日記 2024.10.18(金) 山の遊び方を教えてもらっている。
6時半ごろ目が覚める。昨日は23時半ごろ眠ったからまだ少し眠たい、けれど起き上がる。
洗面台へ行くとお母さんは毎週地域の公民館で行われるサロンへ行くためにお化粧をしていた。いい感じ、声をかけるとお母さんは嬉しそう。ほめてもらえるからお化粧も上手になると言っていた。やっぱりほめパワーってすごい効果があるんだなとつくづく思う。
7時過ぎ、朝ごはんの準備が整った頃にお母さんは日課の散歩へ。ご飯の支度が整ったから先にご飯を食べるとかそういうことはお母さんはしない。お父さんと二人でお先にいただきます。
昨日の夕飯のチャプチェに使い忘れた鶏むね肉と大根の間引き菜を炒め、お塩としょうゆで味付けした。間引き菜の大根は味が濃くて美味しいな。
ご飯を食べ終わったらみんな散り散りになる。今日はお母さんが洗い物をしてくれて、わたしは洗濯物を干してお風呂を洗う。近ごろはいつもの家事を午前中のうちにやっておくのが気持ちいい。
9時。静かな台所。電気も消えて、鳥の声だけ外に聞こえる。お母さんは畑仕事。いまお母さんは畑へ出るのが楽しいみたいだ。お父さんはアケビ採取の準備をしている。昨日のドライブの帰り道に見たアケビの場所へ行ってみると言っている。
お父さんと二人、昨日の大きなアケビのある場所を目指す。暗かったし、似たような景色が広がる林道のどの場所にアケビがあったかわたしはもう覚えていない。でもお父さんにははっきりと場所が分かっているようだった。迷うことなく昨日のアケビの場所へ着いた。
車を停めてアケビに近づく。アケビの実は熟すと皮がピンクになる。大きなアケビ、ぱかっとあいた皮だけ残り中の実は跡形も無かったが、このアケビの実はとんでもない大きさで皮も厚い。こんなアケビは見たことがないと興奮してしまった。はしゃぐわたしの隣でお父さんもうなずいていた。これはお母さんにも見せたいと皮を採取。アケビの実は三つあり、ひとつだけ口を開けていないものがあったのでそちらも持ち帰ってみることにした。ありがとう、いただきます。高枝鋏を持ってきてよかった。
実からたどって蔓を探していく。木漏れ日のある道路ばたのその場所、隣に沢があって少し谷になっているきれいな場所だった。赤いカエルがぴょんと飛び、土はふかふかの天然の腐葉土。
木に巻き付いた大きなアケビ実から蔓をたどっていくと太く大きな枝を発見。こんな太い枝見たことない、実が大きいわけだと納得した。落ち葉の積もった地面をすこしだけはがしてよく見てみると、アケビの蔓が地面に伸びてるではないか。まっすぐで細く、均等な太さの蔓は長い。根っこをはがしながら蔓をたぐり寄せ、たくさんの蔓を採取することができた。楽しそうにはしゃぐわたしにつられて杖をつきながらお父さんも山に入る。アケビの蔓がこんなふうに生えているのかとお父さんも興味津々、声をあげて喜んでいた。
アケビの蔓を根こそぎ取ろうとするわたしをお父さんが止め、程よいところで宝の城を後にする。こんな場所を見つけられて本当にうれしいし、これから毎年訪れるのが楽しみになるな。秋は山遊びがほんとうに楽しい季節。
家に戻りお父さんは通院のため出かけて行った。蔓で何をつくろうか、考えながら台所でくつろぐ。お父さんは13時ごろまで帰ってこないからゆっくりとお昼ご飯の準備をしよう。
お昼ごはんはぶっかけうどんにした。塩もみしたゴーヤ、トマト、青紫蘇、半熟卵をのせて。めんつゆに味噌を加えたらすごく美味しくなった。昨日のお昼ご飯の残りのナスの味噌炒めも出したらお父さんが美味しいと喜んでいた。
お昼ごはんのあと、お父さん特製アイスをもらう。お父さんが自家製の葡萄と水を容器に入れてアイスの棒をさし、凍らせたアイス。アイスというか葡萄氷なのだけれど、嬉しそうにわたしに渡してくれるのでいらないとは言えなかった。なんともヘルシーなアイス。
お母さんの車が去って行った。ばあちゃんが亡くなった年に買ったとか言っていたからもうずいぶん長く乗っていたようだ。実家に帰って車に乗る時はわたしもこの車に乗っていた。10万キロくらい乗っていると言っていたかな。大事に乗っていたからまた別の誰かの元へ行けるだろうということだった。
しばらくお世話になる代車の練習のためお母さんの運転でドライブに行くことにした。4km先のコンビニでカフェラテを三つ、お父さんにおごってもらって車で飲む。コンビニに停まっているといろんな車が来ては帰るのを見られるから飽きない。お父さんは素敵なレクサスに興味津々で知らない人に話しかけていた。上下黒のかっこいい女性と女性の乗った赤いスポーツカーに三人で釘付けになる。お母さん発明のカーカフェはけっこう楽しい。もう少しドライブを楽しみたくて遠回りして帰ることにした。いつもの道から外れて山の中を越えていく。助手席のお父さんの指示通りに走る。
お父さんのやりたいことリストの中に入ったコンポスト作り。むかしむかし使っていた容器がまだふたつ残っていた。明日は雨、今日のうちに場所だけでも決めておきたいということになったので三人で相談し合ってみる。毎日の生ごみを入れるからあんまり遠くてもということでひとつは庭の畑の一番いい場所に作ることになった。ここまで来たらやってみようということになり三人でスコップを持って穴を掘り、コンポストをすこし埋めていく。ふかふかのいい土ができるといいな、なんだかワクワクする。コンフリーがあったのを思い出しコンポストに入れてみることにした。コンフリーはコンポストの発酵を促してくれるらしい。
暗くなるまでアケビの蔓の処理をしていく。根の部分や節を整えていくのは楽しい作業。
夕飯はお母さんがサロンで頂いてきた残り物たちと家にある常備菜をお皿に盛り付けることにした。しゃんとした味付けのそうめん瓜の酢の物に栗ごはん、豚汁。すごくおいしかった。わたしのぼんやりとした味付けとはまったく違い、何十年も毎日台所に立ち料理をしてきたという経験が感じられる味がした。
わたしがお風呂に入っている時にお父さんが妹と笑いながら電話で話しているのが聞こえた。お昼にはお母さんがお兄ちゃんと電話で話をしていたっけ。きょうだいで楽しく電話し合える関係が今も続いていること、いいなと思う。
今日はお母さんの耳掃除をやってみる。わたしの膝に寝転がってもらって綿棒と耳かき、ピンセットを使って耳掃除。そう言えばわたしも小さい頃お母さんにやってもらっていたっけな。お母さんの膝にごろんと寝そべるのは好きだった。毛繕いみたいでなんだか楽しい。きもちいい、きもちいいとお母さん。喜んでもらえてわたしも嬉しくなった。
秋がこんなに楽しいこと、わたしはすっかり忘れてしまっていた。毎年9月、10月とあんまり調子が上がらないのは都会にひとり、いたせいかもしれない。実家では夏野菜でにぎやかだった畑が落ち着き、土の中のエネルギーをたっぷり受け取ったさつまいもが収穫時期を迎えている。銀杏や栗の実が落ち、柿が色づく喜びの季節。何にもしていなくても自然は喜びをおしみなく分けてくれている。秋は山に遊べ、そう言われているような気がする。
お母さんとお父さん、二人は田舎の景色が大好きで山や畑に囲まれて暮らしている。わたしの知らないことを知っている二人は田舎暮らしの先生でもあるかもしれない。ゆっくりのんびりとしたこの季節に、山の遊び方を二人から教わっている。