4月9日(火) 大家さんの奴隷でもいい
私が住んでいるマンションは2月から改装をしていて、ようやく終わろうとしている。洗濯物は干せなくなったし、毎日ドリル音で眠りを妨げられ、ベランダから聞こえるおじさん達の会話や、出窓にスパイダーマンの様な人影が動くのも2ヶ月すれば慣れた。
部屋のベランダには物置があって、捨てるまでに至らない荷物やスーツケースを詰め込んでいるのだけど、その物置も新しいのにするか何かで大家さんと何度かやりとりをしたことがあった。
結局物置はそのままになり、大量の荷物を部屋にしばらく置いておかなければならない事態は免れた。
私には何の手間もなかったのだけど、大家さんからわざわざ
というメールをもらった。ポストにささやかなお品か……。
嫌な予感がした。なぜ嫌な予感がするのかというと、ポストの暗証番号を知らないからだ。
ささやかなお品って、きっと箱に入ったお菓子でしょ。結構でかいじゃん、大家さん絶対暗証番号でポスト開けて入れてんじゃん。
入居当初、鍵がスムーズに回らない、トイレがちゃんと流れない、風呂を沸かすとなんか変な粉が出てくる、風呂の栓抜くと違う排水溝から水が溢れてくるなど、全て生活する上で支障をきたすものだけど、あまりにも色々言ってしまったので、入居早々にポストの暗証番号の紙を無くしましたと言えず、そのまま5年が経ってしまった。
ポストに入るのはせいぜいチラシやなにかの明細書、不在通知、たまにレターパックぐらいなので手を突っ込めばだいたい取り出すことができる。手首は時に真っ赤になったけどそれにも慣れた。前住んでいた家でもそうだったから鍵のかかったポストに手を突っ込む歴は7年くらいだ。
帰宅して早速ポストをのぞく。紙袋に入ったお菓子の箱と中村屋の文字が見える。和菓子だろうか。そしてポストの窓よりブツの方が大きい。これは無理だ、取れん。
紙袋を外から引きちぎり、すこしずつちぎっていく作戦を考えた。
駄目だ、箱が思ったよりかてぇ、ちぎれねぇ。
帰ってきた別の部屋の住人にすごい顔をされた。中断。
このままだと中の菓子も腐るし、こんなビリビリにしたものを放置することもできない。大家さんがこれを見たら悲しむ。
意を決して大家さんにメールをすることにした。
丁寧の度合いが分からなくてメルカリの時みたいになってしまった。無駄に長い。
メルカリやラクマでどんな失礼極まりない客にも、自分は奴隷だと言い聞かせてやり取りしている癖でこうなってしまった。
私たちの間では、評価を恐れるあまりに丁寧の度合いが分からなくなる事をメルカリの奴隷、フリル(ラクマの旧名称)の奴隷と呼んでいる。丁寧に越したことはないのだけど!
そして、いとも簡単に大家さんから暗証番号を聞き出すことに成功した。今後不具合があったら連絡してくださいというメールまでいただいた。
暗証番号通りにやったらなんの失敗もなく開いた。生まれて初めて見た中の様子である。
ポストから取り出すのめっちゃ楽。もっと早く聞けばよかった。
和菓子か何かと思って中身を開けたらあられだった。しばらく放置して、少しずつちぎって取り出していく方法選んでも腐らなかったな。
雑に紙を破った話、こちらもどうぞ!