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「マイナ保険証の強引な導入で、現在の『国民皆保険制度』が根本的に狂うことになる」(下)

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*****令和6年11月10日(日)第179号*****

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「マイナ保険証の強引な導入で、現在の『国民皆保険制度』が根本的に狂うことになる」(下)
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※【以下、10月30日に配信した=「マイナ保険証の強引な導入で、現在の『国民皆保険制度』が根本的に狂うことになる」(上)=から続く。なお今回の(下)では、保団連が行ったアンケート調査結果=画像・保団連発表資料より。色付きの下線は弊紙による加工=をもとにした、記者会見での質疑応答の要旨を掲載いたします】

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「原則・マイナ保険証」となることで、様々なトラブルケースへの対応が難しくなる……」
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 ▽記者=(従来の紙の保険証から)「マイナ保険証」に切り替わることで、保育園や幼稚園など、学校で急病が発生した際に親御さんが「マイナ保険証」で対応していた場合は、医療機関ではどのような対応をされるのか?

 ▽親御さんご本人が(子どもが急病になったので「マイナ保険証」を)持っていない可能性がある。(本人確認などの)事実確認はどのようになるのか? あと実は、私自身が医療機関を受診した際に、医療機関から出された処方箋を持って薬局に行ったら──

 ▽私は「マイナ保険証」を持っていないのだが、薬局の方から「マイナ保険証にしてもらわないと、今後は薬が出せない」と言われた。私は「それはおかしい。法律上は(『マイナ保険証』を持っていなくても)そんな対応はしないはずだ」と反論した。

 ▽すると(その薬局の職員は)「ならいいです」と言った。このような事態に至ったのも(厚労省の「マイナ保険証」普及のための)「キャンペーン」がかなり強引であったことが要因ではないかと考えている。

 ▽このような事案に対する(保団連の)ご意見を伺いたい。さらに、このような「キャンペーン」では高齢者の方々への対応が気になる。「マイナ保険証」の(データを読み取る)機械が、ご自身で使えないと──

 ▽医療機関の方に「これ、やって下さい」とお願いすることになる。しかしこのような場合でも「私どものクリニック側からは(機械の操作が)できないので、教えますので自分でやって下さいね」と言って、一人の職員の方が付きっきりで対応したのを見た。

 ▽その後、この「キャンペーン」に参加していた薬局に行ったら、今度は「(機械の操作がわからなければ)言ってくださいよ。(薬局の方で、操作を)やりますから」と言っていた。この薬局の行為は、本来は「法規違反」だ。

 ▽このような時に、何かトラブルが発生してしまった場合、例えば「個人情報が漏洩した」ような時、責任問題はどのようになるのか? 保団連の考えをお聞きしたい。

 ▼保団連・山崎利彦理事=まず、ご質問の1点目。「学校行事」の際は、例えば「修学旅行で、マイナカードを子どもたちに持ち歩かせるのか?」との指摘は、従前から大きな議論の的となった。

 ▼極端に言えば、マイナカードを「コピー」しても、そこからは何の保険情報も読み取れない。このような時に「資格確認書を使えば良い」と指摘する方もいるが、そもそも「マイナ保険証」を持っている人は「資格確認書」はもらえない。

 ▼こうなると「資格確認のお知らせ」のコピーを持って行くのか否かという判断になる。この当たりの対応を学校の先生方が全部理解して、子どもを経由して、修学旅行に行く時に配るプリントに──

 ▼「健康保険証をマイナカードにしている方の場合は、『資格確認のお知らせ』を──」「そうでないお子さんには、資格確認書のコピーを必ず本人に持参させて下さい」と言った内容を、キチンと記載するのか?

 ▼また、小中学生のお子さんにとっても、これを理解できるのか疑問だ。そもそも「マイナ保険証」の現物を子どもに持参させて「紛失してしまった」際はどうするのか? このようなケースを考えても(「マイナ保険証」の利用は)決して良いことではないと思う。

 ▼結論として、色んなトラブルケースに対応することが(「原則・マイナ保険証」になることで)なかなか難しくなると考えている。

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「調剤薬局職員は『マイナ保険証』の利用促進を『お金のためにやる』ことになっている」
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 ▼山崎理事=それからご質問の2点目。薬局での「強要」だが、この点について、当時の河野太郎デジタル大臣は、大手の調剤薬局の職員を「デジタル推進委員」に任命した。本当に「デジタル化を推進したい」と考えている人が任命されるのであれば、何ら問題はないが──

 ▼大手の調剤薬局全体に対して、本来は(厚生労働行政とは)所管外のデジタル庁の河野大臣が任命するというのは、まったくはき違えているし、どこにその「権限」があったのか疑問だ。

 ▼こうなると調剤薬局側は「マイナ保険証の利用実績を上げなくてはならない」ことになる。実は「キャンペーン」期間中に、どれだけ実績を上げたかによって、入ってくる収入が違ってくる等ということが、実際に行われていた。

 ▼これにより「お金が欲しかったら、やる」となってしまう。つまり調剤薬局の職員は(「マイナ保険証」の利用促進を)「お金のためにやる」ことになる。これは「通常の医療のやり方」とは当然、違ったものになってくると思う。

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「職員が『マイナ保険証』の操作を手伝った」ことだけでは、個人情報漏洩はそれほど…」】
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 ▼山崎理事=最後に3点目。「マイナ保険証」から「個人情報の漏洩が、どのように起きるのか?」は、本当のところはあまり情報漏洩はしないと思われる。ただし、最大の問題は「電子処方箋」だ。実は「マイナ保険証」自体は、情報の「識別子」(※)になり得ない。

 【※弊紙注釈=「識別子」=様々な対象から、特定の一つを識別し、個々を特定するのに用いられる名前や符号、数字などのこと

 ▼この「電子処方箋」の場合は(「マイナ保険証」の情報に)加えて「本人の顔」や「暗証番号」が組み合わさって初めて「患者本人だ」と識別される。実は「電子処方箋」は、それ自体が「識別子」の役割を果たしている。

 ▼つまり、この「電子処方箋」を発行した数だけ、世の中に「識別子」がバラまかれることになる。結果的に「職員が『マイナ保険証』の操作を手伝った」ことだけでは、それほど「個人情報が漏れる」ことに対して不安を抱く必要はないと感じている。

 ▼(記者が指摘した)「法令上の問題」は確かにあるが、それによって「実害」がどれだけあるかと言えば、それほど多くない可能性がある。ただし、すでに発行されている「電子処方箋」をみると──

 ▼今後は「医療DX」(※)の推進で、「マイナ保険証」を入口として続々と、色んなことが行われるようになると、怒涛のように「電子処方箋」が発行され「識別子」が世の中にバラまかれていくことになる。

 【※弊紙注釈=「医療DX」=デジタル技術を取り入れることで、医療の質を向上させること

 ▼ただ(現行の紙の処方箋は、医療機関で受け取って調剤薬局等へ行くまでの間に)ウッカリ落としてしまうこともあると思うが、実はココから情報を見ようとすると、それまでの患者さんの医療情報が全て見られることになる。

 ▼つまり(「電子処方箋」の発行が増加することで)そういったリスクが起こり得ると思う。

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「資格確認書発行はあくまで『暫定的』なので、突然『止めます』ということもあり得る」
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 ▽記者=厚労省の発表等から、おそらく「資格確認書」の発行が日本全国で5千万人くらいになるのではないかと推定される。この点を保団連ではどのように受け止めているか?

 ▼山崎理事=政府は「資格確認書はあくまで暫定的な処置だ」と言っている。つまり、あくまで「暫定的」なので、来年の春になったら「やっぱり(発行枚数が多くなる等の理由で)やりません」と言い出す可能性もある。

 ▼つまり、5千万人近い方々の「資格確認書」の発行が「いつ、停止されてもおかしくない」ことになる。これは、日本国内の約半数の方々の「健康保険証が突然、手に入らなくなる」ことが起きる可能性を示唆している。

 ▼そんな恐ろしいことは、現代の「国民皆保険制度」を根本から破壊する制度だと、私たちは考えている。政府は(「マイナ保険証」の推進を)「国民のためになる」と言って推進しているが、それはゴマカシだ。暴挙と言わざるを得ない。

◇─[おわりに]───────────

 今回本紙では、10月17日に開催された全国保険医団体連合会(保団連)の記者会見の要旨を2回に分けて掲載しました。保団連の主張を要約すると「われわれは医療DXに反対している訳ではない。ただし現在の『マイナ保険証』はあまりにもトラブルが多すぎる」

 「その多発するトラブルを解決する唯一の手段は、現行の『紙の保険証』を残すことだ。それに反して、このまま強引に『マイナ保険証』を推進すれば、高齢者などデジタル弱者を切り捨てることになり『国民皆保険制度』が崩壊しかねない」──になります。

 実は保団連では現在、この『マイナ保険証』の強引な推進により、廃業を決めた医師と歯科医師がどれだけいるか、調査しているそうです。その中で「地域住民から、医師としての力量を高く評価されている医師が廃業した」ケースが多々あるそうです。

 この「マイナ保険証」の問題では、弊紙も保団連の指摘通り「デジタル弱者が切り捨てられることなく、スムーズに移行すること」がベストな選択肢だと確信しています。介護業界からもぜひ、この問題について自らの「提言」を発してもらいたいと思います。

 結果的に、それが多くの介護サービス利用者にとっても「最適な介護」を受けることにつながると、弊紙では考えます。

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