泥臭い綺麗ごと
「部活辞めようと思ってる。」
1年生の時からよく耳にした言葉。私だって言ったこともある。
でも今回は何かが違った。それに気づいたのはだいぶ前に個人的に聞いたときでも、飲みながら大号泣して引き留めたときでも、
同期全員の前でその子が言ったときでもなかった。
少しだけ状況説明を入れる。
私ねぎとろは大学4年生である。部活とは大学で所属するラクロス部のこと。ラクロス部は引退が遅く、というより4年生の夏が集大成であり、今はそれに向けて気持ちを高める時期であるともいえる。
そんな時に起きたとある部員の退部宣言。
このノートで残したいのは自分の未熟さと同期への尊敬の気持ちである。
部員が辞めたい理由は、貴重な残りの大学生活をこのチームに捧げたいと思わなくなったから、である。
チームに’いたくない’でも’嫌い’でもないところが今までと違うところだと思った。
部活を辞めたいと思う理由は基本的に精神的に部活がしんどくなったり、他にやりたいことができたりなどが多い。
自分のためではなく、チームに貢献できない、というのが理由だった。ただ引き留めても意味はなく、引き留めるこちら側の環境を改善する必要があるのだ。
しかし私はこの話を聞いて真っ先に、「嫌だ、辞めてほしくない」を口走った。
でも他の部員は、
「こんなにチームのことを考えてくれる人が辞めてしまうのは悔しい」
「こんなことを言わなくても辞めることはできたはずなのに、わざわざ話し合う機会を与えてくれてありがとう」
「引き留めたいけど既にここまで苦しめてしまってその自信がない」
「気づいても見て見ぬふりしてた、実際に話してくれるこの存在が必要なんだ」
思っていることを言語化する力や、そもそもそこまで及ばなかった考え方に心からみんなを尊敬した。
ああ、私の同期ってこんなに頼もしくて聡明で仲間想いなんだ。
ただ明るくて一緒にいて楽しいだけじゃないこの良さにずっと気づくことができなかった。
引退まであと半年間、この同期と理想のチームを作るために全力を注ごうと思う。
文字では綺麗ごとのように並べられているかもしれないが、現実は泥まみれですごく険しいと思う。
引退してこのノートを振り返ったときに、やり残さずできたと思えるように過ごそうと思う。