日記 2024.11.7(木) 冬至の日の衣替え。
今朝は寒かった。でもお父さんから朝冷えることを聞いていたからしっかりと対策できていた。おかげでどーんと構えていられたので慌てなかった。でも、布団から出るのがおっくうだ。
よしっと起き上がり台所まで走る。少しでも体温を上げたい。台所に立っているお母さんに寒いねーとしがみついた。たくさん着込んでクマみたいにふくらんだお母さんはぬいぐるみみたいで可愛い。脇の下に手を差し込む。あたたかい。末端が冷えるわたしは、昔から人の脇の下や足の間に手足を差し込むのが好き。
サバを焼いてくれるお母さんの横でお茶を淹れていく。今日はなんのお茶がいい?お母さんに聞いてみる。よく、よく考えてたいタイプのお母さんはこういう時すぐには答えず熟考する。せっかちなわたしは答えを待たずにぽんぽんといくつかの茶葉を入れる。ルイボスティーが好きなお母さんは大体ルイボスティー、と言う。今日もそう。言うと思ったからもう入れてあったよ。
お味噌汁とご飯とお魚とレンコンのきんぴらの残りの朝ごはん。ご飯がもう少ししかない。よし、今日は玄米を炊くぞ。
風は冷たいけれどよく晴れて気温も少しずつ上がってきた。お父さんはジャンパーを着てリハビリへ行こうとしていたけれど、暑くなってきたと言って薄い羽織りに着替えていた。
洗濯物を干しに外に出る。日差しがしっかりとあっていい天気。洗濯物も早く乾きそうだしなんだか布団が干したくなってきた。思い立ったらすぐにやる。お父さんとお母さんの布団をざーっと外に干してシーツやカバーを洗濯機へ。ついでに布団をもっと冬仕様にしよう。お母さんがなんだなんだ、どうしたどうしたと近づいて手伝ってくれた。
布団を干してお母さんの部屋がすっきりとしたのでこのままお母さんの服の衣替えも進めることにした。あちこちいろんなところに広がるお母さんの服たちを全部出して種類別に分けていく。
ちょっとひと息コーヒーブレイク。コンビニまで行ってコーヒーを買ってきた。縁側で日向に足をかざしてコーヒーを飲む。お母さんは庭から見える景色が大好きらしい。ばあちゃんもいつも同じ景色を眺めていたな。四方を山に囲まれた静かな場所。ここは本当に桃源郷だと思う、お母さんは言う。自分の住んでいる場所に満足できていること、本当にしあわせなことなのだろうなと思う。
さて衣替えの続き。お母さんの洋服は普段着、よそ行き、作業着の三パターンで構成される。1日に三回くらい着替えたりするお母さん。とにかく服をたくさん持っているし、シーンによって着替えたいらしいのだ。お母さんに聞きながら服をどんどん仕分けしていく。少しだけ捨てるもの、繕ったりするものも出て来た。楽しくなってお昼過ぎまで衣替えがやめられなかった。
お腹も空いたし一度休憩。レトルトのおかずを温めて塩もみにんじんだけ作る。いまは料理よりも早く衣替えの続きがしたい。ご飯を炊くのを忘れていた。一膳しか残っていないご飯をお母さんと分けっこ。この間買った焼き米も食べる。
お昼ご飯の後台所の仕事を少し。コンポストに生ゴミを捨てに行って中身をかき混ぜておいた。
気持ちよく太陽の熱を浴びる布団たちを見るとなんだかほっとする。干した香ばしいお布団で今夜は眠れるね。お父さんとお母さんを太陽のぬくもりでいっぱいに包んでね。
お母さんの持っている服たちを全部出した。お店屋さんができるくらいあるよとお母さんは言うけれど、本当にたくさんの服を持っている。思い入れのある服も多いようで見つけるたびにこれはこの時に買った服だとか、新婚旅行に着ていった服だとか教えてくれる。
冬物のニットを出しながら、いくつか素敵なものを見つけた。お母さんのお母さんであるおばあちゃんが作ったニットのカーディガンが目に留まった。グリーンでところどころにいろんな色の毛糸が混じるネップの糸で編んである。同じデザインの毛糸違いでみんなに編んでくれたものだそう。お母さんはピンク色を持っているからとわたしにグリーンのカーディガンを譲ってくれることになった。今年唯一買いたかったものがニットのカーディガンだったから嬉しかった。おばあちゃんの手編みとあらば嬉しさは倍増する。一生大事にしたいものだけを手にして受け継いでいく。わたしもいつか、このカーディガンを誰かに渡せるかな。手から手へ、そういうものが好き。
お母さんが編んだというかわいいグリーンのセーターも見つけた。お父さんに編んだけれど編んでる途中で着ないと言われたらしいこのセーターは誰にも着られていなくてなんだがさびしそうにしている。お父さんが帰ったら着てもらおう、きっと昔着ないと言ったことなんて忘れているだろうし、年齢を重ねていまならいい感じで着られるかもしれないから。
リハビリから帰ったお父さんに試しにセーターを着てもらった。色味がお父さんにぴったり。下に着ていたシャツともよく合い想像以上に似合っている。お母さんは糸を選ぶときにお父さんに似合う色はどれかなと考えたのだろうと想像する。
試着した姿をいいねいいねと褒める。明日歯医者に着て行くと言って毛玉取り器をかけだした。それはお母さんの手編みだよと言うと驚いていた。ブロックごとに編み目が変わるデザイン、よくこんな柄を編めたなと感心しているお父さん。確かにそう思う。何十年かの時を経て、ようやくお父さんに着てもらえるセーター。
今夜は玄米を炊く。玄米の新米を今年初めて炊く。玄米3合、8分つきの新米1合、8分つきの古米1合で炊いてみる。
美味しくできたひじきの煮物の残り、塩もみにんじん、ほうれん草のおひたし、インゲンの胡麻和え。お味噌汁はナスとお豆腐、レンコン、玉ねぎ、わかめ、チンゲンサイ。
久しぶりの玄米ご飯、美味しかった。やっぱりわたしは玄米が好き。せっかちなわたしはゆっくりと玄米を噛み締めて食べる食べ方も合っていると思う。おかずは少し、玄米をたっぷりと。
夕飯のあと、お父さんが柿をむいてくれる。近ごろお父さんが台所に立つことが自然になっている。柿アイスの新バージョンをやってみたいと張り切っている。葛粉の溶けないアイスをヒントに葛粉と寒天を入れて鍋で火を通してから固めてみることにした。うまくいくかな。
今日の衣替えの途中、カゴの本を見つけた。買ったものに日付を書くのがお母さんの趣味。本には1999年購入とある。45歳のお母さんはいつか作ってみたいなと思い買ったらしいがそれからカゴを作った形跡はなし。本棚にずっと置かれたままになっていたようだ。植物の蔓だけではなく、とうもろこしの皮やススキを編んだものもあってなかなか面白い本だ。作り方もわかりやすく図解が書いてあるのでこの本片手にわたしがカゴ作りをしてみようと思った。冬の寒い時期のお楽しみ。
そういえば今日は冬至らしい。ギリギリのところで衣替えができてよかった。お布団もふかふか、あたたかい洋服たちも並んだ。さあ、これでいつでも冬を迎えられる。