インフルエンザの感染者の急増等で、「年末年始の感染症対策」はどうすれば良いのか?
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*****令和6年12月30日(月)第180号*****
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インフルエンザの感染者の急増等で、「年末年始の感染症対策」はどうすれば良いのか?
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◇─[はじめに]───────────
ちょうど1ヶ月前の11月末頃から、インフルエンザの感染者数が全国的に「急増」しています。この約1ヶ月間、厚労省が毎週金曜に発表する全国の感染者数は、定点把握で「2.36」→「4.86」→「9.03」→「19.06」→「42.66」と推移しています。
これはザックリと言えば、調査の対象となっている全国の医療機関で、インフルの感染者として診断した患者の数が、直近では1つの医療機関当たり1週間に「約43人」が報告されたことになります。
特にこの1ヶ月間は、毎週報告される感染者数が「前週の倍」で増え続けています。また1つの医療機関で、直近の1週間は「毎日・約6人」のインフル感染者が確認されたと捉えることもできます。
全国の都道府県等では一般的に、インフルエンザの流行に「留意を促す」ため定点把握で「1」を「流行の目安」とし、さらに「10」を超えると流行の「注意報」、「30」を超えると「警報」を発令します。「42.66」は「警報レベル=30」をはるかに超えています。
テレビのニュースをみると、地方ではすでに「県内のインフル感染者数が『過去最多』を更新しそうだ」との報道もあります。では、私たちはこの「急激な感染拡大状況」に、どのように対処すれば良いのか……?
感染症の専門家の発言を探したところ、日本医師会が先週水曜(12月25日)に開いた定例記者会見で、釜萢敏(かまやち・さとし)副会長が「年末年始の感染症対策等について」を説明しました=写真・日本医師会公式YouTubeチャンネルより。
釜萢副会長は、新型コロナの流行が国民の大きな関心事であった時に、日本医師会を代表してテレビ番組等で、直近の感染状況の分析や解説を述べていました。日本医師会は政府とも強いつながりがあります。
この意味からも、釜萢副会長のコメントは「わが国の医学会を代表する意見」の一つと言えると思います。今回、本紙では読者の皆さんが「年末年始の感染症対策をどうすれば良いのか?」を考える際の参考とすべく、この会見内容を掲載することにいたしました。
弊紙発行人は、この会見を動画で見て「感じるところ」があったのですが、本紙読者の皆さんが「先入観」を抱くことがないよう、まずは今回の記事をご一読いただければと思います。弊紙発行人の「感じるところ」は、最後の「おわりに」で述べたいと思います。
日本介護新聞発行人
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※今回は、日本医師会が先週水曜に開いた定例記者会見で、釜萢敏副会長が「年末年始の感染症対策等について」と題して述べた内容の要旨を掲載いたしました。なお一部の表現は、本紙読者の皆さんが理解しやすいように改めていますので、ご了承下さい。
※また、今回の会見時点(12月25日)では、インフルエンザの感染者数は「19.06」が直近のデータでしたが、その後12月27日に「42.66」と、最新の調査結果が発表されております。この点もご了解の上、記事をお読みいただければ幸いです。
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「急激に感染者の拡大がみられることで、医療現場での対応が困難になってきている…」
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▼年末年始の感染症の流行は、色々な予定を立てている方々にも大きな影響があるし、国民全体の生活にも関わる問題なので、日本医師会としても毎年注意をしている。直近では、インフルエンザの感染者が「急激に多くなっている」状況だ。
▼直近のデータで、12月9日から15日までは、定点当たり「19.06」で、その前週(12月2~8日まで)と、その前々週(11月25日~12月1日まで)と比較すると、前々週の時点では定点当たり「4.86」だった。
▼さらに前週は「9.03」になった。そして今週は「19.06」となった。この定点当たりの報告が「10.00」を超えると「注意報」が出されることになる。全国的に「インフルの流行が、かなり増えてきている」と言える。
▼その中で、急激に感染者の拡大がみられることで「医療現場での対応が困難になってきている」と、私のところにも聞こえてきている。一部の医療現場では患者数の増加に伴い──
▼インフルを迅速に診断する検査キット(抗原検査キット)等の入手にも「支障が出始めている」との声も出ていることから(日本医師会として)厚生労働省と協議をしながら、状況を注視しているところだ。
▼すでに厚労省からは、検査キットを作っている製薬メーカーに対して「安定的な供給を」求める通知も出されている。現状では、検査キットの「在庫が急激にひっ迫」するような状況ではないが、メーカーによっては出荷を調整しているところもある。
▼このため(医療現場等から)ふだん注文しているキットが「注文に応じられない」との場面が、ところどころで出ている。これについては、インフルの単独の検査キット以外に、新型コロナとインフルの同時検査キットもあるので、これを使用するのも一つの手だ。
▼さらに、ふだん使っているキットが不足する場合には、医療機関側も「キットのメーカーを変える」など、工夫してご対応いただきたい。ただ全体としては、現状では「検査キットが不足して、現場が混乱している状況ではない」と、私は捉えている。
▼新型コロナウイルス感染症の流行状況については、昨年の同時期と比べると、定点当たりの報告数がまだ少ないものの、徐々に増えてきているところもある。インフルの流行に加え、新型コロナの感染拡大にも留意が必要だ。
▼この冬場での、感染症全般への対策として、まずは「マスクの着用」が重要だ。さらに帰宅後の「手洗い」と「うがい」が必要だ。加えて、家庭内でも「換気」が求められていると思う。
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「風邪症候群が、インフルや新型コロナと同じく『5類感染症』に指定されるが……」
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▼もう一つ、国民の皆さんの大きな関心事として「風邪症候群」(※)について、お話ししたい。この「風邪症候群」が(インフルや新型コロナと同じく)「5類感染症」に指定されることへの「心配」の声が、寄せられている。
▼「風邪症候群」は、くしゃみ・鼻水・咳(せき)・のどの痛みを伴う、上気道の炎症を主とするもので、冬場に幅広く「流行」がみられる。原因はウイルスだが、何種類かのウイルスが「風邪症候群」を引き起こす。
▼今回の「風邪症候群」の「5類」指定は、この報告を強く求めるというより「急性呼吸器感染症」(※)の報告を求める、というのが趣旨だ。結論として、この「急性呼吸器感染症」を「5類」に指定したからと言って──
※【本紙注釈=「風邪症候群」と「急性呼吸器感染症」=「風邪症候群」とは、「急性呼吸器感染症」の総称。具体的には、くしゃみ・鼻汁・咽頭痛・咳などの呼吸器症状とともに、発熱・頭痛・関節痛・全身倦怠感などの症状が出て、嘔吐・下痢などの消化器の症状を伴うもの】
▼国民の皆さんの生活に、何か不都合を生じさせるものではない。この「急性呼吸器感染症」を「5類」に入れた理由は、これが、場合によっては新たなパンデミック(感染爆発)を引き起こすのではないか──
▼その可能性が隠れているのではないか、何とか早く、これを明らかにすることができるのではないかということが「5類」指定の大きな趣旨だ。もともと「急性呼吸器感染症」は上気道・喉・鼻・中耳炎などの感染があること──
▼さらに、下気道の感染、気管支炎や肺炎だが、これらの基本的感染経路は「飛沫感染」(※)だ。やはり「飛沫感染」によるものが「急激な感染拡大」により、パンデミックを引き起こすことが、大きな問題となる。
※【本紙注釈=飛沫(ひまつ)感染=感染者が、咳やくしゃみをした際に飛び散る、病原体を多く含む「しぶき」を、近くにいる人が吸い込んでしまうことで、感染すること】
▼また「空気感染」(※)も(「急性呼吸器感染症」に)一部で関わってくるが、やはりパンデミックが起きることを想定した場合は「飛沫感染」が一番の問題になる。このため、これを早く調べることが重要になる。
※【本紙注釈=空気感染=感染者の咳やくしゃみで飛び散った「しぶき」が乾燥し、病原体が飛沫核として「空気中を漂う」こともある。それを吸い込んでしまうことで、感染すること】
▼今までに、感知できなかったような「未知の感染症」が出てくるかも知れない、ということで(5類に移行させて)「キチンと報告をしてもらおう」ということになった。
▼繰り返しになるが「風邪症候群」を含む、「急性呼吸器感染症」を、新たに感染症法の「5類」に当てはめたとしても、国民の皆さんに負担をおかけするものではないと、これを機にぜひ申し上げておきたい。
◇─[おわりに]───────────
冒頭の「はじめに」で述べた、弊紙発行人の「感じるところ」とは、今回の会見で釜萢副会長の発言内容に「緊迫感をほとんど感じなかった」ことです。全国のインフルの感染者数は毎週「倍増」を続け、直近では「警報レベル=30」を大きく超える「42.66」です。
釜萢副会長が会見した時は、まだ「19.06」でしたが、専門家であれば、厚労省の次週の発表では「警報レベルを超える」ことは十分に予期できたと思います。弊紙発行人は、釜萢副会長がもっと強く、国民に「感染防止対策の徹底」を訴えると想定していました。
もちろん、会見では「留意」を促していますが、もっと具体的に「積極的にワクチンを接種すること」や、年末年始も開いている医療機関があることに触れるものと思っていました。
さらに釜萢副会長は、これらの「感染防止対策等」ではなく、短い会見時間の中で「風邪症候群」について触れています。不勉強ながら、弊紙発行人はこの「風邪症候群」を全く知りませんでした。
もっと正直に言えば、今回の会見で、弊紙発行人は「違和感」をおぼえました。しかし、こちらはあくまで「感染症の素人」で、もちろん釜萢副会長は「プロ」です。そこで、まずは「プロ」の発言に耳を傾けることが重要と考えました。
この「おわりに」に述べた内容を、冒頭の「はじめに」で書いてしまうと、本紙の読者の皆さんに「先入観」を抱かせてしまうことを懸念し、弊紙発行人の「感じるところ」は最後に述べさせていただいた次第です。
いずれにせよ、どのような形であれ、今回の記事が本紙読者の皆さんの「年末年始の感染防止対策」の一助になれば幸いです。皆さんが、感染症に悩まされることなく、新たな年を迎えられることを祈念いたします。
今年も1年間、本紙をご愛読いただきまして誠にありがとうございました。
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