ペットショップの片隅で①~ぼくは、にんにん。
ぼくは、ミニレッキスの黒い子うさぎ。
名前は、にんにん。
お世話してくれるお兄さんたちから名前は呼ばれないけど
「お客さん」っていう人たちの中で、ぼくのことを心配してくれているお母さんがこっそりぼくに「にんにん」っていう名前をくれた。
黒い→忍者→にんにん。
そして、ぼくが忍耐強い子だから、「にんにん」なんだって。
ぼくは、ホームセンターの中にある小動物ペットコーナーに住んでる。
ぼくはね、人間が好き。
ぼくはむやみに威張ったり、怒ったりしないよ。
教えられたら、ちゃんとトイレも覚えられる。かしこい子なんだって。
ビロードみたいって言われる自慢のぼくの毛
。色は黒いから、本当はつやつやのベルベットみたいでかっこいいんだ。
本当はね。
ぼくが住んでるコーナーには他にも仲間がいてね、ピーピーとか、キューキューとか、いろんな声が聞こえる。
ぼくらうさぎは鳴けないけど、よく聞こえる耳と、よく効く鼻で仲間がいることはわかる。
ぼくの部屋には、「ねだん」という数字が書いてある。
他のみんなの部屋にも書いてある。
人間のみんなはその数字と、部屋に住んでるぼくたちを眺めながらいろいろ言うんだ。
時々部屋から出されて、段ボールに入れられる仲間がいる。
その箱は知らない人に渡される。
でもその人たちはみんなにこにこして、優しそうだ。
大切そうに、仲間の入った段ボールを抱えて、どこかに行っちゃう。
きっと、幸せになってね。
いつもぼくは、そう思う。
いつかぼくもあの箱に入って、優しい誰かに抱えられて、仲良く幸せに暮らすんだ。
そう、いつも思っていた。
いつも、いつも、そう願ってた。