結局現地で食べる名物が一番おいしい
『ラーメン発見伝』という漫画で、作中に登場する芦沢という人物(ラーメン店オーナー兼ラーメンコンサルタント)が「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」と語るシーンがある。
↑『ラーメン発見伝』の芦沢。
芦沢は過去に、鮎の煮干しを使った「完璧」なラーメンを客に理解されず、香りを感じないほど濃厚にしたラーメンを出したところ「鮎の香りを感じる」と大盛況になったという経験をしている。
前述の発言は、そのような「情報を鵜呑みにする味の分からない客」のことを馬鹿にしたものである。
作中では「いいものを作れば成功するとは限らない」という現実が主人公に突きつけられるシーンだが、ここでは飲食店の経営の話や、情報に踊らされることの浅はかさについて書く気はない(私は難しいことは分からないので)。
単に「うんうん、情報って超大事だよねワカル〜☆」ということだけを書きたかったのだ。
前述の漫画では、真にものの良し悪しを判断できる人間は少なく、多くの人間は良し悪しを「情報」で判断してしまうということが、芦沢の口から語られている。
私が何をいいたいかというと、私も真にものの良し悪しを判断できないので、アピールポイントをちゃんとあげてくれた方が助かるということだ。
私は旅行が好きだし、旅行に行くと当然そこでいろいろなものを食べる。旅行中に食べるものは何でもおいしく感じる。
そんなにおいしくなくても「やっぱり遠いところまでくると味覚の感覚がちょっと違ってくるんだなあ」とそれはそれで感慨深く、おいしい気がしてくる。
例えば、私は九州特有の甘い醤油が苦手だ。ただ、九州旅行中の食事に登場するくらいであれば全然いいし、その甘さがなぜかそんなに気にならない。
だが、九州の醤油は甘いということや、甘い理由(貴重な砂糖を入れ客人をもてなそうという発想がある、甘みが新鮮な魚と合う)を知らないと、「この醤油甘い。口に合わんわ」で終わってしまう。
情報がないと、しっかり味わう前に直感でおいしいかどうかを判断してしまうのだ。
『ラーメン発見伝』で例えると、私の五感では鮎の煮干しをきちんととらえられないと思うが、「鮎の煮干しを使っている」という前情報があると、口に入れた時に集中力が高まり、鮎の味や風味を探そうとするようになる。情報により、おいしいポイントを探そうとするようになるし、見つけやすくなる。
突然だがこれは、豆腐に黒蜜をかけたものだ。
何の情報もなくこれを食べても「うん、おいしいね」という感想である。
だが、これに「佐賀県有田のカフェで出されているものです。有田の郷土食である呉豆腐に黒蜜をかけて有田焼の皿に乗せました」と書くととたんにおいしそうに感じる。
私は味なんか分かっちゃいない。情報があれば勝手に「おいしい」と感じる。
だから結局、一番おいしいのは、その土地で食べるその土地の名産品なのだ。旅行中においては「この土地で作ったこの土地の名産品です」以上においしそうに感じる情報はない。
前述の漫画では「情報で評価が左右される」ことが否定的なニュアンスで描かれていたが、むしろ私は「情報は味にブーストをかけられる最高の調味料」と前向きに考えているので、これからも旅行中は「この土地の名産品です」「この土地のは通常より甘い味つけなんです」などといった情報とともにその土地の名産品を食べていきたいのである。