GTの行動範囲は意外と狭い!?
科学論文を釣り情報へ還元する第37回目の投稿です。
先日、南の島に移住した友人から、「GTが釣れ放題なう・・・」という死語交じりの自慢連絡もらったので、本日は”南の怪魚GT”についてご紹介しようと思います。
ハワイ諸島で行われた調査から、GT(Giant Trevally)ことロウニンアジの行動範囲についてご紹介したいと思います。
釣り好きの方であれば、GTは一度は釣ってみたい憧れの巨大魚ですよね。
GTはインド太平洋諸島周辺に生息するアジ科のサカナで、体長180cm(80kg以上)に育つ沿岸域のルアーフィッシングではこれ以上にないターゲットです。
ハワイ諸島周辺のサンゴ礁地帯では漁業も盛んなようで、保護区を設定してこのサカナを守ろうとしています。
”ロウニン(浪人)”と呼ばれるにふさわしくGTの成魚は、単独行動していますが、ハワイ諸島では”夏の満月の夜に、古くからある繁殖場所へ遠くから集結する”と言われてたりもします。
これまで、どのような行動範囲を利用しているのかあまり知られていませんでしたので、どのくらいの規模で保護区設定すれば良いかわからなかったわけです。
そこで、この研究では、超音波発信機をGTに装着しその行動を追跡することで、GTの普段の行動範囲を直接特定しようとしました。
5~12か月追跡した結果、サンゴ礁が広く分布するエリアで10~29kmの移動がありましたが、ほとんどのサカナは5km程度の距離を行ったり来たりすることがわかりました。
これまで知られている情報やGTの魚体の迫力を考えると、「かなり大規模な長距離移動をしているのでは?」と思ったら、実はそんなに大きな移動をするわけではなく、サンゴ礁の一帯を縄張りを持つかのように毎日移動していたわけです。
また、今回調査したGTは、日中はある一定の範囲をウロウロしていましたが、夜になると大きく移動していく傾向がありました。
このような1日の習慣のような行動(日周性)はサンゴ礁のサカナたちでもよく見られるようです。
ただし、本来は朝マズメか夕マズメのどちらかで大きく移動するというが正しいのではないかと考えられるそうです。
さて、最初の話に戻りますと、南の島の友人の話はこんなことを言っていました。
”GTのポイントは結構点在していて、GT自体の行動範囲もそんなに広くない”
割と狭い行動範囲やGTの生態は経験からもなんとなく理解されているようで、こうした知識はチャーター船の船長たちはよく熟知しているのでしょうね。
今年は世間がこんな状況ですから、チャーター船のお客さんも少なく割と格安で何度も釣行に出ている友人が大変羨ましいです。
それではまた次回お会いしましょう。