【ラブイン】小瀬VS相模 Short Story
このお話は、【ラブ インテリジェンス~オフィスのスパダリ~】の番外編、
ヒロイン(春山サクラ)目線のお話になります。
小瀬VS相模 Short Story ファッション対決!?
取引先の今をときめく大企業、ノードネット社の社長である小瀬さんから、
私たちLIXの社員は誕生パーティへと招待された。私はパーティへ着て行くドレスを選ぶために、同僚の涼ちゃん、ニコちゃん、それから小瀬さんとお店を訪れていた――
「このドレスはどうだ、サクラ」
「ステキだけど……胸もとがあきすぎてるような……」
「それなら、こっちの方がいい。華やかだが品がある」
「それもステキですね。でも、丈が短いかもしれません」
小瀬さんとのやり取りに、涼ちゃんが口を挟んできた。
「小瀬さんの選んだドレスは、単に小瀬さんの好みでしょ? なるべく女性の足を見たいっていうね」
「巨乳好きの相模さんだけには言われたくありませんね」
「は? 別に巨乳好きじゃありませんけど?」
「ちなみに俺はちゃんと彼女に似合うものを選んでいます。足がキレイだから、出したほうがいいと思ったまで」
「本人、嫌がってますけど?」
いがみ合うふたりの間で、私は気まずい気分を味わう。
(お店に入ってからずっとこの調子……どうしたらいいんだろう)
「だったら、サクラに選んでもらいましょう」
涼ちゃんが私に自分が選んだドレスを押し付ける。
「サクラ、着替えて来い」
「ええっ」
「お前がいいと思った方を選べ」
小瀬さんも負けじと自分の手にあったドレスを突き付けてくる。私がすっかり困っていると、救いの手が伸ばされた。
「あんたたちさあ、勝手にドレス選びについてきたくせに、態度デカくない?」
同僚で優秀なエンジニアの鈴鹿ニコル、通称ニコちゃんがふたりをたしなめる。すると、涼ちゃんはぶっきらぼうに返事をした。
「うるせえ。お前だって、勝手についてきたんだろうが」
「私はサクラに頼まれたんだもん」
「ああ!? サクラ、お前、なんでニコルなんか誘ったんだよ」
「ニコちゃんは女子力が高いので……」
「その通り。私のほうがサクラより女子力高いから」
「はあ? 何が女子力高いだ。お前、男だろうが!」
そう、ニコちゃんはどこからどう見てもオシャレなギャルだけど、実は男の子。全員に向かって、涼ちゃんは胸を張った。
「俺のほうが付き合いが長い分、サクラに似合うものは分かってる」
「付き合いの長さよりも、濃さの方が大事だと思うが?」
「小瀬さんは濃くもないじゃないですか。うっすい! じゃないですか」
「そっちこそ、成人してからの付き合いはうっすい! のでは?」
小瀬さんの嫌味な返しが効いたらしく、涼ちゃんは悔しそうだ。いっそう場の空気が悪くなり、小瀬さんはすっとフロアの隅を指さした。
「サクラ、試着室は向こうだ」
「じ、じゃあ、着てみますね」
私は逃げるように試着室へと向かった。
そして、まずは涼ちゃんが選んでくれたドレスを着てみんなの前に出る。
「えっと……どうでしょうか」
涼ちゃんは満面の笑みで私を出迎えた。
「よく似合ってる。お前にはこのドレスが似合うと思ったんだ」
「……少し派手じゃない? それに肩がむきだしだし」
「肩くらい出していこう。パーティなんだし、ちょっと目立つくらいがちょうどいいって」
涼ちゃんは笑顔でそう言うけれど、私はちょっと落ち着かない。
「もう小瀬さんのドレスは試着しないで、これに決めたらどうだ」
「そうはいかない。サクラ、着替えてみろ」
「わ、分かりました」
次は小瀬さんが選んでくれたドレスを着て、試着室を出る。
「着替え終わりました」
「ああ、やはりお前の魅力を最大限に引き出すには、このドレスだな」
小瀬さんは自信に満ち溢れた笑顔で私を出迎えた。
「あ、あの……かなり身体のラインが強調されて、大胆ですね……」
なんだか恥ずかしくて、私はそっと身を縮める。
「パーティは女性が華やかさを競う場だ。少しは大胆さがないと。このドレスなら、会場中注目の的だな」
「それはちょっと……」
私がためらっていると、すかさず涼ちゃんが会話に割り込んできた。
「小瀬さんは全然分かっていませんね。そんなピタピタドレスじゃ、こいつの魅力が生かせない」
「そっちこそ今時オフショルダーなんて流行遅れでしょう」
「はあー? それはそっちでしょ。今更ボディコンか?」
ふたりの言い争いは、収まる気配がない。すると、小瀬さんがすっと私を見据えた。
「こうなったら、本人に選んでもらいましょう」
「ええ。その意見には賛成です」
ふたりの視線を一度に注がれ、私はびくっと背筋を伸ばす。小瀬さんは冷静な声で私の名前を呼んだ。
「サクラ」
「は、はい」
「どっちのドレスを選ぶんだ?」
「当然、俺の選んだドレスだろう?」
自信ありげに言い放った小瀬さんを、涼ちゃんがきりっとした表情で迎え撃つ。
「いや、俺の方に決まってるよな」
「あ、あの、ふたりとも……」
おろおろする私に、笑顔のニコちゃんがさっとドレスを手渡してきた。
「サクラ、そんなだっせえドレス脱いで、こっち着なよ」
「はあ? だっせえとは何だ、だっせえとは」
「だっせえから、だっせえって言ってるんですけど? どっちもサクラには似合わないよ」
ニコちゃんの言葉に、小瀬さんの眉がぴくりと動く。
「そこまで言うなら、相当自信があるんでしょうね?」
「もちろんですよ、小瀬社長。サクラ、着てみて」
「分かりました」
私は試着室へ向かい、ニコちゃんが選んでくれたドレスを着てみんなの前に立った。ニコちゃんは私の姿を見ると、自慢げに胸を張る。
「どうよ」
「うっ……クソ、カワイイ……」
「確かによく似合っている……」
何故か頬を薄く染めて、悔しそうなふたりにニコちゃんは満面の笑みを浮かべた。
「でしょ、でしょ。サクラはどう?」
「自分ではなかなか選ばないデザインですけど、着てみたら自分でも違和感がなくて……それに、なんだかちょっと大人になれた気分です。私、このドレスにします!」
「……仕方ないな。これは負けを認める」
涼ちゃんが肩をすくめると、小瀬さんも頷いている。
「ああ。華やかだが品があって、見とれてしまった」
「ニコちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。だって、今、サクラと一番付き合いが濃いのは私だもんねー!」
そう言って、ニコちゃんは私に抱き付いてきた。
「あ、こら! お前、どさくさに紛れて!」
「あっ、そうだ。敗者のおふたりさん。私がサクラにピッタリのドレスを選んであげたでしょ?
「……まあ、そうだな」
「つまり、カワイイ格好のサクラが見られたのは私のおかげじゃん? もちろん、ご褒美くれるよね?」
「……何が欲しいんだ」
不服そうな涼ちゃんに、ニコちゃんは笑顔で言い放つ。
「お腹すいちゃったし、皆でご飯食べに行こうよ! もちろん、お代は任せま~す」
「4人というのが不服だが……まあいいだろう」
小瀬さんと涼ちゃんの前で、私とニコちゃんはハイタッチを決めた。
「やったー! サクラ、今日は思い切り食べちゃおう!」
「そうですね」
その日、私はやっぱりニコちゃんは最強だな……と再認識しました。これからも、仲良くしておかないとな。
~小瀬VS相模 ファッション対決!?」END~
【登場人物紹介】
俺様×社長×クライアント 小瀬侑一郎
超有名IT企業、ノードネット社の社長。サクラを気に入り、何かとちょっかいをかける。
チャラ男×幼馴染×同僚 相模涼平
転職先で偶然再会した、サクラの幼馴染。見た目に反し意外としっかりしていて、何かとサクラの面倒を見てくれる。
今ドキギャル×同僚×??? 鈴鹿ニコル
サクラの同僚でハッキングの得意なエンジニア。どう見てもギャル系美少女だが、ある重大な秘密を抱えている。