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【事例】地元が愛する海の家を地域への愛着を生み出す活性拠点に「TORIKKA TABLE & STAY」


Client: Our Own Project
Project Year: 2023〜

淡路島の洲本市五色町鳥飼浦の公営の海の家「新五色浜県民サンビーチ」を改修し1Fはレストラン、2Fは1組限定の貸別荘として再生しました。当社直営の施設として、企画から運営までのすべてを自社で手がけています。

TORIKKA(トリッカ)の名前の由来はこの地域の地名「鳥飼浦(とりかいうら)」から。素朴でのんびりした地域の空気感を壊すことなく、淡路島ならではの豊かな食材と美しい景色で何度も帰って来たくなるような拠点となることを目指しています。

高齢化がすすむ一方で、外部からの移住者受け入れにも消極的である昔ながらの地域特性も踏まえ、一過性の観光客やハードルの高い移住者ではなく、まずは長い目線で地域に愛着を持つ人を増やす=地域力の底上げを目指しています。

Points
・元公営の海の家を飲食店・宿泊施設に再生
・淡路島の豊かな食材を生かした食体験の提供
・プライベート別荘ならではの上質で豊かな空間設えと1組限定ならではの柔軟なおもてなし
・自社直営店として企画から日々の運営までを一括して実施

プロジェクトの背景

対象の建物は元公営の海の家で、市から委託された町内会が夏の間持ち回りで運営を行なっていました。コロナの影響で3年間閉鎖した後、市は町内会の高齢化のため運営再開は難しいと判断し取り壊しを決定。町内会は、地域にとって思い入れのある場所であり長く海辺の安全を見守ってきた海の家を残したいと、地域に縁があり京都で場づくり・運営の実績もあるNINI inc.に建物の活用提案およびその運営計画を依頼。並行して、市に取り壊し計画の中止を打診し協議を重ねました。

2023年地域の活性拠点として運営する目的で、建物は市から町内会に譲渡され、建物の活用継続、NINIへの運営委託が決定しました。

立ち上げまでのアプローチ

NINIオーナー姉妹の祖父生まれの地であり昔から馴染みの場所であった五色町鳥飼浦。夕日百選にも選ばれるほど美しい場所であるものの、西風がとても厳しく昔からビジネスには向かないと言われたエリアです。しかし昨今の新しい働き方に伴う地方への興味の高まり、関西エリアからのアクセスの良さ、そして2025年に控える大阪万博の余波を考えると、海を目の前にした唯一無二のロケーションや、周辺の素朴でのどかな環境は可能性に余りある事業ポテンシャルと感じました。

一方で、高齢化がすすみ、外部からの移住者受け入れにも消極的である昔ながらの地域特性を踏まえ、一過性の観光客やハードルの高い移住者ではなく、まずは長い目線で地域に愛着を持つ人(関係人口)を増やしながら地域力の底上げを目指すことが必要と判断。愛着醸成のきっかけとなる淡路島の豊かな食体験を広く提供する1Fの飲食店、そしてそれぞれの「島の別荘」として何度も帰って来たくなる1日1組のプライベートヴィラ(貸別荘)を企画しました。

地域への愛着を持つ入り口となる食体験「島の食卓」
地域へ何度も足を運ぶきっかけになりうる大きな要素のひとつは、その土地での食体験だと思います。古くから温暖な気候に恵まれた淡路島は全国的に有名な淡路島玉ねぎを始め、新鮮な魚介類、農作物、畜産物まで豊かな食材に溢れ、かつては御食国(みつけくに)と言われたほどおいしい食材の宝庫です。TORIKKAではこの島の豊かな食材そのものの魅力を引き出し、地域への愛着醸成のきっかけとなる食体験を提供しています。


1階のレストラン TORIKKA TABLE では、季節ごとに島の食材を取り入れながら素材自身のもつ魅力を引き出すピザやパスタ、アラカルトメニューを提供します。店内のどの席からも目の前を海を眺め、飾らないカジュアルな雰囲気で食事を楽しめるよう海側の壁はすべて窓ガラスに改修しています。

2階の1組貸切宿 TORIKKA STAY では、TORIKKA TABLEからシェフとスタッフが客室に伺い、季節の野菜や海鮮を含む「島の別荘での食卓」をその場で仕上げて提供する食事オプション”プライベートダイニング”を用意。長い時間を過ごす2Fでの滞在では、料理はもちろん、テーブルを囲んでゆっくりと時間をかけて楽しんでもらえるような包括的な体験を大切に考え、器や、お花、流れる音楽や照明などを含めた食卓づくりをしています。


自宅のようでいて、非日常の豊かさを追求した空間デザイン

大切にしたのは「島の別荘」という、非日常ながらも、もうひとつの自宅のような豊かで飾らない空気感をつくること。
木材、漆喰、レンガなど温かみのある天然素材をはじめ、柔らかい曲線を用いた壁や天井を空間に取り入れることで、ゆったりと落ち着く住空間をつくりました。外観は、古びた看板も含め全く手を加えず、これまでと変わらず鳥飼の「海の家」が佇む海岸の景色を残しました。


プライベートな別荘ならでは滞在体験のデザイン

別荘の室内には緊急連絡用ipadを除きテレビなどのデジタル機器、時計は置かず、代わりに薪ストーブや、海の見えるバスルーム、薪式サウナ、アナログレコードプレイヤーと360°スピーカーなど、別荘だからこそゆっくり楽しんでほしい豊かで上質な滞在体験を用意しました。


大切な記念日でのデザートプレートやケーキ、お花のご用意、ご夕食のアレルギー対応、お子様メニューやお子様用備品など、1組限定ならではの柔軟なおもてなしに対応。ご予約時にはできるだけご希望やリクエストをお聞かせいただけるようメールによる事前ご案内・ヒアリングも行っています。


地域との連携

一般オープン前に地域の方々へ向けた地域内覧会を実施。老若男女さまざまな方が訪れ「残した甲斐があった」などのうれしい言葉もいただきました。


春には地域で夕日を楽しむイベント「とりかいアワー」を実施。近隣の事業者様にも出店していただき、約60名ほどに参加いただきました。ここを訪れる方々だけなく近隣住民自身がこの場所に愛着を持ち誇りになるようなそんな場所を目指し、継続していきたいイベントです。

4-5月にはゲストの要望があれば近隣の農家さんによる玉ねぎ収穫体験を提供。農家さんと話しながらとれたての玉ねぎのレシピを教わるなど、地元の方との交流やローカルな体験として定着しそうです。

プロジェクトチーム

企画・運営・デザイン全般:株式会社NINI
建築設計:株式会社コンパス建築工房