鯨波
200x年、ある冬の日、
新潟から、日本海沿いの列車で、京都に行きました。
仕事なら、飛行機で伊丹に飛ぶのですが、私的な旅行だったので、
日本海を眺めながら、列車で行こうというわけです。
特急「雷鳥」が、越後線、信越線、北陸線、湖西線経由で、
6時間ほどかけて、京都に行きます。
因みに今は直通がなく、金沢で「サンダーバード」に乗り換えますが、
名前を日本語から英語に変えただけで、もう一つ、納得できません。
新潟で、「雷鳥」のがらがらの自由席に乗り、出発します。
暫くは、越後平野の田圃の中を走りますが、
柏崎の鯨波(げいは)港を過ぎた辺りから、海沿いです。
冬の日本海は北の風が強く、大波の頭が飛ばされて白い飛沫になり、
鯨が潮を噴いているかの如くです。
灰色の海に浮かぶ無数の鯨波、日差しを閉ざす一面の低い雲、演歌の世界です。
ヒュルル~・・・等と頭に浮かびますが、
目の前の監視人殿(妻)を見て、現実に戻るのです。
直江津、糸魚川、滑川を過ぎ、3時間ほど海を眺めると、
富山の手前から内陸よりになります。
酒を飲みながら、駅弁を食べて、うとうとしていると、やがて、
琵琶湖を西岸沿いに南下し、京都に着きました。