見出し画像

初秋というより晩夏みたいな9月の長野旅(1)

長野には所用も兼ねてちょこちょこ行くのだが、いつもついついあれも楽しかったな、これも楽しかったな、などと思いつつ、ついつい日々の忙しさにかまけ書くのを忘れてしまい、ぼんやりした脳内映像と、日付と位置情報が残ったjpgファイルが残留してしまうだけで、そのまま日々を過ごしてしまう。簡単な日記はつけているのだけれど、もう少しまとまったボリュームに残しておきたいので、書いておくことにしたいと思います。
また、これから長野にいかれる方の旅行の工程を考えるのに少しでも参考になれば…(今回本当に良い宿だったので!)

2024年9月27日、金曜日になりかけ多くの人々がクタクタになった身体を横たえ、最後の平日のための英気を充電している未明。夜逃げをするようにまとめた荷物を持って仕事帰りのクタクタの身体を叩き起こし、車に乗り込み高速に乗る。四六時中寝ていたい人間なので、夜中に出発するときはいつも不機嫌なままムスッとした顔で出発するのだが、前から肩の後ろへ星が飛んでいくようにすり抜けていく常夜灯の光をぼんやり眺めていると、次第にウキウキワクワクしてくる。この心の浮つきが好きだ。
運転はおまかせして、私は冴えてきた目でスマホで映画を見る。今回は旅に関する映画を少しでも多く見てやろうと思い、『旅のおわり世界のはじまり』『ダウン・バイ・ロー』『オールド・ジョイ』をダウンロードしていた。全部見れるとは到底思えないが、気持ちが大事だ。旅してるぞという感じを出していきたい。鞄にはちょうど読んでいたコーマック・マッカーシー『越境』を入れていた。山に行くから、オオカミを追って山を越える小説はぴったりだ。これまた10ページも読める気はしてないが、何事も形から入るタイプである。
まずは『旅のおわり世界のはじまり』を見ることに。黒沢清の映画の中でもだいぶと変な映画ではあるのだけれど、監督のフィルモグラフィ上いくつか作られている女性映画シリーズの中でも結構好きな作品。無茶振りをされても、気だるげな表情を切り替えてテレビ向けの笑顔でなんとか体当たりで取材をする前田敦子扮するテレビリポーターを見ながら、旅のはじまりにピッタリのチョイスだと自画自賛する。前田敦子がえげつない遊具に乗せられてきたあたりで、だんだん眠くなって、意識が曖昧になってきたので、寝る。前日ちょっと仕事を頑張ったからこれくらい許されてほしい。

テレビリポーター前田敦子がひどい目に合うシーン(黒沢清『旅のおわり世界のはじまり』より)

少し寝ると日が昇り始め、関西を発った時間よりも涼しくなっていた。向こうはまだ深夜も半袖短パンでちょうどいいくらい気候なのだが。岐阜に入ったあたりから涼しくなった気がする。
中央道原PAのデイリーヤマザキに入る。ぶどうのジュースや栗のお菓子やニッチローおすすめのお土産など、関西にいてはお目にかかれない諸々に目移りするし、こういうのテンション上がる。熱いコーヒーを買い、持ってきたクリームパンとへにゃっとなったホットドッグを腹に収め、ぬるくなり始めた黒い液体を流し込む。おいしい。子供の頃から大人になった今でもサービスエリアで食うご飯は特別感があって楽しい。
朝7時30分。第1の目的地、千畳敷カールに登るべく、ロープウェイ乗り場に向かう駒ヶ根の菅野平バスセンターに。まだ早朝のため、ガチ登山スタイルで、全身ノースフェイスやモンベルやらで身を包んだ、月1回は低山で脚を慣らしてます、みたいな人があちこちに車を駐めて、早朝とは思えないテンションで笑い声を上げたり、伸びをしたりしている。対する私は、上はプルオーバーのアウトドア仕様のナイロンジャケットを羽織ってはいるものの、下は家から出たままグラミチのハーフパンツなので、浮いているような気がしてくる。山舐めとんのか。
バス停に並んでしばらく待っていると、だんだん登山客と思しき人々が増えてきて、バスがやってくる。あまりの人に、乗り切れるのかと心配になるほどで、駐車場にいた難しい顔をしておじさんがカウンターで数え始めた。どうやら臨時のバスは出るようだが、それにしてもすごい人。なんでこんなに登山の人が多いんだろう…と思いかけるが、いやそりゃ登山なら朝早くいかないとダメじゃんね、と思いなおす。
バスに大きな登山リュックを背負った人々と一緒にぎゅうぎゅうに押し込められ、出発。私もそのぎゅうぎゅうの中、気持ち肩をすぼめながらスマホを眺めることもままならず、外を見やる。ロープウェイまでは2~30回くらいカーブを曲がった気がするのだけれど、どのカーブもこの勾配の細い山道を良くもこんな長い車体で登るな…と感心する道の狭さで、伊那バスの運転手さんの技術力の高さに舌を巻く。車酔いしやすい人は酔い止めマストである。
ロープウェイ乗り場のあるしらび平駅に着くと、流石に涼しい。体感20℃くらいだろうか。押しくら饅頭状態だったバスから出ると、開放的で空気がぐっと美味しい。これが駒ヶ岳か…とロープウェイの続く山のてっぺんを手でひさしを作り眺めてみるが、やや天気が悪い。このあと3日間ずっと天気が良くなかったのだが、まあ天気が良くないときもあるよね!山だし!!とこのときは特に心配はしなかった。
ロープウェイに乗りこむ。ロープウェイも何度か乗ってきてはいる(経験者ヅラする)が、結構大きいがっしりタイプで安心感がある。
それにしてもすごい勾配。隣に立つおじいさんとおばあさんが、やや大きめな「わあ、すご~い」「おお」などの感嘆と喋り声の合間くらいの声を発するので、アナウンスの音が聞き取れなかったが、どうやら30度とかそんくらいの角度が最大でもあったらしい。こんなところにどうやってロープウェイを作ったのだろう。2000m近くまで達するロープウェイを設置するための巨大なロボを作るための巨大な工場を作ったのかな…とかなんとなく想像してみるなど、くだらない空想をしている間に千畳敷駅に到着する。

よくこんなところに作ったな…標高2496って書いてんじゃん

標高2612m。流石に涼しい通り越しやや肌寒い。グラミチのハーフパンツで来たことをここでやっと後悔し始めるが、実際ぐるりと遊歩道を回っていると肌寒さも忘れていた。
それよりも天気だ。ロープウェイで揺られているときから薄々思ってはいたが実際に来るとめちゃくちゃに曇っている全く見えない、下が。

見事に霧。靄?
これはこれで幻想的なのだけれど…

NOパノラマビュー。残念。めちゃくちゃ天気が良ければ北岳や富士山が拝めるとかそんなことを聞いたのに…しかし、やや肩は落としたものの、朝靄に包まれた山の威容は厳しく、白いもやもやに山の肌は幻想的と言ってもよくこれはこれで悪くない非日常感があるし、普段地上ではお目にかかれない高山植物は目に嬉しい。

でかい岩、大好き。
シラタマノキがかわいい。桜色で品がある。

黒い小さなネズミの死骸が脇に転がっていた。なむなむと手を合わせつつ、少し観察すると、少しモグラっぽい。もしかしてヒミズなんじゃないかと思い帰って調べたらそうだった。目にした姿は命が事切れた姿だったが、魂がまだあったころは雪の上を元気に走り回っていたのかな、などと小さいからに蓄えられていたエネルギーについて考えたりする。(ちなみにヒミズとはこんなのです。かわいいね。)
目的の千畳敷カールまでたどり着くも、雲なのか霧なのか、不分明なもやもやは晴れず、仕方なくロープウェイ駅の食事コーナーに。実はしらび平のロープウェイ駅でも販売されていて、もっと前には駒ヶ根駅近くで「すずらんソフト」と書かれたかわいいソフトクリームが描かれた小さいトラックが走り去るのを見かけてから気になってはいたのだが、今この最高のロケーションで食ったらよりうまいのではないだろうか、とすずらんソフトを購入。

びっくりするくらい美味しい。乳の本来の甘み!!という味がする。

もうめちゃくちゃ美味かった。いわゆる普段食べるソフトクリームとは全然違う。純粋な乳の甘みがぐわっと味覚を襲って来て、味がくどくなくスッキリしている。なんだこれ、めちゃくちゃ美味しい。おかわりしたい。これの食べ放題をバルバッコアかビッグボーイに用意してほしい。ずっと食べてられる。牛さんありがとう…ホットコーヒーも頼み、「2612」と標高の書かれた紙カップに唇をつけ猫舌なためハフハフしていると、白髪のステキな60~70代と思しきスラリとした小柄な女性が3つほどホットドッグを運んできたので、すごい食欲だ…とそのバイタリティに感心するなどした。

ちゃんとコーヒーも美味しくありがたい…

帰りのロープウェイが来る頃には、往路であまり見られなかった、私のような一般山観光客スタイルの人々がメインになってきていて、皆一様に靄のかかったカールを眺め、嘆息し、足腰が弱ってきているお年寄りなどは大人しく室内に戻ってきていた。
帰りのロープウェイは、定員オーバーであぶれてしまい、あぶれた中の中国からと思われる観光客のおじさんがカメラを乗客に向け、楽しそうに写真を撮っていたので、私もピースすると、いーね!という感じのリアクションをしてくれた。多分、どっかのSNSに駒ヶ岳ロープウェイの写真でアホ面下げてピースしてる冴えない眼鏡がいたら、私である。それにしてもこのロープウェイ、まあまあ速い…

滝の名前、聞いてなかった…

うねうねしたカーブにグラグラ揺れて山の下に戻り、近くの道の駅的なお土産屋さんで軽く買い物して、くるみゆべしと野沢菜おやきを買う。長野に行くとなにげに買っちゃうものの一つとして、くるみ系のお菓子がある。来世はリスになりたい。
買い物を済ませると、そのまま明治亭に。駒ヶ根名物ソースカツ丼と馬刺しをいただく。ソースカツ丼のソースは食うまでは関西のソースみたいなものを想像していたが、ちょっと違う。りんごだろうか、スッキリした酸味と優しい甘さがあって、くどくない。関西のソース文化が実はそんなに好きではない(別に嫌いではないが、何にでもソースかけりゃいいってもんじゃねえぞという気持ちがある)が、これはいくらでもいただけてしまう。ついついかけてしまう。馬刺しも美味しくて、しっかりした肉の旨味と、脂の溶け方が優しく、ピンクの色が下の中で溶けてじゅんわり広がるような。お馬さん、ありがとう…

りんごの酸味的なものが利いたタレのおかげか、スッキリいただける。
お新香についてきた野沢菜漬けも美味い。
桜肉、大好き。このあとほんのりニンニクがずっと口の中に残り続けていた…

このまま養命酒の工場に行きたかったのだが、生憎の臨時休。もっと別の臨時にしていただきたかったが仕方ない。ソースカツ丼大盛りでも良かったかも…などと後ろ髪を引かれつつ、美ヶ原へ。駒ヶ岳から降り、黄金色になり頭を垂らし始めた田んぼや工場やいかにもロードサイドなお店たちを過ぎ、また登ると2000m近くに。
よし、今度こそアルプスの山々や浅間山を一望できる…はずが、またしても曇り。

なんということでしょう…
アザミをチュウチュウするイチモンジセセリ。
お食事中だったが、快く写真を撮らせていただいた。多分…

宿のチェックインまでまだ時間がある。ちなみに、今回宿泊するのが「山本小屋ふる里館」。後で同じことを書くのだけれど、本当に素晴らしい宿でした。美ヶ原へ来られるのであれば、是非とも泊まっていただきたい…
宿の駐車場に隣接する牧場(というか、宿が牧場の一部みたくなってる)に足を運ぶ。高原一帯が牧場になってるだろうし、そんな都合よく牛など現れるものか…と思いかけるも、結構すぐに牛が塩を舐めに集まっているのを発見。
はい、ドン。

さらに、ドドン。

かわいい。人間たちがスマホで写真を撮り、かわいいなどと嬌声を上げる様を見ているのか聞いているのかすらわからないが、我関せず、といった佇まいで黙々と塩を舐めたり、水を飲んだり、糞をボトボト肛門から排泄したり、尿をジョボジョボボボボと排出したりしている。人間のつまらないあくせくした労働なんかよりも立派なことをしているし、何よりものびのびしていて、良い。もちろん彼らだって人間の都合で都合よく自分たちの作ったものを「いただきます」などと言いながら掠め取られているのかもしれないが、そんなことに頓着してないような鷹揚として品がある。ありがたくいただかねば…と人間らしい月並みなことを思った。そして、そんなことを思う人間の月並みな思考など解せずボドドドドと排尿は止まらない。

ずっと見てられる。

ところでさっきから美ヶ原、やたら若い人が多い。てっきり「ハイキングが趣味です」的な初老の夫婦や「2年前からアウトドアやってます」的な30代後半の男性が多そうだと思って来たら、もちろん実際それらしき人も多いのだけれど、パンツをローライズにして銀色のピアスを開けた、ピッタリとしたサイズ感のシャツにヘソか肩が丸出しになった、「NewJeansかLE SSERAFIM車で爆音でかけてます」的な20代女子が多数派だ。一瞬来たところを間違えたのかと思うほどで、あとに聞いたところによると、TikTokでバズったらしく、実際確認するとバズったらしき動画が見つかった。若い人が多いのはいいことだ、と思おうとしたが、急に大声で「うっそ~!こんなとこで会うとかすごいじゃん!マジィ?!」などと叫ぶもんだから、目の前の牛が驚かないか、牧場主でもないのに勝手にヒヤヒヤしてムッとする。挙げ句、犬を連れたミニプードルを連れてきた中年夫婦まで来て、なんだこのアホどもは…と観光地化された牧場を楽しんでる身でありながら、観光地化された牧場にやってくる身勝手な人々を嘆くなどした。私も都合のいい人間である。
一度戻ってチェックインを済ます。受付の人がみなさん朗らかで、ここで働いているのが楽しいんだろうな…というのが伝わってきて、この時点でこの宿への評価がもう☆5になっていた。
大浴場やナイトツアー・早朝の雲海ツアーなど、一通り説明を受け部屋に荷物を運び、またぽてぽて牧場から王ヶ頭ホテルへ伸びていく道を歩く。左には大きな高原が広がっていて…と書こうとしたが、右にも高原が広がっているので、うまく説明できないので、ここは写真で済ませようと思う。
王ヶ頭方面へ歩いていくと左側はこんな感じ。うっすら雲海らしきものが見えたり、流れてきた雲がスーッとドライアイスみたいに舞っていた。

右側はこんな感じで、テレビ塔が見える。あのテレビ塔がないと、松本市の人などあの辺一体はテレビが見られなくなるらしい。広々と続く高原の中に、デカデカと人工物が立っている風景はちょっとSF的で、見とれてしまう。

奥に見えるのがテレビ塔で、この近くに王ヶ頭ホテルが。

しばらく歩くと、ポニーが放牧されていた。あとに聞いた話によると、飼い主さんが期間限定でポニーを放してやるらしく、餌やり体験の人参だけで自分たちの食費を賄えるほどに稼いでいる、ちょっとした名物ポニーらしい。人参をやると、人参への気持ちがすごすぎて、BE MY BABYみたいな写真が撮れてしまった。

人参への食いつきがすごい

もっとくれくれ、と地面を蹄で掻く様を見ると、馬なんだなあ、と思う。馬だから当然そうなのだけれど。人参への食いつき方が可愛らしく、延々とここで時間を潰せそうなほど愛嬌がある。じゃあ帰るね、土佐ろうと人参をあげるのをやめようとすると、この顔である。

シュン…

シュン…とすな!!ずるいだろ!!もっとあげたくなっちゃうだろ!!
顧客の心理をよくわかっているポニーちゃんであった(ちゃんというのはメスであるからで、実は画面の外に息子ポニーがいる)。
日が沈み始め、高原を黄金色に照らし出し、牛の毛艶も煌めき出すさまは、なんとも圧巻で、ここで「もうここで旅行終わってもいいな…」と思えるほどの充実感があった。

宿に戻る頃にちょっと雲海っぽくなってた

宿に戻ると、夕ご飯の時間。このあと基本的に美味いしか書いてない。だって全部美味しいんだもの…
まず食前酒にワインとぶどうジュースを割ったものをくいっといただく。
サラダに信州サーモン。いつも長野来るたびに思うのだけれど、長野って山しかないイメージがあるし、実際山しかないんだけど、いやでもちゃんと美味いんですよね、サーモン。これ食えるなら、マグロとかいいかな、みたいな気持ちになる。

信州サーモンのサラダ。

ちょこっとサイズででてくるお蕎麦も当然美味しい。冷たく締めてあって、スルッといただける。サイドでいただくには、しっかり美味しすぎる。

岩魚の炭火焼。久しぶりに川魚をいただいたが、身がホクホクで、骨も頭も余すことなくいただけて、塩がまたお酒(大雪渓という辛口のもの)に合うこと。食堂入口の暖炉でなにか焼いてあるな、と気になっていた正体がこれであった。宿の主人の取り計らいで骨までいただけるようになってるらしい。嬉しい。

蒸し物は、餡とうなぎが乗っかった下に、黍餅を練ったものが。優しい味で、これまた辛口のお酒に合う。なんてことだ。

目の前に真っ黒な四角い岩の塊が置かれ、熱々になっている。富士山の溶岩らしく、この上で信州牛の焼き肉を焼いて食べた。まあもう書かなくても良さそうなのだが、当然美味しい。


美味しいなんてもんじゃない。う、うまーーーーーッ!!!!と叫びたくなるというか、実際声に出して言っちゃう美味しさ。とろけるような甘みとつつみこむようなまろやかさ。何なんですかコイツは…安曇野のわさびと塩でちょちょっといただくと……そりゃ美味しいに決まってんじゃん!!
改めて牛に感謝である…
天ぷらも細かい作りで、栗の形を模した(下写真右奥)中にホタテが入った天ぷらも美味しいし、椎茸にグラタンが詰められたやつがまた丁寧で、ちょっと真似しよう…とパクりたくなるレベル。すごい丁寧。

と、舌鼓を打ってうっとりして、いい感じに腹が満たされてきたタイミングで店員さんに声をかけられる。
「実はこのあと栗ご飯をお出しするのですが、こちらのご飯おかわりできまして、お客様が「大盛り」といえば山のようにお茶碗に持った栗ご飯ヲ出すこともできますが、いかがいたしましょう…?」とのこと。
その勝負、受けて立とうじゃないか。程よくお酒も効いてきたので、調子に乗る。実際まだ腹にははいるし、何より栗ご飯は大好物だ。いくらでも食える。
「マンガ盛り的な…過剰な大盛りでお願いします!!」
その結果がコイツである。

ホンマにやるやつがあるか!!とツッコミを入れつつ、本当にマンガ盛りで出てきたのでテンションが爆上がり。一口いただく。ほっこり滋味深い甘さで、お込めの炊き加減がまた最高。栗の香りが鼻に抜け、腹の具合とかどうでも良くなる。食ってやる。実際、すぐに平らげてしまった。いやだって美味しいんだもん…
ここでまた、先程の店員さんが「もう食べられたんですね…」と空になったお茶碗を下げつつ、またこのような提案を。
「実はパフェも大盛りにできるのですが…」
受けて立とうじゃないか。舐めるなよ、この岸辺露伴の胃の容量を…
で、出てきたのが、はい、ドン。
アホか。アホの量だ。笑ってしまうが、持ってきていただいたときにまた悪魔のささやきが。
「実はソフトもおかわりできまして…」
たしかにフードロスとか問題だもんね。こんな山まで食料運ぶの大変だろうし、できるだけ片付けたほうがいいよね…いや加減ってもんがあるやろうが!!

煽って去っていく従業員の方を尻目に、匙でパフェの上のモンブランをパクリ。美味しい。
その下のソフトクリームをさらにパクリ。うんま!!!!栗ご飯で腹9分目くらいだったが、どうでもよくなった。駒ケ岳ですずらんソフトを食べたとき同様、乳本来の甘味がダイレクトに舌へと伝わり、生クリームのようにわかりやすい旨味に頼らない、力強くも優しい風味が突き抜ける。くどさとかなく、さっぱりとしたからコクのある旨味だけを残して食道へ滑り落ちていく。うますぎる…新鮮さは他には替えられない、料理の重要ファクターだよ…牛さんありがとう…とスプーンを動かしていたら、いつの間にかグラスの中が空になっていた。なんてことだ。
先程の店員さんを呼ぶ。
「すみません、ソフトのおかわりを…」
「うわあ!ホントに注文するんですね!!」と持ってきたのがこちら。

加減って言葉知ってます?
しかし、あっという間に腹に収まってしまった。なんてことだ…(2回目)
パンパンのお腹とサービスの野沢菜入のおむすびを抱え、部屋に戻り、誰もいない大浴場をあとにし、圧倒的な満足感とともに布団で夢に落ちていったのであった…であった…

<つづく>

いいなと思ったら応援しよう!