不妊に悩む方への特定治療支援事業が拡充されました
はじめに
不妊治療って高額な医療費かかるから、風邪なんかのように、気軽に近所のお医者さんに行って薬を処方してもらって、ってわけにはいかないです。しかも保険適用外なんですよね、不妊治療。禁煙治療とかギャンブル依存症治療は保険適用なのに・・・。
でも2022年4月から不妊治療に公的医療保険制度が使えるようになるみたいです。公的な医療保険制度が使えるようになるまでは現在使える助成金制度が拡充されます。この前、ニュースでやっていましたよね。
そこで今回はこの拡充された助成金制度について紹介したいと思います。
令和2年度第3次補正予算成立で不妊治療も
2021年1月28日、参議院本会議で「令和2年度第3次補正予算」が成立しました。この中で厚生労働省は「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」の一環として、子どもを産み育てやすい環境づくりをしていくという狙いで「不妊治療の助成の拡充」に370億円の予算をつけました。
これはどういうことかっていうと、体外受精などの高額な費用がかかる不妊治療への助成を2021年1月から拡充して、助成額も引き上げるってことなのです。つまり、これまでよりも不妊治療しやすくなるってことです。
それでも、まだまだ不妊治療費って高いから大変なんですけどね・・・。
不妊に悩む方への特定治療支援事業
今回の助成拡充は「不妊に悩む方への特定治療支援事業」っていうのが正式な事業の名称です。出産を希望する世帯を支援するため、不妊治療の保険適用を予定しているけれど、それが始まる前は今の助成制度の内容をアップするからね、ってことです。
この支援事業は2021年1月1日以降に終了する治療、つまり1月1日に治療が終了した医療費は対象になります。で、どんな治療が対象になるかというと、「体外受精」と「顕微受精」の場合、助成を受けることができます。
体外受精と顕微授精という不妊治療
対象となっている特定不妊治療の「体外受精」と「顕微授精」ってどう違うの?って思うでしょう、知らない人からすると・・・。
すごく簡単にいうと「体外受精」は女性の身体の外に卵子を採り出した後、男性の精子をその卵子にふりかけて受精させるっていう方法です。ただこれでは受精がうまくいかない場合があって、開発されたのが「顕微授精」っていう方法です。この顕微授精は体外受精の方法の一つで、取り出した一つの卵子に一つの精子を針で注入して受精させます。
今回の助成ではこの二つの不妊治療を受けた場合に助成金がでるのです。
不妊治療の助成金対象となる人
まずは年齢です。治療の初日で治療を受ける女性の年齢が43歳未満の夫婦であること。それから都道府県、指定都市、中核市が指定している医療機関で特定不妊治療以外の治療法では妊娠の見込みがない、あるいは妊娠する可能性がとても低いと診断された夫婦であること。
この条件がまず重要です。なぜ43歳未満なの?って声もあるんですが、これについては医学的な根拠があるようです。
年齢別の妊娠、出産で発生するいろいろなリスクとかそういうことについて、分析・評価をした結果、年齢が上昇していくと、治療しても妊娠・出産にたどり着ける可能性は少なくなっていくってことがあるそうです。
それから、三十代後半からは女性や子どもへの健康影響などに関するリスクは高まっていくことが確認されたからだそうです。こればかりは仕方ないのかな・・・。
不妊治療の所得制限がなくなりました
これまでも不妊治療に対しての助成はあったんです。でもその条件が今回の拡充で変わりました。まずは所得制限です。これまでは夫婦合算の所得が730万円未満っていう条件がありました。つまり、二人の年収が合わせて730万円だったら、助成を受けられなかったんです。
でもこれって厳しいですよね。不妊治療の医療費って本当に高額なんです。例えばこんな新聞記事がありました。
“授かるまでに400万円、不妊治療に使いました。世帯年収は700万円ぐらいです。金銭的にかなりきつく、借金して不妊治療をしていました。借金返済はしばらく続きます。金銭的な理由で不妊治療を諦めた方もいますし、金銭的な理由でステップアップをためらう方もいます。不妊治療をしている人=子どもが欲しい人なのだから、少子化対策として保険適用や助成金の大幅増額を充実させるのは、とてもありがたいと思います。(埼玉県・40代女性)”
https://www.asahi.com/articles/ASNBK5VDNNBFUTFL02P.html
[医療サイト 朝日新聞アピタル]
“保険適用の対象にならない治療は「自由診療」と呼ばれ、医療機関ごとに治療技術も治療費も異なっている。原則3割の自己負担が基本となる「保険診療」と比べて高額になることが多い。厚生労働省の研究班が2017年度に行った調査では、不妊治療にかかる1回あたりの平均費用は、体外受精が38万円、顕微授精が43万円に上っている。
患者の支援に取り組むNPO法人「Fine」が2018年に行った調査では、治療費の総額は「100万円から200万円未満」という回答が27%と最も多く、「300万円以上」という回答も17%ある。”
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/48722.html
[NHK政治マガジン 不妊治療に光明は差すか]
こうした報道を見てもわかるように、これまでの条件だった年収730万円では多くの人が不妊治療を諦めなければならなかったんじゃないか?って思うんです。
不妊治療の助成額は1回30万円に
1回あたりの助成額もアップしました。これまでの助成では初回のみ30万円で2回目以降は1回あたり15万円だったのが、1回あたり30万円となりました。
ただしこれも色々と条件があります。凍結胚移植っていう、体外受精してできた受精卵を凍結して移植する場合だとか、採卵したけれど、卵子が取れなくて中止した場合には10万円の助成になるとか。
また、男性が精子を精巣とかから取り出すための手術の場合にも30万円の助成金が給付されるんです。これは申請書類は女性のものとは別になるんですよ。
この辺りはやっぱり申請手続きなんかをする都道府県とか指定都市、中核都市の窓口に相談しないといけないですね。「わかりにくいから説明してください」っていえば、親切に説明してもらえると思います。
あ、ちなみにこの助成制度ですが、申請先が住まいによって異なるので注意が必要です。例えば東京の場合は八王子市は「中核市」となっているので、東京都ではなく、八王子市の窓口に申請しないといけないんです。神奈川県も「指定都市」の横浜市、川崎市、相模原市、「中核市」の横須賀市に住んでいる人は神奈川県ではなく、それぞれの市の窓口に申請することになります。
申請する前に自分たちの住所がどこにあるのか、申請先が都道府県なのか市なのか確認する必要もあります。
“埼玉県では、国の制度(不妊に悩む方への特定治療支援事業)に基づき、指定医療機関で特定不妊治療(体外受精・顕微授精)を受けた妻年齢43未満の夫婦を対象に、治療費の一部を助成をしています。
御不明な点は、お住まいの地域を管轄する各保健所へお問い合わせください。”
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/funinchiryo.html
[埼玉県不妊治療費助成事業]
不妊治療の助成回数は1子あたり6回に
助成の回数も生涯で通算6回までだったのが、今回の拡充策で子ども1人ごとに6回までとなっています。つまり、2人目も助成してもらえるということなんです。
また、40歳以上43歳未満の人の場合、助成回数はこれまでが生涯で通算6回までだったのが、子ども1人ごとに3回ということになっています。
でも助成される対象年齢はこれまでと変わらずで、43歳未満のままです。それから、この助成対象となるのは法例婚、つまり婚姻届が提出されている夫婦であるか、事実婚関係にある人たち、つまり婚姻届は出していないけれど、2人に婚姻の意思があって、法律婚の夫婦と同じように生活している人たちです。
事実婚の場合には提出書類が多くなるので注意が必要です。
まとめ
2022年4月からの公的健康保険による特定不妊治療が始まるまではこの「不妊に悩む方への特定治療支援事業」の助成金が活用できます。この助成金でも十分とはいえないのが現状です。
しかし、不妊治療を受けるにあたって、わずかでも自己負担が軽減されることは歓迎したいですよね!申請するときには書類もたくさん書かなければいけないし、診察を受ける病院とかクリニックは指定されているところでないといけないし、条件があるので、自分が住んでいる都道府県、指定都市、中核市の窓口に相談しましょう。
自分が住んでいる市が指定都市か中核市なのかは以下のリンクで調べることができます。
現在、指定都市となっているのは20市です。
http://www.siteitosi.jp/index.html
[指定都市市長会]
現在、中核市となっているのは60市です。
https://www.chuukakushi.gr.jp/introduction/
[中核市60市と候補市(中核市移行を検討している都市)12市の紹介]
不妊に悩む方への特定治療支援事業で指定医療機関となっているのはこのウエブサイトから検索することができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047346.html
[不妊に悩む方への特定治療支援事業 指定医療機関一覧]
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