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ジークアクスを観た!(見た人向け記事)

「機動戦士Gundam GQuuuuuuX (ジークアクス)– the Beginning –」を見た。面白かった。
TV版の開始前である今でしかできない予想を楽しんでいきたい。
(パンフレットは買いそびれました。)

ハイコンテクストすぎる前半

前半はおそらくTV版では描かれない(と勝手に想像している)前日譚である。シャアが主人公となるIF世界の1年戦争だ。
初代ガンダムを完全トレースしたプロットは、シニアファンとしてはサービス満点と感じた。
ちょっと鼻につくほどの初代ファンへのサービスシーンの連続。パロディとすら思えるセリフの言い換えの数々は、ゲームのGジェネレーションシリーズのノリによく似ている。だがそこがよい。脳に負担なく楽しめる。

しかしシニアファンへのサービスが過ぎて、ガンダム1年戦争を履修していない人にとっては、とんとん拍子で話が進みすぎ、かなり置いてけぼりの内容だったと思う。
一緒に映画を見た大学生の息子は隣の席でスヤスヤと寝ていた。そんなことは製作陣はきっと百も承知で、TV版の第一話では初見の若者がすんなり入り込める内容にしてくれていることだと思う。

ゲーム的ループ構造をいつまでやるか?

今回の映画は大半が一年戦争のIF世界の描写である。
ゲーム的ループ構造。シミュレーションゲームやテレビゲームで、理想の決着が出るまで同じシナリオを繰り返すように試行するような世界観であることが示される。

ただし、1年戦争は映画内できっぱりと片付いているので、これ以上のループは必要がない。ゆえに、エヴァンゲリオンやまどマギなどですでにお腹いっぱいであるループ物としてのエンターテイメントは、この映画のみで完結し、TV版のストーリーには絡んでこないのではないかと期待する。
そもそもループ構造ばかりやっていたのでは、作品としての進歩がない。というか作家陣自身がエヴァで決着を見せたはずのループ構造から脱出できなかったことになってしまう。同じことはさすがにやらないはずである。
ただし、ループ構造(並行世界構造)と初代ガンダムのクロスオーバーという点で、次のような展開になることが予想される。

ニュータイプの新解釈

初代ガンダムにおけるニュータイプとは、他人とわかりあう能力、感応力を持った新人類であった。と個人的には解釈している。
しかし、ニュータイプは同時に、超人的な直感力、予見力、理解力を持つ人類としても描かれる。それがアムロをはじめとしたパイロットのスーパーパワーとして現れるのはご存知の通りである。
これらの「超能力」の全容については、エスパーの能力としてなんとなくのイメージは湧くものの、初代ガンダムの劇中でははっきりとした定義はなされていない。宇宙に住むとそういう能力が得られる、兵器として利用できる、という程度の説明しか語られなかった。

しかしここで、今作品が持つ、初代ガンダムのIFシナリオというエヴァ的世界観が、ニュータイプの再定義、再解釈に大きく関係しているように感じる。

シャアのムーブの違和感

シャアの行動がまず怪しい。それぞれの行動が偶然そうなった、というよりも、"オールユーニードイズキル"の主人公ような、まるで人生二周目三周目の行動であるように見える。もちろんシャア本人がはっきりとパラレルワールドや前回試行の記憶持っているということではなく、うっすらと何かを感じとっているようなニュアンスだが、この距離感はエヴァでの主人公たちの立ち振る舞いに近い。作者と鑑賞者がその世界構造を知っているが故に、それを知らないはずの主人公たちの行動に、世界構造の知識がうっすらと反映されてしまうような関係性である。
多重世界を理解できることと、ニュータイプ適合者であることの関係性が、ほんのりと示唆されているように思える。

ニュータイプは囚人のジレンマを乗り越える

もし、並行して存在する世界のすべての可能性と全ての時間を同時に知ることができれば、人は人生のあらゆる選択肢の中から「正解」を選ぶことができる。

これはテレビゲームを途中セーブと巻き戻しを繰り返しながら進めていくことに近い。リセットのたびに主人公はゲームを途中からやり直せているが、リセットを押された方の世界は並行世界として存続するような感じに似ている。
このメタ的な構造に、主人公が気づいていくということが、ジークアクスのストーリの中核ではないかと、現時点では予想する。映画の後半で主人公たちが"キラキラ"という感覚に気づいている。
"向こう側"というキーワードも出てくる。これも多重世界を俯瞰的に見れるポジションを意味しているのであろうと考えられる。

つまり、ニュータイプとは、すべての並行世界とすべての時間を同時に観ることができ、その瞬間瞬間の「最良」を選択できる人間と今後定義されていくと予想する。
そして、ニュータイプ同士は、互いに最良を選ぶことができる。つまり、わかりあうことができる。ニュータイプは、囚人のジレンマゲームにおいてWIN-WINを引き当てることができる人類であるというわけだ。

ニュータイプの限界

憶測に憶測を重ねてだんだん意味のない話になってきてはいるが、劇中のニュータイプは肉体を持っており、それが、ニュータイプ能力の限界であると考えることができる。
ゲームであればリセットすることで時間を巻き戻すことができるが、現実世界で肉体を持った存在は、過去や未来や並行世界の全てを知ることはできても、そこに物理的に移動することはできない
逆にその制限があることで、物語を物語として成立させることができる。初代の話になるが、この制限があることで、超人であるアムロも取り返しのつかないことをしてしまったと人間らしく悔いることができるのである。

となると、世界を構築する側としては、ニュータイプのさらに上の存在、過去や未来に自由に移動できる次元の存在を描きたくなるのではないかと考える。
ジークアクスではララァの存在があからさまに示唆される。また、シャアは今作でも逆シャア同様に、最後には精神化するような描写となる。そしてシャリアブルはシャアを探し続けるような様子がある。
つまり、死とちょっと違う方法で肉体から解脱する方法、精神化できるようなルールがある世界であることが窺える。
その精神化した存在はより俯瞰的に、時間を自由に行き来できる(世界をやり直せる能力を持つ)と設定できるのではないかと考える。

「意思」がどう設定されるか

さらに憶測を重ねると、上のレイヤーから自由に人類が進む道を選べるとした場合、それはほぼ神のような存在となる。その神がどういう意思をもって世界の道筋を選択するか、ということが重要になってくる。
富野ワールドのガンダムにおいて、どういう意思が働いていたのかという考察は過去の記事で述べた。エヴァンゲリオンよりも以前から、富野監督は作品を跨いでしつこくループ構造で作品を作っていたと私は考えている。今回のガンダムがもし富野作品であれば、同様の考察もできるが、今回は鶴巻監督であり、富野ループとも庵野ループとも別物である。
(ちなみに富野ループは監督の初恋の人と成就したいができない話のこじらせ、庵野ループは父役の碇ゲンドウがいつまでも少年から親になりきれないループの話だと捉えており、これを整合したいという思いが、「意思」として作品の原動力になっていたと考えている。)

と、ここまで考えて話は止まってしまう。というのも、鶴巻監督の作品や思想性について、自分はその世代ではないので、正直よく知らないのだ。

ガンダムのテーマは「わかりあえるという理想とわかりあえない現実」であると考えている。その要素が入っているといかにもガンダムらしい作品、となる。ただガンダムらしくはなるが、それは別に面白いとは限らない。「ポケットの中の戦争」ではそのコンセプトを高純度でテーマ化したことで名作となったと思うが、最新作であるレクイエムではほぼ同じことをやったが名作という感じにはならなかった。現実がわかりあえないものであるという気づきにはもはや価値はない。わかりあうためのヒントをテーマとして作品づくりに取り組んでほしいと感じてしまう。すべては監督の匙加減。今回のテーマがガンダム的なテーマを取り扱うかどうかについても全くわからない。

サービスシーンからの予想

さて、話はまた戻るが、IFの世界線では初代ファン向けのサービスが多数あった。
ほとんどシニア層に対する介護サービスと思えるほどであったが、その中でも気になった点や思ったところを楽しく列挙してみる。

デニムが原作そっくりでほっこりする。
WBの強襲揚陸シーンがある。
ドレンやコンスコン(いたきがする)はかなり能力が高いような描写つまりアムロガンダムが化け物。
マリガン元気でうれしい。
シャリアブル(29歳)は若々しいイケメンになったのに、キシリア(24歳)がオリジンでは少し若返ったのにまたおばちゃんに戻されて気の毒。
セイラがガンダムにのるきっかけは全く謎でWBのような閉鎖環境じゃなければ正規のベテランパイロットがたくさんいそう。
テムレイのパーツがハードディスク的な形で世に出ているたぶん技術者として現役でがんばっている。
なのでアムロもたぶんどこかにいるけどガンダムに乗らなかったのでニュータイプ発症せずの可能性ありその場合は若手技術者として現れるのかどうなのかハロのライセンスでIT長者かも。
そもそもララァが神役だったとしたら今回の世界線はララァが導いたものでアムロをどうしたいのかどうもしたくないのか。
戦争に勝ったのに子供みたいなキャラがジオンの戦艦を仕切っているのなんで。
地下鉄がスイカシステムなので日本の技術文化が侵食されずに活用されている世界線。
ウーバーイーツ、闇バイト、スマホがあってほぼ令和。
ハロがLLM積んでる系で世界の認識がよい。アムロがベンチャー起こしたのかな。
シュウジが頭に乗せてるロボットは別会社のハロみたいな感じ?
MAV戦術のマブはもちろんマブダチ。初代ガンダムの時代のツッパリ用語。
戦後の日常のコロニー内はミノ粒子がないのかスマホの通信方式はどうなっているのか。
マージョ様みたいな女性が出てくるのはタツノコリスペクトか。あれ絶対マージョ様リスペクトだと思う。
アムロとララァが会った時の感覚らしきものがキラキラという表現で出てくる。
後半のポップな絵柄を見て、UCやハサウェイ、レクイエムなどの最近の1年戦争系ガンダムの絵があまりにも辛気臭かったと気付かされた。
後半の主人公の活躍はちょっとイヤボーン系。
ガルマについてはTV版中盤でのシニア喜ばせ要素としての登場を期待。ガルマはガンダムゲームでは理想高き有能な政治家。

さいごに(おすすめ)

初代ガンダムのIF物といえば、TV版のIFとして映画版と小説版がオフィシャル?ですが、ガルマが大活躍する下記の動画シリーズはおすすめです。
見たのはかなり前ですが、とても楽しくそして感動すらあった気がします。





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Ninagawa123
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