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「小説でもどうぞ」落選集① テーマ「癖」

日本から遥か遠く、小さな国がありました。この国では国王と王妃のもと、国民はとても幸せに暮らしていました。問題は一つもないと思われていましたが、実は一つだけありました。国王と王妃には一人娘のお姫様がいましたが、それがなんとも癖の強い性格だったのです。
お姫様が年頃になると、国王と王妃は将来の国王となるような夫を探すことにしました。
「おかあさん、姫はどんな男性が好きなんだろうね?まさかいい年して小説家を目指しているような地に足がついていない男じゃないだろうね?」
「そんなことないわよ、おとうさん。女は馬鹿でも不細工でもお金と地位のある男が好きなのよ。でも直接聞いてみたほうが確実ね。」
二人が姫に尋ねると、姫は言いました。「普通の男なんてダメ!ちょっと癖のある男がいいわ。たとえば、いい年して小説家目指しているような、そういう面白い人!」
これを聞いた国王と王妃は、家来たちに命じました。「姫にふさわしい夫候補を探してこい。世界中から癖のある男を集めるのだ!ただし、あまりにおかしな人間は困るぞ。」
こうして家来たちは世界中に散らばりましたが、一人だけは隣国へ向かいました。そこには、地に足がついていない独身の国王が治める小国があったのです。
「なに?隣国の精鋭が出払っただと?攻めるなら今がチャンスだな!」と隣国の国王はほくそ笑み、100日間の祝賀会を開くことにしました。しかし、攻撃の計画を忘れてしまい、気づけば家来たちは全員眠りこけていました。
一方、姫の国では連れてこられた夫候補のオーディションが行われていました。次々に奇妙な男が現れる中、姫はため息をつきながらつぶやきました。「みんな癖の解釈を間違えてるわ…」
その時、隣国の国王が兵を率いて攻め込んできましたが、あっという間に捕らえられてしまいます。捕まった隣国の国王は言いました。「祝賀会をやりすぎたのが失敗だったな…。でも牢屋の中で小説を書けるからいいか。」
これを聞いた姫は興味を持ちました。「あなた、小説を書いてるの?年はいくつ?」
「53歳だ。」
「まあ、育てがいがあるわね!」
それを聞いた国王と王妃は慌てて命じました。「早く牢に入れてしまえ!姫が惚れてしまう!」
しかし、姫はその夜こっそり牢屋を訪れ、隣国の国王と語り合ううちに良い雰囲気になりました。その後のことは、ご想像にお任せします。
10月10日後、姫は子供を産み、これをきっかけに国王と王妃も結婚を認めました。そして二つの国は統合され、国民たちは住みやすい国だと評判になりました。
また、小説家を夢見る隣国の元国王は、姫と結婚し、人生初めて小説を完成させることができました。


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