「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(上)
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*****令和6年4月30日(火)第171号*****
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「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(上)
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◇─[はじめに]───────────
弊紙発行人の知り合いのAさんは、介護保険制度が開始される以前から介護業務に携わる「超ベテラン」です。当然のように介護福祉士の資格も持っていますが、ケアマネジャーの資格は所有していません。
しかも「ケアマネだけには、絶対になりたくない」と断言しています。「知り合いで何人もケアマネがいるし、何度も一緒に仕事もしたが、ケアマネほど『報われない』職種はないから」と、その理由を説明してくれました。
それ以上は語ってもらえないため詳細は不明です。弊紙も、ビジネス版の4月16日号で「ケアマネ『業務範囲外』への対応・直近1年で『1回以上』67.5%、内『7回以上』が27%」を配信しました。
Aさんの「ケアマネを目指さない理由」とは一致しないかも知れませんが、この「ケアマネの業務範囲外への対応」は、厚労省も課題として認識しており現在、有識者会議で対策を検討しています。
一方、政府は4月19日に「孤独・孤立対策推進本部」という会議を開催しました=写真・首相官邸HPより。これは全ての年代が対象ですが、中でも高齢者の「孤独・孤立」支援の一環として、この「推進本部」では、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(以下「ガイドライン」)を策定し、公表しました。
お恥ずかしながら弊紙発行人は、ここに出てくる「高齢者等終身サポート事業者」(以下「サポート事業者」)の存在を知らず、この名称を聞いた時に、ケアマネが「業務範囲外への対応」が難しい時などに、介護ユーザーが利用するサービスだと思っていました。
しかし「ガイドライン」に目を通してみると、実は年々契約件数も増えており、それに伴いトラブルも増加している等の問題点を指摘しています。これを踏まえ、政府も「ガイドライン」を公表して「サポート事業者」に対して「指針」を示しました。
残念ながら、この「ガイドライン」は法的な拘束力までは規定されていないため、仮に悪質な「サポート事業者」に出会ってしまっても、これにより取り締まることはできません。しかし政府は、今後も「サポート事業者の利用は、さらに増える」と見込んでいます。
そこで弊紙では今回、本紙読者の皆さんが「サポート事業者」」の利用を考えた際の業者選択の「参考」となるよう、この「ガイドライン」の要旨をご紹介することにいたしました。
今回の記事が、何らかの形で読者の皆さんの「手助け」になれば幸いです。
日本介護新聞発行人
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※「はじめに」で記したように、今回は「ガイドライン」の要旨をご紹介しますが、政府が4月19日に公表した内容は「案」で、現在パブリックコメントで意見募っています。締め切りは5月18日で、その後に「確定版」となります。
※このため、今回ご紹介する内容が「確定版」で修正される可能性がありますので、この点をご承知おき頂ければと思います。なお、今回の内容は以下のように3回に分けて配信しております。
※「ガイドライン」には「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3つの内容が書かれていますが今回は、記事の分量等を勘案して「死後事務サービス」の詳細は割愛しましたので、ご了承下さい。3回連載の内容は、次の通りです。
■■第1回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(上・4月30日号)
▼1.「ガイドライン」の目的
▼2.「ガイドライン」の対象となる内容
■■第2回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(中・5月1日配信予定)
▼3.サービス提供に当たっての基本的な考え方
▼4.契約締結に当たって留意すべき事項
▼5.取り消される可能性のある勧誘方法について
▼6.「身元保証等サービス」を提供する際の留意事項
■■第3回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(下・5月2日配信予定)
▼7.「日常生活支援サービス」を提供する際の留意事項
▼8.利用者から金銭等を預かる際の対応について
▼9.契約の変更・解約に当たって留意すべき事項
▼10.「判断能力が低下」した場合の対応について
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1.「ガイドライン」の目的
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▽高齢化の進展や核家族化等に伴い、高齢者の単独世帯が増加してきている。特に高齢期には、医療機関への入退院や施設への入退所などの、重大なライフイベントに直面することも多い。
▽その際に「身寄りがない」「家族がいても身近に頼れる人がいない」状況にある高齢者等の、意思決定等を支援する仕組みが求められている。
▽こうした中、近年、高齢者等に対して「身元保証」や「死後事務」「日常生活支援」等のサービスを行う事業(以下「サポート事業」)が増加しており今後、その需要のさらなる増加が見込まれる。
▽また、「サポート事業」の「消費者保護の推進に関する調査」(令和5年8月総務省行政評価局)をはじめとして「サポート事業者」に関する「課題提起」が行われている。
▼「サポート事業」については、将来にわたる「身元保証等サービス」であることや「死後事務サービス」を含むものであり、契約が長期にわたること、サービス提供に先行して一部の費用が前払いされるなどのため、契約内容の適正な履行を確認しにくい。
▼また「判断能力の低下」が懸念される高齢者を主な対象としているため、契約者の意思能力の有無等をめぐって事後的に争いが生じる可能性があること等の課題があることから、一般的な契約に比べ利用者保護の必要性が高い。
▼そのため、民法や消費者契約法等の民事法の規律等も踏まえ、適正に事業が営まれることが重要といえる。こうした観点から「サポート事業者」の適正な事業運営を確保して「サポート事業」の健全な発展を推進することが重要である。
▼このため、利用者が安心して「サポート事業」を利用できるよう「ガイドライン」を策定することとしたものである。「ガイドライン」は「サポート事業者」の参考となることはもとより、利用者による事業者判断の目安ともなり得るものである。
▽なお、提供されるサービスの目的は、高齢者等の意思決定を支援し、死後まで含めてサポートするためのものであることから「ガイドライン」では、これまでの「身元保証等高齢者サポート事業」という呼称を「高齢者等終身サポート事業」と呼称することとした。
▽提供されるサービス内容等については、事業者と利用者の契約に基づき決定されるものであるが「ガイドライン」は、現時点において「事業者が取り組むことが重要」と考えられる事項等を取りまとめたものである。
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2.「ガイドライン」の対象となる内容
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▽「サポート事業」については以下のとおり、提供しているサービス内容が多岐にわたるものであるが、主に「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3つに分類できる。
▽これらのサービスのうち「日常生活支援サービス」においては、家事代行サービス等、事業者によっては必ずしも高齢者等を主な利用者とするものではなく、また、このサービスのみを単独に提供している事業所が一定数あるものと考えられる。
▽このことも踏まえ「ガイドライン」では、以下の3つの要件をみたす事業者を主な対象とする。
1)「身元保証等サービス」および「死後事務サービス」を提供するものであること。
2)本人(契約者)と締結した契約に基づき、サービス提供するものであること。
3)事業として継続的に提供するものであること。
▽ただし「ガイドライン」は、各種業法による規制が及ばない「サポート事業者」について、一定の「指針」を示すものであることから、弁護士・司法書士・行政書士等の業法に基づく規制等が、すでに存在している業種を対象外とする。
▽ただし、高齢者等に対する支援については、必ずしも「身元保証等サービス」および「死後事務サービス」を提供する事業者のみが担うものではない。「死後事務サービス」のみを提供する事業者についても、この「ガイドライン」を参照することが望ましい。
■■「身元保証等サービス」の内容
▼医療施設への入院の際の連帯保証
▼介護施設等への入所の際の連帯保証
▼入院・入所、退院・退所時の手続の代行
▼死亡または退去時の身柄の引取り
▼医療に係る意思決定の支援への関与
▼緊急連絡先の指定の受託および緊急時の対応
■■「死後事務サービス」の内容
▽死亡の確認、関係者への連絡
▽死亡診断書(死体検案書)の請求受領、火葬許可の市区町村への申請、火葬許可証および埋葬許可証の受領、死亡届申請代行
▽葬儀に関する事務
▽火葬手続(火葬の申込み、火葬許可証の提示)に関する手続代行
▽収蔵(納骨堂)、埋蔵(墓処)、永代供養に関する手続代行
▽費用精算、病室等の整理、家財道具や遺品等の整理
▽行政機関での手続関係(後期高齢者医療制度資格喪失届、国民健康保険資格喪失届等)に関する代行
▽ライフラインの停止(公共料金=電気・ガス・水道=の解約、インターネット・Wi-Fi 等の解約、固定電話、携帯電話、NHK等の解約等)に関する手続代行
▽残置物等の処理に関する手続代行(遺品目録の作成、相続人等への遺品・遺産の引渡し)
▽墓地の管理や墓地の撤去に関する手続代行
■■「日常生活支援サービス」の「生活支援」関係の内容
▼通院の送迎・付添い
▼買物への同行や購入物の配達、生活に必要な物品の購入
▼日用品や家具の処分
▼病院への入院や介護施設等への入所の際の移動(引っ越し)および家具類の移動・処分
▼介護保険等のサービス受給手続の代行
■■「日常生活支援サービス」の「財産管理」関係の内容
▼公共料金等の定期的な支出を要する費用の支払に関する手続代行
▼生活費等の管理、送金
▼不動産、動産等の財産の保存、管理、売却等に関する手続代行
▼預貯金の取引に関する事項
▼金融商品の解約・換価・売却等の取引に関する手続代行
▼印鑑、印鑑登録カード等の証書・重要書類の保管
▼税金の申告・納税・還付請求・還付金の受領に関する手続代行
※【以下、明日配信予定の=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(中)=へ続く】
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