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【ガストロノミー】大河原弓彦誕生日 記念Short Story:彼女のLove Sick

このお話は【ガストロノミー】のある日のサイドストーリー、ヒロイン目線のお話です。
※アプリゲーム内ガチャシナリオの後半部分を改変、書下ろしています(アプリは現在サービス終了しています)。

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彼女のLove Sick


秋深まったある日のこと。
弓彦先生の昼食を差し入れるため、病院へ訪れた。

あなた「弓彦先生、失礼します」

大河原弓彦「あれ、どうしたんだい?」

あなた「昼食を届けに来たのですけど、もう済ませてしまいました?」

大河原弓彦「じゃなくて、その声」

あなた「え?声、変ですか?」

大河原弓彦「気づいていなかったの?ひどく掠れているよ。喉、痛くないかい」

あなた「そう言われてみれば、少し」

大河原弓彦「こっちにきてごらん」

弓彦先生は私を診療用の椅子に座らせ、顎を持つと口を開かせた。
ペンライトのようなもので口内を照らしながら覗き込み……

大河原弓彦「ああ、扁桃腺が少しはれているね。体はだるい?」

あなた「だるくはありませんが、肩がひどく凝っています」

大河原弓彦「たぶん初期の感冒です。家に帰ってちゃんと養生てください」

あなた「でも、私、元気ですよ?そんなにオオゴトにしなくても」

大河原弓彦「風邪は引き始めが肝心。このまま放っとけば、君のキレイな声が聞けなくなるかもしれないんだから僕にとってはオオゴトだ」

冗談か本気かわからない口調で言って、弓彦先生は私の額に手を当てる。

大河原弓彦「まだ熱はないようだから、今のうちに寄り道せずに急いで帰りなさい。マスクもしたほうがいいね」

そう言って先生は棚からマスクが入った箱を取り出し、私を早々に追い返したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜──。
弓彦先生は夕飯を作って食べさせてくれた上、お風呂から出た私の髪をタオルで拭いてくれた。

あなた「あ、あの、弓彦先生、自分でやりますから大丈夫です」

大河原弓彦「ほら、もうすぐ乾くから暴れない。本当は湯冷めするからお風呂だって入らないほうがよかったんだよ?」

あなた「小さい子じゃないんですから、大袈裟ですよ。少し声がかすれるくらいで」

照れ隠しに口を尖らせると。

大河原弓彦「昼間も言っただろう?いつも通りに君の声を聞けないことは僕にとっては大問題」

あなた「確かに私も先生とお話したいですけど……」

大河原弓彦「そう思うならまだたいしたことがないうちに治してしまいなさい」

あなた「はい」

大河原弓彦「そうだ、寝る前に薬を飲まないと」

あなた「お薬ですか!?」

大河原弓彦「どうしてそんな驚いた顔をするの?」

あなた「だって……」

大河原弓彦「ああ、君、粉薬が苦手だったね」

あなた「先生が作ってくれる漢方薬はよく効きますけど、とても苦いですし」

あの中村さんですら「まずい!」と言って吐き出すくらいなのだから、という言葉を私は飲み込んだ。

大河原弓彦「大丈夫。今日は飲み薬にしてあげるから。ちょっと待ってなさい」

そう言い残して部屋を出ていく。

あなた(先生、いったいどんな苦い薬を調合してくるつもりだろう)

いっそこのまま布団にもぐりこんで寝たふりして逃げてしまおうかと思ったころ、先生がお盆に湯呑を乗せて戻ってきた。

大河原弓彦「はい、これを飲んでごらん」

あなた「この飲み物は……」

恐る恐る手に取るととてもよく知った香り。

あなた「生姜湯……それに何かの実が入ってますね」

大河原弓彦「乾燥させたナツメだよ。ナツメは気と血を補って免疫力を高める効能があるんだ。ぜひ召し上がれ」

あなた「ありがとうございます。いただきます」

生姜の香りにくわえて、ほのかな甘み。

あなた「おいしい!」

大河原弓彦「ふふ。良かった。殺菌効果がある蜂蜜も入れておいたんだ」

あなた「あまーい、あったかーい」

大河原弓彦「安眠作用もあるから、ぐっすり眠れるよ」

あなた「それじゃあ、弓彦先生も……」

大河原弓彦「じゃあ、もらおうかな。君を抱いて眠ればいつも安眠出来るけど……今日はそうはいかないだろうから」

そう言いながら、弓彦先生も私から湯呑を受け取って一口飲む。

大河原弓彦「うん、我ながら美味しく作ることができた」

あなた「今度、みなさんにも作ってあげてください」

大河原弓彦「みなさんって亜蘭たちのこと?あいつらは葛根湯でも飲ませておけばいいよ。さあ、それよりもう布団に入りなさい」

先生はそう言って私の髪をなでた。

あなた「先生は?」

大河原弓彦「僕はもう少し仕事をしてから寝る」

あなた「……私も……」

大河原弓彦「え?」

あなた「弓彦先生が隣にいれば……」

大河原弓彦「よく眠れる?」

コクリと頷いた私に、弓彦先生が愛おしそうに目を細めた。
なでていた掌を頭の後ろに回し、そのまま引き寄せて、額に口づける。

大河原弓彦「あれ?少しおでこが熱いかな。なるべく急いで僕も隣にいくからもう少しだけ待っててね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝──。
弓彦先生の生姜湯が効いたのか私の声はすっかり良くなっていた。

あなた「ありがとうございます。弓彦先生のお陰ですわ」

大河原弓彦「うん。一晩ですっかりよくなって、安心した」

大河原弓彦目閉じ「これでもう、お互いに我慢せずに済むよ」

あなた「え?」

大河原弓彦「これで夜も君に思う存分声をあげてもらえる」

あなた「……っ」

大河原弓彦「なーんてね」

弓彦先生はやはり冗談とも本気ともつかない口調で言って、笑うのだった――。



END

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