「WORK RULE SHIFT KYOTO」お披露目&交流会レポート
「人が仕事に合わせて無理するのではなく、人に合わせて仕事をつくる」をミッションに活動してきた一般社団法人NIMO ALCAMOが、新しいプロジェクト「WORK RULE SHIFT KYOTO(ワークルールシフト キョウト)」を発足しました。
WORK RULE SHIFT KYOTOが行うのは、既存のワークルール(職場のルール)では不利になってしまう事情を抱えた方が、不利なく働けるようになる新しいワークルールづくり。いま働いていない若者が「これなら働ける」と思える仕事を京都・関西に生み出していくプロジェクトです。
2024年9月2日、京都市南区にある「コワーケーションスペース九条湯」で行われたお披露目会&交流会の一部を、ダイジェストでご紹介します。
プロジェクトが生まれた背景
まだまだ暑さも厳しい晩夏の京都。銭湯をリノベーションした空間には、約40人の参加者が集まり、会場全体が新プロジェクトへの期待感と熱気に包まれます。
スピーカーを務めるのは、WORK RULE SHIFT KYOTO の共同代表であり、未来の組織づくりを研究している木戸伸幸。モデレーターとしてお迎えしたのは、株式会社SOU 代表取締役の仲田匡志さんです。
「ワークルールをシフトしていくって一体何だろうと、皆さんと一緒に問いやテーマを持てるような時間を過ごしていきたいなと思います」という仲田さんの言葉と共に、お披露目会がスタートしました。
木戸 「WORK RULE SHIFT KYOTOの活動をひと言で表すと、『人に合わせた働き方やルールをつくる』ことです。このプロジェクトでやっていきたいことを伝えるために、まずは僕たちの活動の背景を知ってもらえたらと思います」
共同代表を務める木戸伸幸・古市邦人の2人は、10年ほど前、就労支援を行うNPO法人で同僚として働いていました。若者向けのキャリア支援を行っていた木戸と、就労支援施設の責任者を担っていた古市。しかし2人とも、「このまま目の前にいる人だけを支援していて本当に良いんだろうか」と対人支援の限界を感じるようになりました。そこで2人はそれぞれ独立し、木戸は「次世代の組織づくり」、古市は「雇用をつくる」という新しいアプローチを模索し始めます。
木戸 「独立して2年ほど経った頃、久しぶりに2人で会ったんです。そのとき古市さんが『アルバイトで面接した若者を不採用にしてしまった』とめちゃくちゃ落ち込んでいて。不採用の理由は、ワンオペを任せられないから。ワンオペで回すお店だったら、経営者としては仕方のない判断ですよね。でも古市さんは違和感を覚えたんです」
「ワンオペができない」という労働市場では不利になる条件があっても、ルールを変えることで働けるのではないか。そんな発想の転換からNIMOALCAMOでは、1人分の仕事を複数人で分担する「ワークシェア」という新しいワークルールをつくりました。
さらに、摂食障害を患ったのをきっかけに人前に出る仕事に抵抗感が生まれてしまった元販売員の女性との出会いから、姿を見せずに働く「アバターワーク」というワークルールが生まれました。摂食障害だけでなく、あざや傷痕などの「見た目問題」に苦しんでいる当事者は、国内に約100万人いると言われています。
体調に波があり、急な欠勤でシフトに穴を開けてしまうことに悩んでいた元ソムリエの男性との出会いからは、24時間いつ来ていつ帰ってもいい「シフトフリー」というワークルールが生まれました。
このようにNIMOALCAMOでは、さまざまな事情を抱えた人たちとの出会いをきっかけに、次々と新しい働き方を生み出してきました。その背景にある思いについて、木戸はこう説明します。
木戸 「働きたくても働けない人がいるのは、社会的損失ではないか。それが僕たちの活動の根底にある思いです。だから、人が変われないなら、ルールを変えればいいんじゃないかと考えて、新しいワークルールをつくってきたんです」
これから目指していくこと、活動内容
NIMOALCAMOが新たに立ち上げたWORK RULE SHIFT KYOTOでは、働けなさを抱えた若者に対して、段階的な就労のステップをつくることを目指しています。
木戸 「僕たちは2つのステップで段階的就労を実現したいと思っています。1段階目は、僕たちのような支援団体が、中間的就労拠点での就労を行います。2段階目では、京都の中小企業と連携し、企業の中に新しいワークルールをつくり、就業機会を生み出していきます」
木戸 「新しいワークルールは、いわば人と企業(仕事)を繋ぐ接着剤。僕たちは接着剤を開発するような感覚で、ワークルールをゼロから作っていきたい。そして、そのワークルールを地域で広げていきたいと思っています」
2024年の取り組みとしては、①働き方の相談、②イベントの開催、③新しいルールで働くコーディネートを行っていくと紹介した上で、最後に木戸から参加者に向けて、こんなメッセージを伝えました。
木戸 「僕たちが作ってきた新しいワークルールは、すべて当事者の声から生まれています。だから、今働けていない人は、ぜひイベントなどに参加して声を聞かせてください。企業の方は、ワークルールづくりをやってみたい、組織づくりを手伝ってほしい、関心のある事業者さんにつなぎたい、といった方がいらっしゃればぜひご連絡ください。皆さんにWORK RULE SHIFT KYOTOの仲間になっていただいて、一緒に化学反応を起こしていけたらいいなと思います」
ワークルールシフトの先の未来像
活動紹介を終え、参加者が数人ずつグループになって感想をシェアする時間を設けた後は、木戸と仲田さんとのトークセッションへ。
参加者の感想に「働き方自体がもっとやわらかくなれば」「一般就労の一般って、そもそも何だろう?と考えた」といった声があったのを受けて、木戸は「ワークルールは1人では変えられないから、いろんな人たちの力で変えていく必要がある。働き方の実験がぽこぽこと生まれていけば、一般就労も変わっていくんじゃないか」と語りました。
さらに、仲田さんから「ルールを変えるリスク、変えないリスクについてどう考えていますか?」と問いかけがあると、スポーツの例を挙げて木戸はこう答えます。
木戸 「野球やバスケのルールも、毎年少しずつ変わっている。実はルールって、固定化されたものでは全くないんです。永遠のβ版として、やりながら柔軟に変えていくのが、本来のルールの形だと思っています」
仲田 「考え続けること自体がすごく大事なんですね。京都の老舗企業さんから、不易流行、つまり変わらないために変わってきたというお話を聞いて、とても感銘を受けたことを思い出しました」
最後に、これからの働き方はどう変わるのか、というテーマに対して、2人はこのように語りました。
木戸 「働き方はライフステージによっても変わるし、病気や怪我で今まで通りに働けなくなることもある。そんなとき、『じゃあこんなふうに働けるよね』っていう選択肢があると良いですよね。先ほど段階的就労について話しましたが、本当は段階なんてない、無段階だと思うんです。働き方の選択肢が増えていった先には、一方通行ではなくその時々で選べるような『無段階の働き方』があるんじゃないかと思っています」
仲田 「『その時々によって生き方も働き方も変わっていいんだよ』とみんなが思えるように、もっと選択肢が広がると良いですね。どんな働き方をしたいか、どんな働き方をつくってみたいか、もしくは『これってどうにかならないのかな』という困りごとも含めて、今日参加していただいている皆さんとも語り合えるといいなと思います」
お披露目会を終え、18時からは交流会として「無職酒場」を開催。無職の方は無料で食べたり飲んだりできる1日限りのポップアップ酒場です。交流会からの参加も含めると60名以上が集まり、無職の人も仕事をしている人もごちゃまぜで、参加者同士の交流も盛り上がりました。
WORK RULE SHIFT KYOTOの活動は、まだ始まったばかり。「ワークシェア」や「シフトフリー」で働くメンバーも募集していますので、関心のある方は募集ページもぜひご覧ください。
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