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猫がいる(!)。

毎朝散歩に出かけている海岸に猫がいる。
一匹だけでなく何匹もいて、みなが家族かは知らないが、岩場の陰に寝ぐらをつくって暮らしている。マンションの前以外ならエサを与えることができ、何人かの常連さんが複数の猫をまわりに従えて餌付けしている。

だから猫たちは人をおそれない。舗装された道のど真ん中に寝転んでいることさえある。流れ着いてくる海の幸(虫など)と人からもらう食べ物のおかげで、猫たちはずいぶん豊かに暮らしているように見える。どこで洗っているのか、身なりもきれいだ。

その猫たちに最近、赤ちゃんが興味を示すようになった。もう一年以上通っているのに、数日前になってはじめて「なにかいる」ことに気づいたようだった。

岩場の上で猫が丸くなって寝ていると、赤ちゃんはじっとその様子を見つめる。猫も黙って見つめ返す。そうしたにらめっこがはじまると、しばらく立ち去ることができない。赤ちゃんが怒るからだ。それで散歩の時間がちょっとずつ長くなってきている。

昨日、僕がかがんで、赤ちゃんと猫の視線を同じ高さをしてやると、猫がすたすたと歩み寄ってきて、僕のジーンズのお尻にすりすりした。次に腰の横側にすり寄ってきたので、赤ちゃんはついに猫の背中に触ることができた。

「うふふふふ!うふふふふ!」

あそこまでうれしそうにするとは思わなかった。海風で乾いた猫のざらっとした毛並みに触れた赤ちゃんは狂喜乱舞して笑った。猫は黙って背中をさわらせていた。

エサをくれるわけではないと分かると、猫はまたすたすたとどこかへ歩いていく。赤ちゃんが「うー!」と言ってせがむので僕もそれを追いかける。海とは反対側の林の中にまぎれて見えなくなるまで、それは続いた。

赤ちゃんは、猫に限らず「どうぶつ」への親しみが急に湧いてきていて、犬や鳥などもじっと見ている。遠ざかると怒る。今日、出産当初しか使わなかったスヌーピーのぬいぐるみを渡してみたら、うれしそうにかじっていた。

いつそんなに好きになったのか、きっかけが分からない。絵本の中にはずいぶん前からたくさん登場していたのだけれど。

この世におかあさんとおとうさんと「なにか」がいることに気がついた。それは赤ちゃんにとって天地がひっくり返るほどの変化のはずなのだけれど、当の本人は当たり前みたいな顔をしている。

きみの脳みそにはいったいなにが起きているんだい。
僕はとなりで驚くばかりである。

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澤 祐典
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