「俺の前立腺、癌やったわ」〜夫が癌になって〜⑦ 手術前の歯科検査と実母の謎
50万円のオーダーメイドのタキシードは、買わなくてすんだ。
転移はなかったからだ。何故、転移があったら50万円のオーダーメイドタキシードを買いたかったのかは、いまのとこ聞かないでおく。
そして手術の病院が決まった。
ビルが立ち並ぶ都会のでっかい病院。ここなら任せられるなって感じの病院だった。
そしてついに2021年1月某日にダヴィンチ手術の日にちも決まった。
手術までにそのでっかい病院へいろんな検査を受けに行った。何故か歯科も検査した。
がんの手術をする前に口のケアを行う意義
① 術後の肺炎リスクを下げます
② 気管チューブから歯をまもります
③ 術後の食事摂取の面から回復を支援します
④ 口やのど、食道がんの手術での術後の合併症のリスクを下げます
テーマパーク8020サイトから引用
①→術後の免疫力が落ちた身体に、口の中の細菌やウィルスが原因で誤嚥性肺炎が起きることを防ぐ。
②→全身麻酔を行う際、口からチューブを挿入するのでグラグラして抜けてしまいそうな歯があると抜けた歯を飲み込んでしまう可能性があり、それを防ぐ。
米国では安心安全に手術や術後を乗りきるため、手術前に歯科を受診することは一般的であり、日本でも注目されているという。
なるほど〜。
それから、この病院にわたしも付き添いで行ってみて、待ち時間も少なくスムーズに回れたのが何より好印象だった。
おかげで時間に余裕が出来て、映画、『「鬼滅の刃」無限列車編』を見た。
2人で映画なんて何十年間も行ってない。
鬼滅の最後のシーンでの鎹鴉(かすがいがらす)の涙がとても印象深く、それは夫も同感だったようだ。
同じことに感動するってのは長年夫婦とやらをやってきた、証みたいなもんやろか。
帰ったら宅配便荷物の不在票がポストに入ってた。送り主は実母。
確実に受け取れる日を選んで明々後日に再配達をしてもらえるように手配したのだが…
ここでまた、母のジコチューモードが炸裂する。
まず
「荷物届いた?」の母からのライン。
わたしは、夫が手術する病院が決まり、手術前検査の付き添いで留守にしていたこと、それで荷物を受けとれなかったこと、明々後日に再配達をしてもらうようにしたこと、そして、病院がでっかくて綺麗だったと、病院の建物写真を貼り付けた。
ところが、母の眼中に写真は一切ないらしい。
手術日決まってよかったねとか、
病院ではどんな検査したの?
とか、先生は、どんな人だった?とか、身内なら気になるだろう項目は全て端折(はしょ)られた。
母の次の言葉は、
「何ですぐに受けとらないの?
時間を無駄するな。腹立つ。」
…これだけ。
文字が少々、霞んで見えたわ。
これってさ、
もしかしてだけど、もしかしてだけど、これってさ、高齢者あるあるなんでしょか。自分が今、気になってる、ひとつのことしか頭に存在しない的な?
荷物届いたかどうか、このひとつだけしか頭になかった……歳のせいなの?
それともやっぱりただのジコチュー?
まぁ、ええんやけどな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?