ディスクシステム

2004/01/07 up
Last updated:01/02/2021 22:01:00

採用の経緯

ミツミ電機の栗原哲夫・調布事業所第三事業部長は1984年の夏ごろ任天堂に日参していた。同社の「クイックディスク装置」をファミコンと結びつけて売り込もうとしていたのだ。
この装置はミツミ電機から1984年3月に売りだされ、パソコンでは1984年5月8日に発売されたシャープの「MZ-1500」に初めて採用されたが、その後のパソコン不況により行き詰ったため、販路を拡大しようというわけである。
しかし、任天堂の反応は冷ややかだった。任天堂はこのころ、次世代媒体としてICカードを考えていたらしい。
ところが、ある日、任天堂から栗原氏にクイックディスク装置を採用したいとの電話が入った。
ICカードはコストの面で見送られたようだ。
もっとも、任天堂の要求は厳しく、1万5千円で販売するというものであった。PC用として6万円で売られているシロモノをである。

ディスクシステムのテクノロジー

クイックディスク装置はカートリッジスロットに挿入するRAMアダプタを通してファミコンに接続する。クイックディスク装置とRAMアダプタ間は10芯のケーブルで結ぶ。
クイックディスク媒体は2.8インチ、日立マクセルが製造する。1枚450円とカセットテープ並の値段(当時)に抑えている。容量は両面で110KByte、これを8秒でロードする。カセットテープの20~30倍高速である。
外観はフロッピーディスク装置によく似ているが、構造は全く違う。
クイックディスクは音楽用テープを渦巻状にし、その上を磁気ヘッドがレコード針のように動いてアクセスするものである。テープよりは早いが、ランダムアクセスができないので、フロッピーよりは遅い。
当時はフロッピーディスク装置が安くても10万円以上はしていたというから、フロッピーの廉価版として位置づけられよう。


RAMアダプタは、データ転送制御用LSIと、32KByteのプログラム用RAM、8KByteのキャラクタ用RAM、モニタROMから成る。データ転送制御用LSIは64ピンのカスタムチップで、ディスクのデータ転送を制御する。転送制御用のレジスタは本体のCPU(6502)が直接アクセスする。RAMもCPUがアクセスし、DMA転送(*)は行わない。電源投入後、本体のCPUはモニタROMのプログラムを実行し、クイックディスクからRAMにロードする。

(*)DMA
Direct Memory Access.
CPUを介さずにメモリにアクセスすること

参考文献
日経産業新聞1984年5月9日付
日経パソコン1985年12月30日号
日経エレクトロニクス1986年2月10日号(no.388)
刑部澄徹 片山聖一「ファミコンブームが崩壊する日」秀和システムトレーディング、昭和61年


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