釣られやすさは遺伝する!!??
科学論文を釣り情報へ還元する第10回目の投稿です。
今回のテーマ:釣られやすい性質は遺伝するのか?
この論文では、釣られやすい魚の性質(性格)は子孫に遺伝するのか否かを調べています。
日本では特定外来生物という側面もありますが、釣り対象種として大変人気の高いオオクチバスを対象としています。
この論文を結論を一言でまとめると、
釣られやすいサカナとそうでないサカナを、それぞれ3世代まで継代飼育(同じグループで何世代も繁殖させ飼育すること)して、釣られやすいかテストしてみた結果、釣られやすさはめっちゃ遺伝してるで!、という結果になったそうです。
釣られやすいサカナの性質とは?
釣られやすいサカナとはどんな性質をもつのでしょうか?
まず、釣られやすいサカナは代謝率が高いそうです。代謝の高いサカナが他のサカナと同じ速度で成長するためには、より多くの餌を摂取する必要があります。そのため、餌を食べるチャンスを高めなけれなならず、よりたくさんのリスクを冒す必要があります。その結果、釣られやすいのではないか?という考察となっています。
また、以前の記事でも触れていますが、
釣られやすいサカナほど、性格も好奇心旺盛で積極的に餌を探索する大胆な性格を持つと言えます。
そのため、より大型に成長しやすいのですが、反面、釣り餌にもアタックする可能性が高まり多くのリスクを背負うことになるのです。
釣られやすさの遺伝とは?
この試験では、ある湖で1シーズン4回以上釣られたサカナを親として繁殖させた「釣られやすいグループ」と全く釣られなかったサカナを親にもつ「釣られずらいグループ」をそれぞれ子供、孫、そしてひ孫までの代まで調べています。それぞれの世代で同じルアーやワームを使用して釣り試験をしてみたそうです。
その結果、釣られやすさは子の代では1.4倍でしたが、孫の代では1.7倍、ひ孫の代ではなんと2.2倍以上の差に開いてしまったそうです。
世代が移り変わるに従い、どんどんと釣られやすいサカナは釣られやすくなることがわかり、この差は選択的に引き継がれるような性質を持つと考えられます。
このような釣りや漁業と遺伝の関係は、チャネルキャットフィッシュやアトランティックサーモンでも記録されているそうです。
釣られやすいサカナが増えることが意味することは?
さて、釣られやすいサカナの性質が遺伝するとすれば、どんなことが起こるでしょうか?
今回はキャッチ&リリースを主体とするバスが対象ですが、これが主に”お持ち帰り”されるサカナであれば、釣られやすい魚はどんどん減っていくことになります。
そうなると、より識別力の高いサカナ(ルアーを認識してそれを回避可能な個体)や、よりリスクを回避するサカナ(より強大な捕食者がいる中で獲物を追いかけようとしない個体)にとって有利になっていきます。
これは、一般に攻撃性の低いサカナに有利な環境と言えます。しかし、生物的には問題が生じることになります。
例えば、繁殖期の雄は、親としての役割を果たさなくなる可能性です。
バスの雄は営巣中は潜在的な捕食者から子どもを守ろうとするものですが、防衛能力の低下はもちろんのこと、守ろうする意欲そのものも低下する可能性があると筆者は指摘しています。
我々にとっては、釣られやすい魚がいてくれることは大いに結構ですし、
もしその釣り場を管理し、レクリエーションとして発展させなければならない立場であれば、選択的に釣られやすいサカナを開発し、釣り人を呼び込みたいと思うかもしれません。
しかし、生物の遺伝が全て解明されていない状態では個体群にどんな悪影響があるか全く予想できず、また(開発したサカナ以外の)野生のサカナたちへの影響も未知であるため、こういった考え方は、かなり危険であると筆者は指摘しています。
今回は釣られやすさの遺伝についてご紹介しました。
釣られやすいサカナの存在は我々釣り人にとってありがたいことでもあるのですが、安易に釣られやすいサカナを開発したり、増やしたりすることは危険なのでしょうね。
また次回お会いしましょう。
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