【ガストロノミー】緑川十影誕生日 記念Short Story:わがままMy Master
このお話は【ガストロノミー】のある日のサイドストーリー、ヒロイン目線のお話です。
※アプリゲーム内ガチャシナリオの後半部分を改変、書下ろしています(アプリは現在サービス終了しています)。
<アプリシナリオ>
わがままMy Master
※このお話は二人がまだ結婚前、付き合い始めたころのお話です。
その日、私はキッチンである失態を犯してしまった。
何度も十影さんの部屋の扉の前でためらった後、ようやくノックして入る。
あなた「十影さん」
緑川十影「どうしたんだ、こんな時間に。お前から夜這いに来るとは珍しいな」
あなた「……」
緑川十影「……おい、何かあったのか? どうして泣きそうな顔をしてるんだ」
あなた「私、十影さんに謝らなくてはいけないことがあって」
緑川十影「謝る?」
あなた「ごめんなさい! 十影さんのワインボトルを割ってしまったんです」
深く頭を垂れると、十影さんが驚いたような声を出す。
緑川十影「ワインボトルだと?」
あなた「ええ。棚の一番上の、大きいボトルです……」
緑川十影「……ああ、あれか」
あなた「私、弁償します。おいくらでしょうか」
緑川十影「弁償は別にいい」
あなた「でも、古い年代もののワインでしたし、きっと高価なものなんですよね」
緑川十影「あのな、そもそもお前は記憶喪失の上に無一文だろうが。どうやって弁償するつもりなんだ?」
あなた「夜、亜蘭さんのレストランで皿洗いをします」
緑川十影「やめとけ。薄給でこき使われるのがオチだ」
あなた「私の返せるような額ではないのなら、お詫びに何でもしますから……」
緑川十影「ほう。じゃあひとつ、頼まれてくれるか」
あなた「ええ。それで許してもらえるならば」
その時浮かんだ十影さんの含み笑いに、私は全く気づかなかった――。
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言いつけ通りにお風呂場へ入ると、十影さんが既に湯に浸かっていた。
私の格好を上から下まで眺めるようにした後、にやりと笑う。
緑川十影「なかなか似合ってるじゃないか、その格好」
あなた「あの……この水着はいったい……」
緑川十影「お前をうちで引き取ると決まった時、メイド服とともに亜蘭に押し付けられた」
あなた「え」
緑川十影「そのまま忘れていたんだが、捨てずに正解だったな」
十影さんが浴槽からザバリとあがって、筋肉質な裸体を露わにする。
慌てて目をそらす私に構わず、風呂椅子に座った。
緑川十影「何でもするんだったな」
あなた「は、はい」
緑川十影「なら、これ」
渡されたのは手ぬぐい。
あなた「あの、もしかして、背中を洗う?」
緑川十影「嫌ならいい」
あなた「いいえ! やらせてもらいます」
石鹸と擦り合わせて、泡立った手ぬぐいで、十影さんの背に触れる。
優しく擦っていると、十影さんが不満げな声をあげた。
緑川十影「それじゃあ、洗ってるんじゃなくて、くすぐられているようにしか感じない」
あなた「そうですか? じゃあ、もっと強くますね」
(十影さんの背中、大きくて、男性らしくて……何だか、ドキドキしてしまう)
ゴシゴシと一所懸命擦っていると声をかけられた。
緑川十影「もういいぞ」
あなた「はい」
緑川十影「今度は俺がお前の背中を洗ってやろうか?」
あなた「そ、それはけっこうです!」
緑川十影「そうか。なら、俺はもう出るからお前はそのまま風呂に入れ」
あなた「え? もう洗わなくていいんですか?」
緑川十影「いい。あのワインは市販の安物だ。高級でも何でもない」
あなた「だ、だって……年代もので……」
緑川十影「古いからって高級とは限らない。そりゃあ、置けば置くほど味が良くなって値がはねあがるものもあるが、安物のワインを寝かせても味なんて落ちるだけだ」
あなた「……そんな」
緑川十影「俺はそのワインが高いなんて一言もいってない。お前が勝手に勘違いしただけだ」
あなた「うう」
緑川十影「ま、その勘違いのお陰でお前の水着姿が見られたわけだ。海に行ける季節になるまで待とうと思っていたが、棚からボタ餅ということで」
あなた「……もう……っ」
十影さんを睨みつけて胸を叩いてもびくともせず、逆に強く抱かれてしまう。
そして与えられる優しい口づけに、結局許してしまうのだった――。
END
シナリオ:NINOYA