前提で準備しなければならないと思います。
― 関東大震災から100年を迎えました。当時、国会は機能停止しましたが、様々な緊急事態条項があり、これで対処しました。しかし、現憲法にはありません。
松村 憲法改正された時に緊急事態条項がなければ、有事が発生した際、自治体や国民の努力のみで対応できない事態が発生し国から何も対応が出来ないでいた場合、民衆はその気持ちを怒りとして噴出し、超法規的措置をとる事が考えられます。緊急時のルールが決まっていないこと、これは大問題だと思います。
小林 我々は、お隣の中国のような人治国家ではなく、法律によって積み上げてきたものを大事にする法治国家です。法治国家が超法規的措置で切り抜ければ良いと考えるのは、責任放棄に等しい。しっかり今のうちから想定して、決めておかなければいけない。
新しい法律を作ること、憲法を改正することは、国会議員の仕事ですが、我々地方議員は、現場の声を拾って、その背中を押していく重要な立場にいると思います。
「緊急事態条項を求める」3000名の地方議員署名を
― 地方議員連盟では、来年(令和6年)の大会及び総会に向けて数を持って国会へ訴えていこうと、緊急事態条項の署名3000名を集めることを目標に掲げています。
松村 私は、早坂義弘東京都議のご紹介で、東京都の緊急事態条項実現委員会の幹事となりました。東京都では、都議会議員の役員の皆さんの働きかけにより、60自治体に幹事が整いつつあると聞いています。
国民の命を守る、財産を守るということは、党派を超えて大同団結しなければならないことだと思います。これは私一人ではできないし、区議会議員だけでなく都議会議員とも勉強会などで意識を共有し署名を進めるなど、足並みを揃えて前に進めたいと思います。
これは台東区民からすると、国がやるようなことを何で区議が、と思われるかもしれない。しかし私はこの行動が台東区民だけではなく、全国民の生活、命を守るものだと信じ、日本を守っていこうという同志を一人でも多く集めるため、日々努力していきます。
小林 国は法律を作りますが、その後現場では、地方議員が動く話になります。コロナの時、ダイヤモンド・プリンセス号から全ては始まりましたが、神奈川県、横浜市がその最前線に立ちました。国で起きた影響は最前線の自治体にまで及ぶのです。
だからこそ、現場の最前線に立つ我々地方議員が、これだけ多く憲法改正を望んでいるんだと数で示すことは国を動かす大きな力になるのです。
各自治体の幹事の皆様には、「緊急事態条項の国会発議を求める」地方議員署名を推進するため、勉強会などにも取り組んで頂き、署名を広げて頂ければと思います。私も県議会の立場として、県内各地を回りながら、皆さんと力を合わせて仲間を増やしていきたいと思います。
最後に私の先輩で、日本会議の神奈川県議会の窓口になってくれていた川本学さんが、残念ながら10月14日にご逝去されました。同じ川崎市内選出の県議会議員として私は、川本さんが残された仕事を自分がしっかり受け継いでいきたいという想いでいます。
(令和5年11月25日インタビュー)