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神出鬼没の怪魚、イトウ

科学論文を釣り情報へ還元する第27回目の投稿です。

今回のテーマ:神出鬼没の怪魚、イトウ

今回ご紹介するのはこちらの論文です。
Suzuki, K., Yoshitomi, T., Kawaguchi, Y., Ichimura, M., Edo, K., & Otake, T. (2011). Migration history of Sakhalin taimen Hucho perryi captured in the sea of Okhotsk, northern Japan, using otolith Sr: Ca ratios. Fisheries Science, 77(3), 313-320.

この論文では、イトウが普段の行動の履歴を調べた結果、海〜河口(汽水)〜川を行ったり来たりしながら生活していることがわかった、という内容でした。

「イトウ」なるサカナとは・・・?

イトウは釣り好きにはご存知の方も多いと思いますが、日本国内最大の淡水魚で、大きく分けるとサケマスの仲間になります。

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現在では国際自然保護連合IUCN認定の絶滅危惧が心配される一種となっており、自然繁殖は北海道の一部の水系のみとされています。

とは言え、養殖技術は確立されており、管理釣り場などではお馴染みのサカナになりつつあるという側面もあります。

このイトウは体長が最大2mを超す化け物のようなサカナなのですが、食事も雑食で小魚からカエルやネズミ、鳥までも食事になってしまうほど豪快な一面もあります。

私も以前何度かイトウ釣りに行かせてもらったことがありますが、ほんとにカエルやネズミを模したルアーを使って釣れたもんですから、それはそれは驚きでした。。

また、繁殖は河川の上流域で行われますが、オスはイラストのように尾の方がキレイに真っ赤に染まります。

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海~川、どこでも生活可能な万能魚

今回の研究はイトウの「耳石(じせき)」というものを調べています。

耳石は脊椎動物の平衡感覚に影響する組織の一つで、言葉通り耳付近にありますが、サカナはこれを使って年齢を調べたりすることができます。

(サカナは耳があるわけではないですが、目の上側付近に2つあります:下記参照)


で、さらにこの成分を調べてあげると、ストロンチウムとカルシウムの比率から、海水に居たのか?淡水にいたのか?ある程度検討をつけることができるのです。

今回の研究結果は下記のようなイメージになります。

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このように、コア(中心部)は淡水に居た証拠があり、その周辺では汽水域の反応、一番外側が海水いた反応があったそうです。

つまり、生まれは川の上流域になりますので、生まれた当初に完成されているコアの部分は淡水反応がありますが、その後汽水域や海へ降りたということになります。

ではいつ汽水域や海へ降りたかと言うと、成長が良いサカナから降海した可能性が高く、2~4才までには海へ降り、その生涯の大半を汽水域や河川で過ごした可能性があるそうです。

確かに海へ降りた方が、餌も豊富で成長が期待できるわけですよね。

海や川を完全に行き来できるサカナというのはなかなかすごい進化を遂げているのかなと思います。(こういった海~川を行き来できるのはイトウの仲間でも日本のイトウだけだそうです)

しかし、逆に言うと、こういったサカナを守るには繁殖環境(つまり、河川上流域)だけでなく、行き来をする汽水域や沿岸域までキチンと環境保全を考える必要があるわけですよね。

そう言った意味では、なかなか保護の難しいサカナの一つになるかもしれませんね。

それではまた次回お会いしましょう。

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