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今こそYahoo!きっず検定で夢小説を書いていた時の話をしないか?

皆さんは、夢小説を読んだことがあるだろうか。

そう、自分が好きな二次元キャラクターやアイドル等と同じ世界に住んでいるという妄想でキャッキャウフフする文章のことである(諸説あり)。

私は現在はいわゆる夢女子ではないので、最近の夢女子がどこで夢小説を読んでいるのか全く知らないのだが、少なくとも私と同世代の人間で過去に夢小説を嗜んでいたという者なら、こう答えるだろう……

「読んでた読んでた!占ツクで!」

占ツク、正式名称「占いツクール」とは、その名の通りオリジナルの占いを作れるサイトなのだが、実際には占いではなく夢小説を投稿するサイトとして機能している。

占ツク最大の特徴は、主人公の名前などを読者が自由に入力できる機能があることだ。まさに自分が主人公になれる、夢小説にうってつけの機能だろう。

そう、占ツクは平成の夢女子なら誰しもが通る道……

と、思うじゃん?

実はここに1人、占ツクを全く利用したことがない元夢女子が存在する。

ではどのサイトで夢小説を読んでいたのか?

そう、Yahoo!きっず検定である。

Yahoo!きっず検定とは、2009年からサービスが開始した、子供向け検定作成サイトである。
その名前の通り、Yahoo!きっずという子供向けYahoo!の中の一コンテンツだ。

検定というと堅苦しいが、要は選択式のクイズ問題を簡単に作れるというものだ。
問題が表示され、その下にだいたい2〜4択の選択肢が表示され、次に進む。記憶が定かではないが、選択肢によって次の問題を分岐させる機能もあったようななかったような。

そしてこのきっず検定で、なぜか一部夢小説が投稿されていた。本当に理由は分からない。
強いて推測するなら、当時夢心に目覚め始めた多感なきっず達が、親の許可のもと閲覧することのできるほぼ唯一のサイトがYahoo!きっずであり、その中でオリジナルのコンテンツを作れるツールがきっず検定だけだったからだろうか。
「選択肢を選ぶ」という読者側の能動性が要求される点も、夢小説に適していたのかもしれない。占ツクほど夢小説に特化した機能はなかったものの、夢小説特有の没入感みたいなものは得られる構造になっていた。

そして私は、このYahoo!きっず検定で、夢小説を読んだり書いたりしていた
確か小学校3年生くらいのことだったと思う。

もちろん、最初は夢小説が読みたくてきっず検定に触れたわけではない。純粋に検定の機能を楽しんでいた。
けれどもある日突然、夢小説が目に飛び込んでくる。なんだこれは!?なんだかよく分からないけど胸がドキドキする……楽しい……!!
かくして私のようなきっず達は、「夢小説」という概念に初めて触れるのである。

ちなみにどんな夢小説が主流だったかというと、当時の某国民的男性アイドルグループの夢小説が大半だった。いわゆるnmmnというやつで、今なら非常にセンシティブな取扱いが要求されるジャンルである。が、当時のきっずにそんなモラルはなく、伏せ字とかもなく普通に氾濫していた。

ただ逆に、エロ要素も全くなかった。きっず向けサイトなのでエロいのは弾かれるのである。
なので極めて健全な内容の不健全な夢小説がたくさん溢れているというよく分からない状況だった。

私自身は、当時まさにその某国民的男性アイドルグループにドハマりしており、そのうちの1人のメンバーにガチ恋していたので、それはもう夢小説にのめり込んでしまった。
そして当時は文学少女でもあり、とにかく物語を読むのが大好きで、自分で話を書くこともあった。特にファンタジーが好きだったので、結果、某国民的男性アイドルグループのメンバーと一緒に魔法の世界を駆け回るファンタジー夢小説が生成された。今考えると意味不明すぎるが、当時は確かにめちゃくちゃ楽しかった。

このエピソードは個人的に「他人にギリギリ話せるラインの面白黒歴史」としてよくオタク友達に話している。毎回大ウケするので、知り合って間もないオタクとの会話のツカミとして非常に便利だ。

しかしその度に少しだけ寂しい気持ちにもなる。
というのもこのきっず検定というサイト、かなり前にサービスが終了し、今では跡形も残っていない。
今はどれだけ頑張っても当時私が読んだり書いたりしていた夢小説は見つけられない。だからこそ安心して他人に話せるのだが、確かに自分がのめり込んでいたはずの場所がもう存在しないというのはやはりどこか寂しいものだ。

なぜ今こんな記事を書いているのかと言うと、インターネットの皆様に、こういうロストメディアの存在について想いを馳せてほしいと思っているからである。

昨今では「デジタルタトゥー」という言葉もあり、「インターネットに黒歴史を残すと一生消えないぞ」というイメージが強い。実際そういう側面があることは間違いない。

しかし同時に、ある日突然泡沫のように消えてしまう儚いインターネットも存在するのである。
インターネットの永続性ばかりが強調される昨今、むしろこのインターネットの儚さ、脆さにも目を向けてほしい。

このnote記事だって、いつか消えるかもしれない。完全に忘れ去られるかもしれない。

それでも、誰かの心の中に残ってくれたら、それはまだ生きている。

Yahoo!きっず検定にあった夢小説も、誰かが覚えている限り、生きているのだ。

Twitter(現X)で「きっず検定 夢小説」で検索してみると、いる。私みたいな経験をした人が。たくさんという程ではないが、やはり私が見たのは幻ではなかったのだ。
こうして失われたきっず検定の夢小説について呟いてくれる人がいることが、すごく嬉しかった。

この記事を読んだ人。よければ、あなたの中の「失われたインターネット」について語ってほしい。
みんなで儚いインターネットを振り返ろうよ。懐古厨上等。

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