🎞️映画レビュー： Last Samurai （2003）

筆者：K🌷 留学中の大学生。期末レポートに行き詰まったので映画の記録でもして気を紛らわせようと思い、初めてみます。嫌いな食べ物はセロリ。

ずっと見よう見ようと思っているのに見れていない映画ってなぜこんなに多いのか。流石にスマホを触る時間が長すぎてきたので、せっかくメディアに触れるなら、と映画をちゃんと見ていくことにする。
今回選んだのは、2003年の映画 "Last Samurai"
出国前にちょうど "Shogun" を見終えていたので、他の時代劇xハリウッド映画も見てみたくて選んだ。

Algren (Tom Cruise) と勝元 (渡辺謙)

結論から言えば、全体を通して、エンターテインメントとして完成された面白い映画だったと言える。日本映画界では不可能な予算で作り上げられた規模感は、特にアクションシーンで輝いていた。手に汗握る接敵の戦闘、侍たちの雄叫びと共に雄々しく駆ける場面はドラマチックで、PCで見ているだけでもワクワクさせられた。渡辺謙と真田広之をはじめとする日本人役者によるカッコイイ殺陣、そしてスタントを自分で行うことで有名なトムクルーズの演技がとても生きていた。風景の描写もとても美しく、所々これ日本じゃないなと思わせる節があったものの（ニュージーランドで撮影されたシーンがあるらしい）、それでも雄大さに心が動かされた。アメリカから渡ってきたトラウマに悩まされるアル中大将が、侍たちと出会い、その生き様を見届けていく、とてもロマンチックな映画だった。

そう。とてもロマンチック。私が違和感を持ったのはそこだ。なんでこんなに美しいんだろう。日本人として、武士道という軸、倫理観を持った歴史の上に立っていることは誇らしく思っているし、その気高い心持ちにより近づきたいという憧れもある。しかし、日本人だからこそ、武士道の名の下にあるものが全て美しかったとは思わない。それはもっと泥臭く、利己的で、人間らしい部分があったはずだ。
映画では、Algrenの視点を通して、日本人の謙虚で、美しく、規律正しい様子が描かれる。その表現の節々に美化された存在を感じてしまう。侍とは、人々が人間的な感情を律し、武士道を刻むことによって、侍へと成長していっているのだという私自身の考えが強いからかもしれない。「日本人」が表現されているのに落ち着かない気持ちになった。明治政府側は利己主義に塗れた悪、侍は気高い善という単純化された構図も、この違和感を助長させた気がする。

まあ、日本文化の美化というものは今に始まったことではないだろう。日本人はみんな優しくて、礼儀正しいから、他の国より優れているんだと信じている人は想像より多い。日本人だけがそんなに一面的な人間なわけないのに。正直言うなら、侍なぞを主役に据えるなら、泥の中で這いつくばって、汚い手を使ってでも敵首を取ってきて欲しいし、徴税してるんだから農民にも嫌われていてほしい。その方がリアルに感じると同時に、やはり現代にはない侍魂という名の忠誠心とエゴが見えてワクワクしないだろうか。勝元が天皇のそばに付きながらその後ろ盾と敵対し、最終的に敗北した後、なぜか天皇から認められるというプロットも不可解だった。ジャンプの友情・努力まで則っているけど、勝利できなかった上に、多分掲載されたら人気は出ないというくらいに人物像が単純化している。
一番首を傾げたのは、恋愛のプロットである。あれ必要？たかはキャラクターとしてもっと深められる存在だった。旦那をAlgrenに殺されたのに、勝元の命令によって一つ屋根の下で世話をしなければならない。どうしても憎しみが渦巻いてしまう。しかし、Algrenの変化を目の当たりにして、その感情も薄れていく…そこまでは理解できる。けどいつ恋に変わった？確かにAlgrenがたかに情熱的な視線を向けている描写はいくつかあったけど、彼女から愛が返されていたとは思えなかった。最終戦前にキスした時は、首を傾げすぎて机に頭をぶつけた。こちらもいまだに映画界の課題となっている部分だろうが、やはり女性キャラクターの作り込みがどうしても浅い。スパイスとなる恋愛のプロット装置、悲しみと愛だけを持っている生き物として描かれているのがどうしても納得いかないのだ。無理やり詰め込んだようにしか見えず、ただ雑な飾り付けになる。
歴史学でも女性の歴史の再発掘が進んでいる。存在を消され、沈黙させられていた女性たちの生き様が今になってやっと注目を浴びるようになってきたのだろう。映画でも、描写への努力をどんどん見ていきたいなと思う。

でも、まあ、面白かった。自分の文化の一部がああやって解釈され、描かれることに悪い気は誰もしないだろう。侍も、着物も、武道も見ていてかっこいいし。改善点はたくさんあるものの、ハリウッド映画で、日本語のセリフをそのまま使ったのは画期的であっただろうし、他国の人が日本に興味を持つきっかけにもなったはずだ。真田さんはびっくりするほど男前だし、見ていて飽きることのない作品だった。
日本でもこの規模と予算を使った作品が見れる時代が来ないかなあ、と親に学費を払ってもらっている大学生は思うわけです。空前のサムライブームが私の中で巻き起こっているので、次は黒澤明作品『七人の侍』を見ます。

次も読んでね🌷