【ガストロノミー】江川亜蘭誕生日 記念Short Story:ご主人様のLove Sick
このお話は【ガストロノミー】のある日のサイドストーリー、ヒロイン目線のお話です。
※アプリゲーム内ガチャシナリオをアレンジして再掲載です(アプリは現在サービス終了しています)。
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<アプリシナリオ>
ご主人様のLove Sick
いつものティータイム。
大きなくしゃみに振り返ると、亜蘭さんが軽く身震いしたところだった。
あなた「寒いんですか? 亜蘭さん」
亜蘭「いや、少し悪寒がしただけだ……誰かが私の噂でもしているのだろう」
あなた「でも、お顔の色がよろしくないようです」
亜蘭「そう見えるなら、悪い方の噂かもしれない。探偵業なんてやっていると人の恨みを買うことが多いからな。最近恨まれるタネもひとつ増えたことだし、その怨嗟かもしれない」
あなた「えっ、それは何ですか?」
亜蘭「お前という美しい恋人ができて、私への妬み嫉みは増えるばかりだ」
あなた「……それを言うなら、ご婦人方の私への嫉妬の方が」
亜蘭「何? もしや、嫌がらせでも受けているのではあるまいね」
あなた「とんでもない。ただの私の想像です」
亜蘭「ならいいが……」
ほっとした表情を浮かべる亜蘭さんの頬に、そっと触れて驚く。
あなた「亜蘭さん! 熱があります」
亜蘭「それはお前に触れられているからだ」
あなた「違います、そうじゃなくて。弓彦先生にすぐに診て頂かなくては」
渋る亜蘭さんを説き伏せて、弓彦先生に来てもらうことにした。
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亜蘭さんを診終えた弓彦先生は、一言で病状を告げた。
弓彦「風邪だね」
亜蘭「要するに、たいしたことは無いという事だな」
あなた「風邪は万病の元ですよ、亜蘭さん」
弓彦「そうそう。熱も出ていることだし、ちゃんと休養したほうがいい。ちなみに汗をたくさんかいた状態で身体を冷やすと発熱しやすいんだけど、心当たりは?」
亜蘭「ある。だが、それなら彼女もひいてるはずだぞ」
ちらりと視線を合わせられて、意味に気づいて赤面する。
弓彦「なんとなく想像はつくけど、事後は湯を浴びるなり何なりするように」
亜蘭「分かった。そうだ、お前は風邪がうつるといけないから、しばらく私の部屋に来ないように。夜も自分のベッドで寝るんだ」
あなた「でも」
弓彦「つれないことを言うもんじゃないよ、亜蘭」
亜蘭「女性に風邪をうつすのは紳士のやることではないだろう」
弓彦「専属看護師になってもらうのもいいんじゃないかな。彼女に薬の用法について教えておくよ」
あなた「お願いします」
弓彦先生の言葉を真剣に聴き入る私に、亜蘭さんは諦めたように嘆息した。
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訪問者が現れたのは、夕食後に薬を飲ませてあげようとしている時だった。
小林くん「旦那様、入りますよ」
亜蘭「ああ、どうした小林くん」
小林くん「大江先生と十影さんのおふたりからお見舞いの品を持ってきましたー」
小林くんが持ってきたのは、様々な旬の果物が入った大きなバスケット。
小林くん「それと伝言がありまして……いいですか?」
亜蘭「言ってみてくれ」
小林くん「『治ったら、余った果物を食材として我々をもてなすように』」
亜蘭「それは静也か?」
小林くん「あたりです。それと、『バカなのに風邪をひくとは驚いた』だそうです」
亜蘭「十影ぇ!」
小林くん「以上です。では僕は風邪がうつると困るので退出します」
役目を終えたとばかりにすぐ帰ってしまうので、慰めの言葉をかける。
あなた「皆さん軽口を言っていますけど、きっと心配しているんですわ」
亜蘭「親切な友人達を持ったものだよ、全く……」
はあ、と深いため息をついた亜蘭さんは、果物をにらみつけるようにした。
亜蘭「腹立たしいから、全て食べてしまおうか。……そうだ、スイカをもらおう。お前、切ってきてくれないか」
あなた「分かりました。台所で切ってきますね」
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ベッドサイドテーブルに、スイカを載せたお皿を置く。
あなた「亜蘭さん、スプーンを」
亜蘭「このままでいい」
亜蘭さんは手掴みでスイカにかじりついて、口の端についた果汁を舐めとる。その仕草が妙に艶めかしくて、私は見蕩れてしまう。
亜蘭「どうかしたか? お前も、お食べ」
あなた「あ……はい。では……」
スプーンを取ろうとすると、止められてしまった。
あなた「亜蘭さん……?」
亜蘭「スイカは上品に食べるより、かじりついた方が美味しい気がする。お前も試してごらん」
あなた「それじゃあ」
彼と同じようにスイカにかじりつく。
あなた「あ、これはずいぶん甘いスイカですね」
亜蘭「……」
あなた「……亜蘭さん?」
亜蘭「……汁が垂れてるぞ」
亜蘭さんが私の口元の手を退けて、顎のあたりをペロリと舐めた。
あなた「ひゃ……ん」
亜蘭「果汁を舐めているだけだ、そんな声だすな」
くちびるの周りを何度も執拗に舐められて、甘いものが込み上げてくる。
あなた「……亜蘭さん……」
亜蘭「その濡れた目。ねだっているのかな?でも、風邪がうつってはいけないから口づけはなしだ。ただし、それ以外は我慢できない」
あなた「きゃぁっ」
亜蘭さんは私をベッドの中に引きずり込んだ。
あなた「ダ、ダメですよ!安静にしていないと!」
亜蘭「熱は汗をかくと下がるんだ。お前は私の専属看護師だろう?責任を持って看護をしてくれないと」
あなた「うっ……」
彼はニッコリと微笑み、両手を広げた。
亜蘭「さぁ情熱的な看護を頼むよ、看護師さん」
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翌朝。
亜蘭さんは紅茶を美味しそうに飲み干して、すっきりしたように微笑む。
亜蘭「すっかり気分がいい。もう治ったとしか思えない」
あなた「それは良かったです。では、お薬を」
亜蘭「お前の煎れてくれた紅茶を飲んだから、それで十分だ」
あなた「確かにすっかり熱は下がっているみたいですけど」
亜蘭「ありがとう!昨夜、お前が必死で看病してくれたお陰だ!」
その笑顔は爽やかで、でも意味深で……私は紅潮する顔を抑えながら頷く他なかった────
END