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「かかりつけ医」を見直す受診者が増えた等で、「診療所」の倒産・休廃業件数が「過去最多」(前編)
*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
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*****令和7年1月31日(金)第181号*****
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「かかりつけ医」を見直す受診者が増えた等で、「診療所」の倒産・休廃業件数が「過去最多」(前編)
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◇─[はじめに]───────────
いつものように、弊紙発行人の個人的な話題で恐縮ですが、自宅から最も近い「診療所」だった「××クリニック」が約半年前に「廃業」し、建物も全て取り壊して現在、その場所は更地となり「売地」として看板が立てられています。
ご参考までに「診療所」とは、医療法では「医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であって、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」と定められています。
つまり、患者の入院上限が19人以下なら、その医療機関は診療所(=医院・クリニック)となります。同様に、医療法では「診療所は、これに病院、病院分院、産院その他病院に紛らわしい名称を附けてはならない」と規定されています。
このため「診療所」に分類される医療機関=(医院・クリニック)は、いかなる場合でも「病院」という名称を使えません。本紙読者の皆さんにとっては「かかりつけ医」が「診療所」に該当すると思います。
話しを戻しますと、この「××クリニック」は夫婦で営んでいて夫が内科医、妻が眼科医でした。二人に子どもがいないため「いずれは、廃業してしまうのかな……」と予期していましたが、結果的に約半年前に「その通り」になりました。
この「××クリニック」の近隣には他に医療機関がなく、ここはいつも多数の患者で混雑していました。そのためか特に夫の内科医の、患者一人当たりの診察時間は極端に短く、弊紙発行人が最後に訪れた時はわずか「30秒」でした。
これに嫌気がさして、弊紙発行人は「かかりつけ医」を遠方の「△△医院」に変更しましたが、その時から「もしかしたら私が現在、体験しているような事態は、全国でも起きているのではないか?」と想像していました。
この予感は的中したようで、先週水曜(1月22日)に信用調査大手の帝国データバンクが発表した「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」は、弊紙発行人の「想像通り」の結果を報じました。
本紙を愛読して下さっている高齢者や、その家族の皆さんも「今、お世話になっているかかりつけ医で、本当に良いのか?」と疑問を持っていらっしゃるケースも多々あるのではないかと推察いたします。
そのような方々に「では、どうすれば良いのか?」を考える際の参考になるのでは……と考え、今回の本紙では、この帝国データバンクの調査結果を記事化してお届けすることにいたしました。
今回の記事が「最適な医療を、自分で選ぶ」ためのご参考になれば幸いです。
日本介護新聞発行人
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※今回の記事は、信用調査大手の帝国データバンクが今年1月22日に発表した「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」の調査結果を元に構成しています。なお一部の表現は、本紙読者の皆さんが理解しやすいように改めていますので、ご了承下さい。
※本日は「前編」をお届けいたします。明日(2月1日)「後編」を配信する予定です。
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医療機関の倒産は64件、業態別では「診療所」と「歯科医院」が過去最多の件数を更新
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▼昨年(2024年)の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1千万円以上)は64件となり、2009年(52件)を大きく上回って「過去最多」を更新した=グラフ・帝国データバンク発表資料より。
▼業態別では「病院」が6件、「診療所」が31件、「歯科医院」が27件となり、「診療所」「歯科医院」が「過去最多」を更新して、全体を押し上げた。近年の動向は、コロナ禍前の2019年には「過去3番目」となる45件の倒産が発生した。
▼しかし翌2020年には、コロナ禍での「事業者支援」などを背景に27件に減少した。さらに翌2021年から増加に転じ、2022年・2023年と2年連続で40件を超えた。
▼昨年(2024年)の64件の負債総額は282億4,200万円で、前年(2023年=253億7,200万円)から11.3%増加した。結果的に昨年(2024年)は、2000年以降の25年間で「5番目に多い」水準となった。
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「かかりつけ医」を見直す受診者が増えたことで「受診者が戻らない」施設が増加した
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▼64件の倒産主因を分析すると「収入の減少(販売不振)」が41件と、全体の64.1%を占めた。コロナ禍では、感染回避のため通院を控える(コロナ以外の)受診者や、ワクチン接種を機に、施設・設備機器やサービス面を考慮して──
▼「かかりつけ医」を見直す受診者が増えたことで、収入が減少したり「受診者が戻らない」施設が増加したとみられる。また、コロナ関連補助金の削減、資材価格高騰に伴う材料費(医薬品や検査キットなど)や、設備機器費の増大──
▼さらに人材確保・維持のための賃上げや、コロナ関連融資の返済開始などの負担も増し、収入減少と支出増加が同時に進行したことで、資金繰りに窮し事業継続を断念する事業者が増加した。
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倒産の医療機関64件は、都道府県別では東京が14件で最多、倒産は25都道府県で発生
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▼倒産した64件を都道府県別にみると、東京(14件)、福岡(8件)、大阪・神奈川(各5件)、埼玉・千葉・滋賀・兵庫(各3件)と続き、25都道府県で発生した。業態別では「診療所」が東京(8件)、神奈川(4件)、福岡(3件)だった。
▼また、「歯科医院」では東京(6件)、福岡(5件)、大阪(3件)の順となった。
▼負債額別では「1億円未満」が29件(全体の構成比で45.3%)で最も多く、その他は「1億円~5億円未満」(24件、全体の構成比37.5%)、「5億円~10億円未満」(3件、全体の構成比4.7%)、「10億円~30億円未満」(6件、全体の構成比9.4%)──
▼「30億円以上」(2件、全体の構成比3.1%)。業態別では「病院」が52億3千万円(平均負債額8億7,100万円)、「診療所」が166億9,400万円(平均負債額5億3,800万円)、「歯科医院」が63億1,800万円(平均負債額2億3,400万円)となった。
▼この3業態の平均(医療機関の平均)は4億4,100万円となった。
▼負債額最大となったのは医療脱毛クリニックの「アリシアクリニック」を全国に展開していた医療法人美実会(負債72億9,500万円)で、美実会の関係法人で同じく「アリシアクリニック」を展開していた一般社団法人八桜会(負債51億7,500万円)が続いた。
▼債権者数は両法人合わせて約9万1,800名にのぼり、大きな話題となった。また、高橋デンタルオフィス(負債19億円)は、インプラント治療と矯正を専門に手がけていたが、治療が進まないとして患者が前払い治療費の返還を求める訴訟に発展していた。
▼このほか、治療費とは別に(医療機関側から)患者に投資や融資話を持ちかけ、この返還を求める訴訟も起こされていた。
【以下、明日(2月1日)配信予定の「後編」へ続く】
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