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地域との共創で広げる挑戦の輪 〜富士通コミュニケーションサービス株式会社 金井美紀和さんインタビュー〜
創業以来、企業向けのヘルプデスクサービスを提供し続けてきた富士通コミュニケーションサービス株式会社。その活動の舞台は、横浜を拠点にしながらも新潟へと広がり、地域に根差した新たなビジネス展開を進めています。
今回は、代表取締役社長 金井美紀和さんに、新潟進出の背景やNINNOとの協業、さらには新潟から始まる未来のビジネス展望についてお話を伺いました。
富士通グループの中で30年近く活躍し続けてきた企業が描くのは、一体どんな未来なのでしょうか。
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〈プロフィール〉
金井 美紀和(かない みきわ)1968年生まれ東京都出身。立教大学文学部ドイツ文学科を卒業後、株式会社ソキアに入社。その後、株式会社ジャストシステムを経て1998年に富士通株式会社に入社。2015年よりマネージドインフラサービス事業本部などさまざまな部署で管理職を務める。2022年、富士通コミュニケーションサービス代表取締役社長に就任。
ーー富士通コミュニケーションサービスの事業内容を教えてください。
1994年の創業以来、企業向けのヘルプデスクサービスを提供するサービスプロバイダーとして事業展開してきました。現在ではヘルプデスクサービスだけでなく、システム運用を中心としたITアウトソーシングサービス、コネクトセンターなどのバックオフィス、セールスサポートまで幅広いニーズに対応した事業展開を行っています。
今後は“企業と顧客を人とICTのチカラでつなぐ”という信念を掲げ、CX(顧客経験価値)を高めることでお客様のビジネスにより貢献出来るよう取り組んでいきたいと考えています。クライアント企業と顧客との間に立っている我々だからこそ提供できるサービスです。
ーー時代の変化とともに事業の幅も広がっているのですね。では、代表取締役社長に着任されるまでの金井さんの経歴を教えてください。
大学卒業後は学んだドイツ語を活かして測量機器メーカーで国際貿易に携わっていました。そんな中、ソフトウェア・ハードウェアを一緒に売っていく世界が来ると言われ始めていたため、商品の販売から商品をより活かせるようなサポートをこなす技術営業職にも挑戦しました。その後、汎用的な技術や知識を身につけるためにソフトウェア会社への転職で経験を積み、2度目の転職で富士通に入社しました。
ーー転職先を富士通に決めたのはどんな理由なのでしょうか?
20代はベンチャー企業でやりたいと思ったことに積極的にチャレンジしていました。そのため、チャレンジ精神は変えず、自分の知見やスキルをより広げられる環境を求めていたのです。そんな私の個性やこれまでの経験を尊重してくれたのが富士通でした。
ーー富士通ではどんな仕事に携わっていましたか?
富士通で取り扱う製品のサポート業務を企画していました。具体的には、製品の一つ一つにはサービス契約を結ぶ際の金額やサービスメニューがあり、その考案を行っていました。
その他、商品を販売するための事務手配周りのセンターや、インドにアウトソーシングするなど様々な事業なども経験し、2022年に富士通コミュニケーションサービス株式会社代表取締役社長に就任しました。
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ーー以前からプラーカ3に新潟サポートセンターとしてオフィスを構えていらっしゃいますが、なぜ新潟県に拠点を置かれているのでしょうか?
当社が新潟に進出したのは22年前になります。この進出の決め手は3つありました。
1つ目は新潟に我々の業界のコンタクトセンター・コールセンターがまだ進出していなかったこと、2つ目は専門の知識や技術を持った人材確保が期待できたことです。我々はパソコンのサポート業務がありますので専門知識を持った人材を強く求めていました。そんな中、新潟には電子工学系の専門学校があり、当社の力となってくれる人材が集まってくれるのではないかと考えました。
そして、3つ目は新潟県が企業誘致をしていたことです。自治体の方にご紹介いただいたプラーカ3は、駅が近く、社員の通勤のしやすさや本社からの社員も訪れやすいことなど、我々にはぴったりな立地でした。以前は商業施設としてのみ利用されていたプラーカ3に、オフィスを設けたのは当社が第1号だったそうです。現在は500名ほどの社員がこのオフィスで勤務しています。
ーーNINNO PROJECT SPACE会員となった経緯を教えてください。
NINNOを運営する木山産業の木山さんとお話しする中で、“地元のベンチャーを育てる”というNINNOのコンセプトが心に響いたからです。実際にNINNOに足を運んだ際には、そのコンセプトが実際に機能していると感激したのを覚えています。さまざまな地域でベンチャーを後押ししようという動きはありますが、新潟はその中でも特に取り組みが進んでいる地域だと思います。すでに起業して軌道に乗っている企業があるというのは素晴らしいことです。
そんな活力のある新潟の企業と一緒に仕事をすることで、我々にも活力が生まれると考えています。これから企業として生き残っていくには新しいことに取り組まなければならないと思っています。「NINNOと関わりを持つことで我々の思い描く未来に近づけるのではないか」と考えたのが加入の決め手となりました。
また、新潟サポートセンターの社員は新潟出身者が多いので、地元に関わる仕事をすることで社員達がもっと活き活きするのではないかという期待もあります。
ーーNINNO入居後、他企業とはどんな形で関わっていますか?
現場のスタッフに月1回行われているテナント会議に出席してもらっていますし、シェアオフィスも利用しているのでその際に交流があります。当社のオフィスとNINNOは歩いて数分なので社内で仕事をすることもできるのですが、あえてシェアオフィスを利用しています。というのも、仕事をする雰囲気というのはとても大切だと考えているからです。会社の中だと固定された思考になってしまう気がするのですが、シェアオフィスを利用することで頭の切り替えができると思いますし、他社の方々とコミュニケーションをとることもできます。お隣にオフィスがあるキヤノンイメージングシステムズさんやBSNアイネットさんなど、新潟の歴史ある企業とはお互い認識はしつつもなかなかお話しする機会がなかったので、NINNOに参加したことで一気に距離を縮めることができました。そんな企業さんとのコミュニケーションがとても有意義で、何気ない会話の中で悩みを共有したり新たな発想を得られたりと大変刺激を与えてもらっています。また、仲間に迎え入れていただいた気がしてとても嬉しいです。自社のオフィスにこもってばかりいると会社同士の壁を感じてしまうのでその壁がなくなるのがNINNOの魅力ですね。
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ーー実際に他社とのコミュニケーションから生まれた共創はあるのでしょうか?
まだビジネスとしては確立していないのですが、キヤノンイメージングシステムズさんの技術を活用させていただき、我々の業務上の課題解決に向けた実証実験を行なっています。
ーー具体的にどんな取り組みですか?
我々はコールセンターを有しているのですが、この業務はストレスが溜まりやすいという特徴があります。クレームを受けることもあるので、メンタルに負担がかかり、休職や退社してしまう社員もいるのが現状です。
そんな状況を改善するため、キヤノンイメージングシステムズさんの“イメージングAI”技術を用いてストレスを軽減するための取り組みを行なっています。AIが社員の映像を “にこやか・ノーマル・元気がない”といった3段階にわけ、1秒ごとにデータを蓄積します。このデータと業務のインシデントデータを照らし合わせることで、社員の元気がなくなった原因を探ることが出来るのです。さらに、分析結果を活用することで社員のメンタルフォローを早期に行うことが出来るのではないかと期待しています。将来的にはトラブルが起きた際にシステムを利用することで、いち早く社員の状況を把握してその場でフォローに入れるような仕組みを作っていきたいと考えています。これが実現すれば、社員のメンタルフォローはもちろんお客様へのサービス向上にも繋がるはずです。
ーーNINNOが繋いでくれたご縁ですね。
まさにその通りです。我々が積極的にキヤノンイメージングシステムズさんに出向いて「この課題を解決したいのでいい方法はありますか?」という提案をするというのは、正直なかったと思います。それが、何気ない会話でお互いの困っていることを言い合って、実際に行動に移せたというのはNINNOがあったからです。多くの企業と新たな取り組みを生み出せるのがNINNOの魅力の一つだと思います。
ーー地方である新潟において、どんな点で事業の可能性を感じますか?
新潟には世界から注目を浴びる製造業が、規模は違えどたくさんあります。我々は新潟が誇る製造業の皆さんが元気になっていただくことをお手伝いできるのではないかと思っています。職人さんの高齢化による人手不足や技術伝承の問題が取り沙汰されていますが、その問題解決に我々の持つITの力を活かせると考えているためです。新潟の力と我々の力を融合することで、より明るい未来を築くことが出来ると信じています。
また、新潟サポートセンターでは富士通から受ける東京の仕事がほとんどで、せっかく新潟にセンターがあるのに勿体無いと感じていました。NINNOの仲間入りをしたことでその想いは強くなり、新潟の仕事をどんどん増やしていきたいと思っています。この姿勢は、地元に貢献する仕事をしているという自負やプライドが社員に生まれて、仕事のやる気にも繋がると思います。また、離職率減少への効果も期待しています。
ーー地元の産業と連携することで、地域の力にもなり、また社員の皆さんのモチベーションも上がって良い循環ができますね。
ぜひそれを実現したいですね。新潟に限りませんが、その土地の可能性というのは、やはり地元で働いている人が生み出していくものだと思います。その結果、土地も人も元気になっていくと思います。その手法を新潟で確立し、県外に発信できたら面白いですね。
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ーー今後、新潟ではどんなビジネス展開をお考えですか?
新潟に住んでいる人たちが、新潟に残る選択が出来る仕事を作っていきたいです。地方の方とお話をすると、地元に残りたいけど仕事がないから仕方なく首都圏に出ていくという話をよく耳にします。仕事がないから地元を離れるというのはとても勿体無いと思います。そのため、新潟に残っても楽しい仕事があるという環境を生み出し続けていくことも、新潟に拠点を置く我々の役割だと考えています。そして、それが結果的に新潟のビジネスに貢献し、新潟の発展に繋がったら嬉しいです。
ーー大企業の拠点が新潟にあると知ってもらい、若い世代に地元で働く選択肢が増えるといいですね。
最近では政府がDXを推進していることもあり、IT業界に注目が集まっていますが、そのDXにはさまざまな角度のアプローチがあります。現場にシステムを入れることだけがDXではなく、使いこなせて初めてDXが実現します。この“使いこなす”という点で、我々の事業は大きな力を持っていると思います。決して華々しい業務ではないかもしれませんが、DXを進める上でなくてはならない業務です。そんなDXの仕組みを理解してもらい、我々の得意分野である業務を面白いと思ってもらえるようにアピールしていきたいです。
また、全国のセンターにそれぞれ個性がありますが、 新潟の社員と触れ合う中で感じるのはとても真面目な人が多いということです。以前、ATMの機械を扱う企業さんが「新潟の町工場は繊細な作業を行えるので信頼をおいている」とおっしゃっていました。さらに、八海山の酒蔵にいった際には、お米の出来が毎年違っても長年の技術や知識で品質を保っていると伺い、新潟という地域は真面目で職人気質の方が支えているのだと感心しました。そんな地域の特性を活かせるような環境を新潟サポートセンターで作っていけたらと思います。
ーー最後に、新潟の企業に向けてメッセージをお願いします。
当社の業務ではコールセンター業務などで身につけた洞察力・分析力、さらにはアウトソーサー業務で得たさまざまな企業の考え方や取り組みを元にした知見で、次のビジネスチャンスに繋がるご提案をさせていただいております。横浜に本社がある我々ですが、新潟サポートセンターでは新潟の企業の皆さんと手を取り合い、地域を元気にしていきたいという思いがあります。我々に「サポートしてほしい!」という企業様がいらっしゃればぜひお手伝いさせてください。
地域の特性を活かしながら新潟の企業と共に歩む富士通コミュニケーションサービスの姿勢は、地方の発展に欠かせない存在となっています。
地域の力を引き出し、デジタルの力を融合させる同社の取り組みは新潟の未来を切り拓く大きな力となります。新潟から全国へと広がる新たなビジネスチャンスに向けた挑戦に、今後も注目していきたいと思います。